104期生の男役で新人公演主演経験者は花組・天城れいん、先頃歌唱で注目されたのは宙組の真白悠希。娘役の新公ヒロイン経験者は花組・美羽愛、月組きよら羽龍に元花組都姫ここがいた。

 

 1~2月花組「ポーの一族」は演出家小池修一郎が念願としていた萩尾望都作の漫画の舞台化。明日海りおが主人公のバンパイア・エドガーを演じ、そのパートナーとなるアランに新たな二番手となった柚香光。瀬戸かずやと仙名彩世がエドガーの養父母となるポーツネル男爵夫妻を演じた。この公演に際しては、小池先生曰く明日海いたからこそ上演が可能になったとのことで、明日海も見事にその世界観を表現しきっており、それ迄再演作が多い印象だった明日海のオリジナル代表作となる作品となった。その後2021年に明日海の退団後の初舞台として、「るろうに剣心」と同様に宝塚歌劇の舞台を男女混合で再演する形で「ポー」が上演され、又話題を呼ぶこととなった。

 

 2~3月月組「カンパニー -努力、情熱、そして仲間たち-/BADDY -悪党は月からやって来る-」はかなり異色の公演となった。珠城りょうについては最後まで賛否両論、毀誉褒貶色々言われたようだったが、個人的には「カンパニー」で演じた様な平凡な人物像を表現できるということも一つの力量の証だと思っている。榛名由梨以来の宝塚伝統の古典的ともいえるオーソドックスなスター像が、最近のキラキラした華やかなスター性が好まれる風潮にマッチしていなかったのではないかと勝手に思っているのだが、どうだろう。「BADDY」は作・演出の上田久美子による女性演出家として初のショー作品でありながら、宝塚歌劇のショー・レビューの定番を全て逆手に取った演出にとにかく驚かされた。特にフィナーレ大羽根を背負いながら、サングラスに咥えたばこで登場したトップ珠城の姿には客席は唖然とするばかりだったとか。新公では風間柚乃が初主演となった。

 

 3~4月宙組「天は赤い河のほとり/シトラスの風 -Sunrise-」は真風涼帆・星風まどか新トップコンビ披露公演となった。二番手に花組から来た芹香斗亜、三番手には芹香と同期の愛月ひかるがそのまま残る形となって、かつての花組で明日海りおが月組から組替えとなって二番手となり、同期の望海風斗が三番手となった時と同じような状況が何やらまた不穏な雰囲気。この年は1998年に宙組が誕生して以来20周年となり、その幕開きの公演で上演された「シトラスの風」がロマンチック・レビュー第20弾の記念公演として一部改訂の上再演された。

 

 4~6月星組「ANOTHER WORLD/Killer Rouge」の「ANOTHER」は落語ミュージカルと銘打ち、複数の落語ネタに基づいた紅ゆずるが最も得意とするドタバタ喜劇。“冥途カフェ”等が出てきて、“「ベルサイユの蓮」を演出する大御所ももう直ぐ来るぞ”と悪乗り演出もまた一興な作品だった。「Killer」はこの年の秋に予定されていた第二回台湾公演の試作品。6~7月雪組「凱旋門/Gato Bonito!!」の「凱旋門」は、2000年大劇場・2001年博多座以来の再演。専科から轟悠が再び主演した。7~8月花組「MESSIAH/BEAUTIFUL GARDEN -百花繚乱-」の「MESSIAH」は天草四郎について新たな視点で描いたという作品。

 

 8~9月月組「エリザベート」は珠城りょうが10代目トートに扮し、エリザベート/愛希れいかの退団公演となった。愛希は龍真咲と珠城の2代に渡り約6年半トップを務めたが、これは花總まり、遥くららに次ぐ長さとなった。美弥るりかがヨーゼフにルキーニが月城かなと、そしてルドルフに暁千星という所までは順当だったが、当時研5だった風間柚乃が暁とWキャストとなり先ず話題となった。そして幕が開き新公でルキーニを演じた風間の演技が評判を呼んだところで、直後に美弥が休演となりヨーゼフの代役に月城が、そのルキーニの代役は本来暁の筈だったが、何と風間が抜擢されて暁は本役ルドルフのままで代役公演を実施。これれで一気に風間の評価が高まり、正にスター誕生の瞬間となった。その後翌年にかけて風間は月城の代役を更に2回務め、未だ新公年次の下級生らしからぬ演技力と存在感を披露し更に評価を高めることとなった。

 

