中学受験を控えた6年10月になると、避けては通れないのが「過去問」です。
過去に出された入試問題を解くと、形式や時間配分に慣れたり、今後の弱点補強に役立ったりします。
ところが、この「過去問」ですが、先生によって、お勧めの解き方が激しく違います。
「6年の6月から解け!」という先生もいれば、「6年11月でも早い」という先生もいます。
「時間は5分短く」とか「同じ過去問を3回解け」という先生もいます。
ですから、塾の先生が居酒屋で、過去問の効果的な解き方の話を論議すると、意見が大きく食い違い、収拾つかなくなるのです。
そこで、効果的な過去問の解き方を、まとめてみました。
【1】10月から過去問を解く
過去問を解くのは10月からが適切だと思います。9月からでも良いと思います。
11月からだと、4校5校と併願校する受験生は、過去3年間の問題を解く時間がなくなってしまいます。
夏休み中からだと、まだまだ粗削りで、点数が取れないのが当たり前です。
【2】時間を測る
当然ですが、時間を測って過去問を解きましょう。
実力を測るのに、40分の理科を25分でパッと解くのは、不適切です。
時間ギリギリまで粘る理由は、「ミスの言い訳にしないため」です。
つまらない読み間違えがあったら、「短時間で打ち切ったから気づかなかった。あと15分で見直ししたら気づいたハズ」と思わせないためです。
受験生は、今は偏差値足りなくても、当日は点取れて合格できると、希望的観測をしがちです。ところが、志望校で実際に出された問題をミスしたら、悔しくて、自分に言い訳できません。グザッと突き刺さります。ですから、「自分の勉強不足」や「見直しの重要性」を認識させることにつながります。
【3】「声の教育社」の過去問を買おう
過去問は、「声の教育社」発行のものがお勧めです。解答用紙がしっかりついて、配点も分かりやすいです。
合格最低点といったデータも、充実しています。
解答も比較的丁寧ですから、1冊2000円を超えるくらいで少し高いのですが、必要な出費です。
【4】「実物過去問」も手に入れたい
それぞれの中学が「実物過去問」を配布・販売していることがあります。編集なしの実物ですから、手に入るものなら、手に入れたいものです。過去問を4年度分解くとしても、1年度分でも実物過去問で解ければ、気分的に不安がなくなります。
塾関係者のひとりである私が、千葉県の私立中の「実物過去問」を持っているのが、東邦大東邦・市川学園・芝浦柏・専修大松戸・麗澤・二松学舎柏・聖徳大附です。
ただし、実物過去問は解答がついていても解説なしですから、「声の教育社」の過去問は買いましょう。
実物過去問だと、渋幕・東邦など「一部教科がカラー」になっています。
また、主に国語で著作権の関係で、掲載できない内容がある場合もあります。
【5】いま合格点なんて取れるわけない
10月に過去問を解いたとします。採点すると、点数がとれずに、合格最低点まで程遠い結果になってしまいます。
4教科400点満点だと、250点前後が合格ラインになります。10月初めに250点取れたら、12月に270点、入試当日には300点も取れる可能性大です。
要するに、偏差値が全く変わらない受験生でも、学力はアップしているのです。他の受験生と同じだけ力はついているから偏差値は上がらなくても、過去問の点数はほぼ確実に伸びるのです。10月に200点の受験生でも、頑張れば入試当日に260点くらいになる可能性は十分にあるのです。
【6】第一志望校ばかり続けて解くな
細かい指示しないで「過去問を解け」というと、第一志望校ばかり解いてしまいます。
たいてい第一志望校は、偏差値が高い学校ですから、こんなことになります。
《10月10日。渋谷幕張の30年過去問。合格最低点まであと50点。ひどすぎ。》
《10月13日。渋谷幕張の28年過去問。合格最低点まであと50点。うわー》
《10月17日。渋谷幕張の29年過去問。合格最低点まであと55点。上がらない(T_T)》
これでは、解くのも大変ですし、めげてきます。
そこで、併願校も混ぜるのがお勧めです。
《10月10日。渋谷幕張30年。合格最低点まであと50点。ひどすぎ》
《10月13日。東邦大東邦28年。合格最低点まであと15点。あと一歩》
《10月17日。市川学園28年。合格最低点まであと20点。もう少しだ》
《10月20日。専修大松戸29年。合格最低点より30点超えた。やった!》
《10月24日。渋谷幕張29年。合格最低点まであと55点。》
このように、混ぜるとどうなるかというと、
渋谷幕張だと10月に「あと50点」「あと55点」、11月に「あと35点」「あと30点」、12月に「あと20点」「あと15点」と近づきそうです。渋谷幕張のように特殊な形式の問題は、形式に慣れるだけでも得点力アップしますし、入試直前の3~4か月は学力そのものも相当上がります。12月に合格最低点に達していなくても、10月、11月、12月と合格ラインに近づいている感触がつかめますので、「あと一歩!」と意欲がわきます。
都内の私立中には、独特の入試問題を出す学校が多く、相性もあります。偏差値50の学校には合格点が取れなくても、54の学校だと合格点が取れるのは珍しくありません。この判断をするのに、10月に過去6年の過去問全部解いてしまったら、比較しにくくなります。
【7】同じ過去問を2回3回繰り返すのは乱暴
よく「志望校の過去問は、2回3回と繰り返して解け」という無茶な主張をする先生がいますが、私は神経を疑います。
受験校が1校か2校の人は別ですが、多くの受験生、特に千葉県民は5校6校と受験します。
たとえば、埼玉で「独協埼玉」、茨城で「江戸川取手」、千葉で「専修大松戸」「麗澤」「芝浦柏」、東京が「高輪」「東京成徳」を受けるとすると7校になります。
専修大松戸の過去問だと、「声の教育社」の過去問には1年で2回分納められていますから、
過去4年分×2回×4教科=計32教科の過去問を解くことになります。復習は短めにして、解いて復習するのに1教科平均1時間としても、専修大松戸だけで32時間になります。仮に5校の過去問を解いたとすると、1校32時間×5校=160時間になります。7校だと224時間に達します。
過去問を解く時期は、入試までの約100日ですから、通塾に毎週5日くらい、宿題も多く出るこの追い込みの時期に、1日平均2時間費やすことになります。これは厳しいでしょう。1回解くだけでも非現実的とも言えるのですから、同じ問題を2回3回繰り返すのは超能力者いと無理でしょう。(間違えた問題だけ解くのは、問題ないですが)
【8】書き込み&コピー
2度繰り返して解くことはあまりないですから、問題にどんどん書き込みましょう。
入試では慣れていないことは、なかなかできませんから、「声の教育社過去問」でも「実物過去問」でも、普段から書き込みをしましょう。ミスした箇所だけ解くときは、消しゴムで消して解きます。志望校が2校くらいでしたら、繰り返し2回目を解くこともできますから、コピーが良いでしょう。
「声の教育社」の過去問ですと、解答用紙は拡大が必要なこともあり、コピーがお勧めです。
【9】捨てる問題の判断が大切
一定レベルの私立中の過去問を解くと、非常に難しくて、全く歯が立たない問題があるのに気づきます。特に算数は、考える時間が不足しがちで、手が出ない問題があります。
過去問を何回か解くと、捨てる問題の判断がしやすくなります。
100点満点の算数でしたら、合格ラインが60点くらいでしょう。すると15点を捨てて、85点埋める。20点間違えて65点取るのを目指して良いと考えます。
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