過去問の開始時期~過去問の話《1》 | 中学受験講師ブンブンのブログ

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中学受験の塾講師とプロ家庭教師をしています。指導のあり方、入試情勢、教えて思うことなどについて、書いていきます。

1か月に1回更新するかどうかの当ブログ、あまりアクセス数は多くはありません。

その中でも、比較的多くの人に読まれてきた記事が「過去問の解き方」です。

過去問の解き方で、いろいろ迷っている方が、多いようです。

そこで、過去問の解き方を、さらに詳しく、まとめることにします。

今回は主に開始時期について。

 

■過去問を解く目的■

過去に出題された入試問題「過去問」を解く必要があるのは、なぜでしょうか。

《1》形式に慣れる。

私立中学の入試問題は、出題形式が個性的です。

たとえば算数の途中式を書く学校があり、慣れておく必要があります。

私の住む千葉県ですと、

麗澤中は、国語の記述が多く、記述練習が不可欠。

東邦大東邦中の理科社会は、記号で答える問題が多いのですが、資料をじっくり読み取る必要があります。

渋谷幕張中は、習ってない問題を、「ざっと説明を加えたから、その場で考えて解いてよ」というパターンが目立ちます。

長期間、志望校に合格するために努力を重ねてきたのですから、力を出し切れるように形式に慣れるのです。

《2》時間配分に慣れる

特に算数は、時間との勝負になります。どの問題に時間を使うか、もっと言えばどの問題を捨てるか判断が必要になります。

極端に難しい問題が、最後に配置されていれば対処しやすいのですが、大問2の一行問題の中に極端に難しい問題が混ざっている問題があります。過去問で慣れていれば、「今年も大問2で難問が出たか」と慌てずに飛ばすことができます。

《3》意識を高める

現在は偏差値50でも、入試当日は偏差値55の学校に受かる!と希望的観測をする受験生がいます。

(実際は偏差値40なら「奇跡の合格」はあっても、偏差値55以上では滅多にありません)

でも、過去の入試問題を解くと、「入試問題は難しい」「現在のままだと合格できない」と実感できます。

普段の塾の宿題なら、「これは単なる計算ミスだ。分かってるから気にしない」と通り過ぎるところですが、過去問で計算ミスしたら「これさえミスしなければ合格点に達したのに・・・」と反省材料になります。

入試が迫った時期に、勉強の緊張感を高めるのに使えるのです。

 

 

■過去問の開始時期は、先生によって極端に異なる■

以前、他塾の先生と居酒屋で飲んたのですが、過去問の話になりました。

先生によって、過去問に対する考え方が激しく違っていたのに驚きました。

私は「10月頃から始めるが9月でも良い」と考えていますが、「11月でも早い。12月からで十分だ」と主張する先生もいて、驚きました。なかには、6年の4月5月に過去問をバリバリ解く塾もあるようで、扱いは本当に差があります。

 

一般的に、塾の先生は「過去問を9月から解くのは早い」と言いがちです。

9月10月は、算数なら「空間図形」「速さと比」など単元別に鍛える必要があるという想いがあります。

ところが9月から過去問をバリバリ解くと、単元別の宿題や復習が手抜き状態になりかねません。

また、過去問をバリバリ解け!と指示すると、当然それぞれの受験校はバラバラですから、質問や添削に手間がかかり収拾がつきにくくなります。こんな事情もあり、「過去問に振り回されるな」と言いがちになるのです。

 

逆にプロ家庭教師は、過去問指導を早くから始める先生が多数派です。

志望校の過去問指導を細かくできるのは、生徒に応じて変えられる1対1指導の強みです。

志望校が専修大松戸中のような、出題形式に癖が無いオーソドックスな私立中の問題でも、受験生が過去問に向ける集中力が違いますし、ミスしたら反省させやすくなる効果もあります。意識が高まるから過去問なのです。

そして、偏差値50を超えるレベルになると、他の受験生も必死に頑張っていますから、学力そのものは簡単には上げにくいのも事実です。それでも過去問で「形式に慣れる」「どこまで捨てて良いか戦術を立てる」「頻出単元を重点的に鍛える」など、できる手を打つのです。そして、仮に学力そのものが少ししか伸びなくても、得点力を上げて少しでも合格に近づけるのです。

逆に言えば、偏差値40の私立中を受ける受験生なら、「難問は少ない」「入試問題の癖も少ない」ですから、過去問を解きまくるより、基本的な問題を数多く解くのが適切と思います。

 

■過去問は9月に1回、あとは10月から

私の考えは、「9月に1回解き、あとは10月から12月に解く」です。

《1》11月からだと終わらない

受験校が4校以上の場合、過去問を11月から始めると終わりません。

多くの学校は1年で2回入試を行います。過去3年の過去問を解くとなると、

1年で2回×過去3年間×4教科×4校=のべ96教科になります。

問題を解いて○付けして復習するのが1教科平均1時間として、96時間です。

10月11月12月の3か月ですと1日平均1時間になります。

入試が迫った時期ですから、塾に週5日通いながら、宿題も多いのに、1日1時間です。

この1日1時間は控えめの数字です。

第一志望校なら過去6年以上解きたいですし、受験校が7校なら1日2時間近い時間が必要です。

11月からだと間に合いません。

《2》9月に1回受けると「伸び」が分かりやすい

9月に過去問を解くと、40点しか取れなかったりします。合格ラインは65点くらいですから、まだまだ合格ラインに届かない状態です。特に算数は30点しか取れないことが珍しくありません。

でも継続して受けるとこうなります↓。

9月で35点

10月で44点

11月で48点

12月で55点

常に合格ラインには達しないのですが、上り調子ですから、入試当日は合格点に達するのでは、と期待したくなります。

もし10月に1つの志望校の過去問を続けて解くと、短期間で変化が分かりません。

10月1日に40点

10月8日に45点

10月15日に38点

10月22日に45点

1か月では形式に慣れる効果はあっても、算数の学力そのものはあまり伸びません。ですから過去問の点数は、短期間では少ししか上がりません。

こういう意味で、1校の過去問を3回4回と続けて解くのは、おススメしません。

多くの併願校を混ぜて、進めるのが良いと思います。

 

【つづく】