 10~11月宙組「白鷺の城/異人たちのルネサンス」の「白鷺」は、平安時代の陰陽師と妖狐の時代を超えた宿縁をテーマとした和物レビュー。「異人」はレオナルド・ダヴィンチの物語。11~12月雪組「ファントム」は飛びぬけた歌唱力が評判となった望海風斗・真彩希帆“希望コンビ”による待望の公演が、幕が上がる前から評判を呼んだ。歌唱力の面を見ればそれまでの「ファントム」とは次元が異なるものとも言われたが、そこが却って宝塚歌劇としての舞台の魔法を減じてしまったという声もあったと聞いた。

 

 バウホールでは3月雪組「義経妖狐夢幻桜」は朝美絢の、5月花組「Senhor CRUZEIRO! -南十字に愛された男-」は水美舞斗とそれぞれ95期生の単独初主演作品となった。更に7月月組「愛聖女 -Sainte♡d'amour-」は同じく95期の娘役愛希れいかによる退団記念の主演作。8月宙組「ハッスル メイツ!」は和希そらの初主演作品で宙組若手メンバーによる20周年の振り返ったショーとの事だったが、そのタイトルの余りのレトロ感に少々驚いた。8~9月星組「New Wave -星-」は瀬央ゆりあ、紫藤りゅう、極美慎等が出演した。

 

 その他1月東京国際フォーラム宙組「WEST SIDE STORY」は作曲家レナード・バーンシュタインの生誕100周年を記念し、スタッフをブロードウェイから招聘しての上演となった。ところで丁度そのバーンシュタインについての映画「マエストロ」を先般観たところだったが、かなり奔放な人生を送っていたことに驚いた。天才と謳われるアーティストの人生は、やはり並の器には収まらないと言うことだろうか。2月ドラマシティ星組「ドクトル・ジバゴ」は、轟悠が専科から特出で主演し有沙瞳が相手役と務めた。6月赤坂ACTシアター月組「雨に唄えば」は2008年宙組以来10年ぶりの再演となり、ドラマシティでは月城かなと主演で「LAST PARTY」がやはり12年振りでの再演となった。10月には台湾公演として星組「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊記/Killer Rouge/星秀☆煌紅」が実施された。

 

 この年は真風涼帆の新トップ就任と愛希れいかの退団があったものの、大きな構造変化のない安定した1年となった。又宙組が20周年を迎えての記念行事もあった。またバウホールでは若手の初主演作が続いた。

 

さて、2021年1月以来宝塚歌劇団に関しての思い出を書き散らかしてきた。当初は過去50年に渡って各組トップスターについての思い出を並べ、昨年年初からは1975年から年次毎にまとめてきて今回で平成時代も終わりとなる。今年で令和5年となるが、令和になって以降コロナ禍による公演中断を始めとして、現在進行形の事柄も様々あり少々手に余る状況になっているので、この平成最後そして令和元年となる2018年をもって、一旦区切りを付けることとしました。

 

今後読み返してみての修正をすることもあるかと思いますが、取り敢えずはこれにて終了とします。

どうもありがとうございました。

 103期生の男役で新人公演主演経験者は花組・希波らいと、月組・瑠皇りあ、宙組・亜音有星の3人。娘役トップに雪組夢白あや、新人公演ヒロイン経験者は花組・朝葉ことの、月組・白河りり、羽音みか、星組・瑠璃花夏がいる。

 

 1月月組「グランドホテル/カルーセル輪舞曲」は新トップ珠城りょうの大劇場披露公演となった。引き続き相手役の愛希れいかとコンビを組むこととなり、漸く正式な単独二番手として美弥るりかが昇格し以下朝美絢、暁千星と続く体制になったが、5月博多座公演の後で朝美は月城かなとと入れ替わりで雪組へと組替えとなった。珠城は研9の若さでのトップ就任となり、研7でトップとなった天海祐希以来の事と話題となった。「グランド」は1993年涼風真世の退団公演として上演されたものの再演だが、初演で当時天海に次ぐ三番手だった久世星佳が演じたフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵を珠城が演じて主演し、涼風/会計士オットーを美弥が、天海/ラファエラを朝美と暁のWキャストとなった。一方娘役は初演羽根知里/グルーシンスカヤを愛希、麻乃佳世/フリーダ早乙女わかばと海乃美月のWキャストとなった。初演当時美弥が涼風の大ファンで、そのオットーを演じる事となって興奮していたことを思い出す。

 

 2~3月宙組「王妃の館/VIVA! FESTA!」の「王妃」は浅田次郎作の小説を舞台化した作品で、実咲凛音の退団公演となった。パリを舞台としてながらも日本人観光ツアー客が主な登場人物となるドタバタ劇で、演出家田畑大輔の大劇場デビュー作。これで退団となる実咲には何とも気の毒な感じがした。3~4月星組「THE SCARLET PIMPERNEL」は紅ゆずるが2008年同作品の新公ラストチャンスで主演した思い出の作品で、とうとう本公演で新トップとしてのお披露目公演となった。相手役に綺咲愛里とコンビを組み、二番手に礼真琴という体制。思えば紅の初舞台2002年「プラハの春」では東京公演バンフの最後に顔写真が載っていたのが、とうとう表紙まで上り詰めたことに他人事ではあったが少々感じるところがあった。

 

 4~5月雪組「幕末太陽傳/Dramatic “S”!」は早霧せいな・咲妃みゆの退団公演。「幕末」は1957年公開のフランキー堺主演映画の舞台化で、岡場所が主な舞台となる物語。宝塚で上演するにはどんなものかと思えるような猥雑な場面も多々あり、しかもそれをトップの退団公演となると果たしてどうなるのかと思っていたが、演出の小柳奈穂子が「ルパン三世」同様に宝塚歌劇としてどうにかしてしまった。早霧は二番手時代は少々存在感に欠けたような印象だったのだが、トップ就任後は一気にその魅力を開花させて、在任中の5本公演全てで稼働率100%超えという偉業を達成した。またこの舞台で個人的に一番記憶に残っているのが舞咲りんが演じたやりて婆で、過去何度かエトワールも務めているのに何とも強烈な怪演で印象付けた。この人は一方で硬質な感じのダンスも印象的でその両極端な感じが気になる生徒だった。しかし前年以来龍真咲、北翔海莉に続き早霧とトップ3人の退団公演が、連続して日本物と言うのは初めての事だった。

 

 6~7月花組「邪馬台国の風/Santé!!~最高級ワインをあなたに~」から明日海りおの新しい相手役が仙名彩世となった。仙名は新公でのヒロイン経験がなくトップ娘役に抜擢となって話題となった。この後赤坂ACTシアター10月「ハンナのお花屋さん」の後で芹香斗亜が宙組へ移動となった。7~8月月組「All for One〜ダルタニアンと太陽王〜」はアレクサンドル・デュマの「三銃士」の舞台化。“三銃士”物としては過去1980年宝塚テレビロマン、かの悪名高き2011年雪組「仮面の男」に続くもの。今回は“実はルイ14世は女だった”という設定で愛希れいかの太陽王ルイ14世に、原作とは時代がずれるが珠城ダルタニアン以下三銃士が絡むというお話。元男役だった愛希の経験が生きた作品となったようだった。

 

 8~9月宙組「神々の土地/クラシカル ビジュー」は朝夏まなとの退団公演となった。相手役だった実咲凛音が前公演で退団していたため、本公演では相手役は不在で同じくこれで退団となった伶美うららと当時研4の星風まどかがヒロイン格での出演となった。また当時三番手だった愛月ひかるが怪僧ラスプーチンを演じたが、個人的には貴公子タイプの生徒が力を込めて怪演するほど違和感が重なっていったのだった。ところでこの公演タイトルは内容は全く異なるが、同年に公開された英国映画"God's own country"にちなんだものだろうか。9~11月星組「ベルリン、わが愛/Bouquet de TAKARAZUKA」では紅ゆずるの抑えた二枚目演技が印象的だった。


 11~12月雪組「ひかりふる路/SUPER VOYAGER!」は新トップコンビ望海風斗と真彩希帆“希望コンビ”の披露公演となった。「ひかり」は「ベルばら」や「スカピン」等フランス革命物での悪役の代表格として名高いマキシミリアン・ロベスピエールを、理想に燃える革命家としての視点で描いた物語で、音楽をフランク・ワイルドホーンが担当し、望海・真彩の歌うまコンビに相応しい作品となった。望海は花組での若手時代は朝夏まなとの影に隠れがちで、朝夏の組替でようよう陽の目を見たと思ったら同期の明日海りおが来て二番手に座り、後に入れ替わりの様に雪組へ組替となった。真彩も初舞台、組回り、配属に2度の組替えと5組全てを経験してそれまで結構便利に使われてきた様。実力者同士のコンビだったが、苦労の末に漸く到達できたという印象だった。また、この公演で元雪組で専科から特出していた沙央くらまが退団となった。

 

 バウホールでは1月星組「燃ゆる風」で七海ひろきが初主演。前年はスキップしたバウショーケースの第4弾として、2月雪組「New Wave -雪-」が月城かなと、永遠輝せあ、縣千、彩みちるらの出演で上演された。この公演後に月城は月組へと組替えとなった。11月専科「神家(こうや)の七人」は専科轟悠主演のコメディ。タイトルは多分1960年公開の映画「荒野の七人」をもじったものと思われる。その他1月東京国際フォーラムと7月梅田芸術劇場で初のインド映画を舞台化した「オーム・シャンティ・オーム-恋する輪廻‐」を星組紅ゆずると綺咲愛里のプレお披露目公演として上演。ドラマシティでは7月星組「阿弖流為-ATERUI-」を礼真琴主演で、10月花組「ハイカラさんが通る」を柚香光主演で上演した。礼と柚香は常に並べて競わさせているようだった。梅田芸術劇場では12月に「タカラヅカスペシャル2017 ジュテーム・レビュー -モン・パリ誕生90周年-」が行われた。

 

 この年は花組で新トップ娘役仙名彩世、月組の新トップ珠城りょう、雪組早霧せいな・咲妃みゆ退団に新トップコンビ望海風斗・真彩希帆コンビ、星組紅ゆずる・綺咲愛里新トップコンビ、宙組朝夏まなと退団と全ての組で体制変更が起こるという、非常に流動的な年となった。

 102期生の男役で新人公演の主演経験者は花組・侑輝大弥、雪組から月組に移動した彩海せら、星組から雪組へ移動した咲城けい、星組・天飛華音、宙組・風色日向と各組に揃った。その他雪組一禾あお、身長が180㎝ある大楠てら等が活躍中。娘役では現星組トップ舞空瞳は初舞台時の芸名が舞空美瞳だったが直後に改名、舞羽美海に似すぎていたからだろうか?現宙組トップ春乃さくら、元雪組トップ潤花に、現星組水乃ゆり、元宙組花宮沙羅、元月組で男役から転向した君島十和子の娘蘭世惠翔、あらぬ噂が囁かれる桜月のあ等がいた。

 

 1月宙組「Shakespeare~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~/HOT EYES!」の「Shakespeare」は“シェイクスピア没後400年記念”と銘打った、シェイクスピアその人が主人公のお話。やはりシェイクスピアが主人公となった1998年公開の映画「恋に落ちたシェイクスピア」では、若い頃の物語という設定で妻アン・ハサウェイは登場しなかった。「HOT」は1983年花組「オペラ・トロピカル」以来の大階段出しっぱなしレビュー。「オペラ」は当時昭和の鬼才演出家鴨川清作に強い影響を受けた草野旦先生が、定番のレビュー演出進行に反発して大階段の使い方で揉めた挙句に“なら、最初っから最後まで出しっぱなしにしたる!”と開き直ってやったと聞いたが、今回は藤井大介先生は単純に“あんな風にやってみたかった”からだとか。尚、新公では瑠風輝が初主演となった。

 

 2~3月雪組「るろうに剣心」はトップ披露「伯爵令嬢」「ルパン三世」に続く漫画原作の舞台となったが、「ルパン」以上にキャラクターの再現度合いの高さが話題となった。また早霧せいなの身体能力の高さがより舞台で生かされることとなったとか。この公演で大湖せしるが退団となった。その後2018年に前年に退団していた早霧主演で、同舞台が松竹と梅田芸術劇場の共同主催・制作により宝塚歌劇のオリジナルの舞台が、そのまま外部で男女混合で初めて上演された。3~4月星組「こうもり/THE ENTERTAINER!」の「こうもり」はオペレッタ「こうもり」を基にしているが、元々の主役アイゼンシュタイン侯爵は二番手紅ゆずるとなり、北翔海莉演じるファルケ博士を主役としたコミカルな復讐劇となった。この頃の星組は柚希礼音時代のイケイケな雰囲気はすっかり払拭されて、より洗練された印象に変化していた。また新公では真彩希帆が初ヒロインを務めた。

 

 4~5月花組「ME AND MY GIRL」では明日海りおが2008年月組公演新公主演以来のビルを演じ、サリー/花乃まりあに対してジョン卿/芹香斗亜・瀬戸かずや、ジェラルド/水美舞斗・芹香、ジャッキー/柚香光・鳳月杏、マリア公爵夫人/桜咲彩花・仙名彩世とWキャストだらけ。更に新公では1部と2部のキャストを分けて更に大劇場と東宝で入れ替えるという複雑さ。稽古もさぞ混乱したことだろう。6~7月月組「NOBUNAGA<信長>/Forever LOVE!!」は龍真咲の退団公演となった。21世紀以降入団で最初のトップで2年前の100周年の時は一番若いトップと言われながら、この時は専科の轟悠以外で一番古いトップとなっていたのだった。但し龍独特の台詞回しや歌唱法には、個人的に最後まで慣れることができなかった。又この公演後に凪七瑠海が専科へ移動となった。

 

 

 7~8月宙組「エリザベート」で朝夏まなとが9代目のトートとなった。初代トート一路真輝による軽いウェーブの白っぽいブロンドヘア以来、各公演それぞれのトート像が作られてきたけれど、朝夏はイメージを一新して初の黒髪ストレートにブラックレザー風の衣装でハードコア風のビジュアルとなった。8~10月星組「桜華に舞え/ロマンス‼」は北翔海莉と妃海風コンビの退団公演となった。北翔は2012年に宙組から専科へ移動した後は、宙以外の組への特出を果たし結局全組の公演出演を果たして星組トップに就任。確か様々な資格も取得しており、何か重機の運転免許も取得済とか聞いた記憶がある。とにかく色々あったがパワフルな人だったという印象。又、北翔と同期だった専科の美城れんもこの公演で退団となった。

 

 10~11月雪組「私立探偵ケイレブ・ハント/Greatest HITS!」は、話題作続きという印象が強かった早霧せいなの舞台キャリアの中で一番地味だった気がする。11~12月花組「雪花抄/金色の砂漠」で明日海りお二代目の相手役花乃まりあが退団となった。「金色」では明日海が物語冒頭奴隷として四つん這いとなり、お姫様花乃の足台となる場面が話題となった。

 

 バウホールでは「Bow Shinging Workshop」としてコンサート形式で各組若手主体の公演が行われた。6月宙組は桜木みなと、和希そら、遥羽らら、星風まどか等。6月星組麻央侑希、綾凰華、極美慎、天彩峰里等。7月雪組永遠輝せあ、諏訪さき、縣千、有沙瞳、彩みちる、桜庭舞等。8月花組柚香光、水美舞斗、綺城ひか理、朝月希和等。10~11月月組暁千星、風間柚乃、礼華はる、美園さくら等が出演した。9月花組「愛ラブフランケンシュタイン」で瀬戸かずやが研13で初主演。10月月組「FALSTAFF」は専科から星条海斗が特出して初主演。11~12月宙組「双頭の鷲」は再び専科から轟悠が特出して主演した。轟は2月にも花組「For the people -リンカーン 自由を求めた男-」にリンカーン大統領役で主演していた。又3~4月月組全国ツアー「激情/Apasionado!!III」では珠城りょうが主演を務めた。

 

 この年は後半になって月組龍真咲と星組北翔海莉・妃海風コンビが退団したため、新トップの誕生は無かった。それ以外の花組・雪組・宙組は安定し充実をみせた1年となった。バウでは若手主体のコンサートと、ベテランの初主演公演が目立った。

 前年の100周年の喧騒がようよう落ち着いて来たこの年の101期生からは、現役男役スターに身長178㎝の長身を誇る月組礼華はる、雪組の縣千、星組碧海さりお、宙組鷹翔千空等が活躍中。娘役の現役には男役から転向した月組天紫珠李がおり、退団者には元月組結愛かれん、星組から専科へ移動し映像中心の活躍をするとの事だったが結局トヨタ自動車の御曹司とご結婚をあげられた星蘭ひとみ等がいた。

 

 1~2月雪組「ルパン三世 -王妃の首飾りを追え!-/ファンシー・ガイ!」は早霧せいなと咲妃みゆの新トップコンビの大劇場披露であり、原作はモンキー・パンチ作の青年コミック、そして自分の少年時代から続くTVアニメでもあった「ルパン三世」の舞台化。しかし結構色っぽい描写も多い原作をどう処理するのかと思えば、脚色・演出の小柳奈穂子ほマリー・アントワネットを引っ張り出してきて宝塚が最も得意とするロココに持ち込む変化球で見事に処理。しかしカリオストロ伯爵まで登場するとは思わなかった。大野雄二作曲の有名なテーマソングも使って、原作者も満足の仕上がりだったとか。二番手に望海風斗、三番手格で彩凪翔と彩風咲奈が並ぶ形となり、また永久輝せあが研4で新公初主演を飾った。

 

 2~3月星組「黒豹の如く/Dear DIAMOND!! -101カラットの永遠の輝き-」は柚希礼音と夢咲ねねの退団公演となったが、トップ在位6年超は、和央ようか以来の長期政権だった。尚、「黒豹」は柴田侑宏の生涯最後の作品となり、又公演後に真風涼帆が宙組へ組替えとなった。3~4月花組「カリスタの海の抱かれて/宝塚幻想曲(タカラヅカ ファンタジア)」の「カリスタ」は、脚本家大石静が2011年宙組「美しき生涯」に次いで書き下ろした作品。新しい相手役花乃まりあのお披露目となり、花組のトップ娘役は桜乃・蘭乃・花乃と3代続けてシリーズの様な並びとなった。又新公では研7最後の年に水美舞斗が初主演となった。又鳳月杏がこの公演から月組から組替えとなって来た。4~5月月組「1789 -バスティーユの恋人たち-」は言わば「ベルばら」の裏側からフランス革命を描いたフレンチ・ロック・ミュージカル。潤色と演出の小池修一郎は主人公ロナン龍真咲に対して、本来ならばヒロインのはずのオランプを海乃美月と早乙女わかばのWキャストとし、愛希れいかをアントワネットで準主役としてトップコンビがコンビにならない形に脚色した。美弥るりかがルイ16世の弟で密かに国王の座を狙うオルレアン公に回ったのだが、典型的な二枚目ではないこのような悪役を魅力的に好演して存在感を際立たせた。この公演後に星条海斗が専科へ組替えとなった。

 

 6~7月宙組「王家に捧ぐ歌」は新トップ朝夏まなとの大劇場披露となって、相手役には引き続き実咲凛音がコンビを組むこととなった。二番手には星組から真風涼帆、三番手に愛月ひかるという体制になり、いよいよ愛月に初の宙組生え抜きトップ誕生の期待が寄せられることとなった。初演では湖月わたるラメダスに対して安蘭けいアイーダが当たり檀れいはアムネリスに回ったが、今回は朝夏ラメダスに実咲アイーダと本来のコンビでの上演となった。7~8月雪組「星逢一夜/La Esmeralda」の「星逢」は上田久美子の大劇場デビュー作だったが、前作「ルパン三世」から一転した情感豊かな作風に絶賛が寄せられ、特に望海風斗演じる源太の演技は大きな感動を呼ぶこととなった。。昭和時代ならば早霧・咲妃・望海の3人でゴールデン・トリオと呼ばれただろうが、平成にあってはトリデンテと呼ばれるようになった。ショーではよく舞台上部にタイトルが掲げられるのだが、「Esmeralda」ではその上にマルで囲われた“ラ”が妙に可笑しかった。

 

 8~9月星組「ガイズ&ドールズ」は1984年月組、2002年月組に続く3度目の再演となったが、長期に渡った柚希礼音の次のトップが専科の北翔海莉という発表がなされたときは本当に心底驚いた。過去新専科からのトップ就任はあったものの、一旦専科へ移動となった時点で誰もが北翔のトップの目は無くなったと考えた。また柚希の下で二番手を務めてきた紅ゆずるも歌唱に難ありとの声もあったがそれなりの実績を積んできており、そのままのトップ昇格に疑いを挟む余地も無いように見えた。ただ柚希の退団発表のころから体調不良による休演があったりしたため、トップの激務を鑑みて一旦間を置くことにしたのかもしれない。なんでも北翔がトップ就任の打診を受けた際に当初は何度も辞退したと聞くが、そこをあえて押し切り更に過去の悪評もあって劇団としてはワン切りとする訳にもいかなかったのだろう。結局相手役に妃海風、二番手に紅ゆずる、そして礼真琴、七海ひろきが続く布陣となった。礼は前年全国ツアー「風と共に去りぬ」のスカーレットに続いてアデレイドと娘役が続いた。その礼と同期の瀬央ゆりあが新公で初主演となった。

 

 10~11月花組「新源氏物語/Merodia-熱く美しき旋律-」の「新源氏」は柴田侑宏作の作品で1989年以来の再演となった。望海風斗が抜けて二番手が芹香斗亜、三番手柚香光という非常に若い3人を、瀬戸かずやと鳳月杏がサポートする体制となった。11~12月月組「舞音-MANON-/GOLDEN JAZZ」の「舞音」は「マノン・レスコー」をアジアに舞台を移したものだが、この公演から珠城りょうが5期上の美弥るりかと凪七瑠海を抜いて、正式に二番手に昇格した。因みに美弥の役は主人公龍の“真実の心を表す存在”ということで台詞はなしで、凪七が「1789」に続いてオーソドックスな二枚目なのに対して、美弥は悪役に続いて今度は台詞の無い役と変化球続きで少々気の毒な気もしていた。

 

 バウホールでは三木章夫作・演出によるバウショーケース第3弾として、4月宙組「New Wave! -宙-」が澄輝さやと主演で上演された。7~8月花組「スターダム」は鳳月杏の初主演作品。8月専科「オディプス王」は轟悠主演でヒロイン役に凪七瑠海となった。8~9月月組「A-EN」は朝美絢Verと暁千星Verの2パターンで上演。10月宙組「相続人の肖像」で桜木みなとが、11月雪組「銀二貫」で月城かなとが夫々初主演となった。

 

 ドラマシティ1月花組「風の次郎吉」は、未だ専科だった北翔海莉主演で“宝塚版鼠小僧”。中日劇場2~3月月組「風と共に去りぬ」は前年梅田芸術劇場と同様に轟悠バトラーに対して、スカーレットⅠ龍真咲、Ⅱ凪七瑠海、ベル美弥るりかとメラニー愛希れいか以外の主要娘役を男役が演じることとなった。博多座5月雪組「星影の人」は1976年汀夏子主演で初演、中日劇場2007年雪組は水夏希で再演以来、早霧せいな主演での再再演となった。梅田芸術劇場7月花組「ベルサイユのばら‐フェルゼンとアントワネット編/宝塚幻想曲」は海外公演の試演会で、そのまま8月に台湾公演が行われたことで2005年星組湖月わたる主演の韓国公演以来の、「ベルばら」海外公演となった。

 

 星組柚希礼音・夢咲ねねが退団となったが、雪組で早霧せいなと咲妃みゆが、星組で北翔海莉と妃海風コンビが誕生した。100周年で盛り上がった前年に引き続き、101年目も海外公演を含めた積極的な企画で攻めた1年だった。

 1913年(大正2年)に阪急電鉄(当初は箕面有馬電気鉄道)の創始者小林一三が温泉場の客寄せとして宝塚唱歌隊を結成してからとうとう100年を達成したこの年は、数々の記念式典や記念行事そして記念公演に終始した1年となった。尚一本立てを除いてレビュー・ショーのタイトルは、90周年の際と同様に全て“宝塚/タカラヅカ/TAKARAZUKA”がついたものとなった。

 

 先ずこの年の初舞台生である100期生からは、95期生以来の多くのスターが誕生している。先ず男役では花組聖乃あすかと月組風間柚乃の2人を先頭に星組極美慎、花組一之瀬航季、退団予定ではあるが宙組優希しおん、雪組眞ノ宮るい等に、退団者には元月組蘭尚樹もいた。娘役では退団予定ではあるが宙組から花組トップの星風まどか、元花組トップ華優希、元花組音くり寿、雪組から星組の桜庭舞等がいたが、現役では宙組天彩峰里や月組桃歌雪等が活躍中。

 

 100周年の冒頭を飾ったのは1~2月星組「眠らない男・ナポレオン」は、柚希礼音のナポレオンに夢咲ねねのジョセフィーヌという配役で、2007年花組「アデュー・マルセイユ」以来のオリジナルとなった小池修一郎作・演出作品。更に、音楽をフランスからジェラール・プレスギュルヴィックが担当し、”宝塚発世界へ”と気合が入った作品だった。かつて同じくナポレオンとジョセフィーヌを描いた1985年花組「愛あれば命は永遠に」という作品があったが、これはナポレオン高汐巴とジョセフィーヌ若葉ひろみに加えて、大浦みずきが演じたジョセフィーヌの愛人イポリット・シャルル大尉の三角関係がストーリーの肝だった。しかし、今回はナポレオンの栄光の軌跡を中心に据え、そこにジョセフィーヌとの愛と葛藤が絡む物語となった。

 

 2~3月花組「ラスト・タイクーン/TAKARAZUKA∞夢眩」は蘭寿とむの退団公演となった。「ラスト」は「ギャッツビー」の作者として有名なフィッツジェラルドの遺作となった未完の長編小説の舞台化で、新公で柚香光が初主演した。又、演出家生田大和の大劇場デビュー作品。3~4月月組「宝塚をどり/明日への指針 -センチュリー号の航海日誌-/TAKARAZUKA 花詩集100!!」は3本立ての公演となった。「をどり」の大劇場公演のみ花組蘭寿とむ・蘭乃はな、雪組壮一帆・愛加あゆ、星組柚希・夢咲、宙組凰稀かなめ・実咲凛音の各組トップコンビが特別出演した。「花詩集100」では1993年月組「ブロードウェイボーイス」の振付をトミー・チューンと共に担当したジェフ・カルフーンが、衣装をフランス人デザイナー、アントワーヌ・クルックが担当したことも話題となった。そのカルフーン氏が担当した「黒きバラ」の場面では、衣装が黒の皮服に黒のポリススタイルの帽子と何とも危ない雰囲気で、しかも龍のねちっこい癖のある歌が絡むとかなりヤバい雰囲気になってしまい、他の場面がトリコロールカラーで典型的な宝塚パターンであっただけにこれが100周年で本当に大丈夫?と思ってしまったのだった。又、一応美弥るりかと凪七瑠海が二番手格だったのだが、全体を見るとその下に位置付けられているはずの珠城りょうの方が目立っていたように感じた。また公演中の4月5日に創立100周年記念式典が執り行われ約1,500名のOGが参加し、宝塚の町の其処ここで同窓会が行われたとか。

 

 5~6月宙組「ベルサイユのばら-オスカル編-」では凰稀オスカルに対して、アンドレ朝夏まなと・緒月遠麻、ジョローデル七海ひろき・朝夏、アラン緒月・七海という二番格グループWキャストとなったが、凰稀は榛名由梨以来本公演でオスカルとバトラーの両役を演じた2人目のトップとなった。尚、宙組はこの後8~9月の朝夏主演の全国ツアーで「フェルゼンとアントワネット編」を上演しており、朝夏フェルゼンに実咲凛音アントワネットと七海オスカルというキャストとなった。6~7月雪組「一夢庵風流記 前田慶次/My Dream TAKARAZUKA」は早くも壮一帆と愛加あゆに加えて未涼亜希の退団公演となった。早霧せいなはようやく二番手の男役を演じることができたと思ったら、もうトップの退団という事になってしまった。順番からすると当然早霧が次の雪組トップという事になっていたのだが、個人的には正直この時になっても未だ早霧に不安感を持っていた。

 

 7~8月星組「The Lost Glory -美しき幻影-/パッショネイト宝塚!」の「The Last」は轟悠が2008年宙組「黎明の風」以来本公演に登場するシェイクスピアの「オセロ」を下敷きにしたストーリーで、柚希が「オセロ」におけるイアーゴーに当たる悪役を演じた。8~9月花組「エリザベート」は新トップ明日海りおの披露公演となった。相手役の蘭乃はなはこれが退団公演となったのだが、蘭乃が蘭寿と同時ではなくこの公演で退団することにイチャモンを付ける声もあった。個人的には宝塚で何時、何をもって辞めるかは基本本人の意思に拠るものだし、それに対して匿名でケチを付けるのも卑怯な話だと思っている。又、ルキーニを演じた望海風斗が公演後に雪組へ組替えとなり、結局明日海との差し替え人事となった。9~11月月組「PUCK/CRYSTAL TAKARAZUKA-イメージの結晶-」の「PUCK」は、涼風真世主演の1992年月組以来の再演。当時人間ならざるものを最も得意としていた涼風の代表作。初演で当時二番手だった天海祐希の役ボビーを演じたのが珠城りょうで一瞬んん⁉と思ったのだけど、7~8月日本青年館・ドラマシティ公演月組「THE KINGDOM」が凪七瑠海・美弥るりかのW主演作だったこともあり、役柄に合わせてのキャストかと当時は思っていた。新公では朝美絢が初主演となった。又この公演後に鳳月杏が花組へ組替えとなった。11~12月宙組「白夜の誓い/PHOENIX 宝塚!!」が凰稀かなめの退団公演となり、創立100周年の最後を飾る作品となった。この作品で朝夏まなとが漸く単独二番手として線上表記され、桜木みなとが新公で初主演となった。又この公演後に七海ひろきが星組へ組替えとなった。

 

 バウホールでは三木章夫作・演出によるバウショーケース第2弾として、前年12月の花組に続き1月月組「New Wave! -月-」が美弥るりか、宇月颯、鳳月杏、珠城りょうら若手メンバーによって上演された。5月星組「かもめ」で礼真琴、6月花組「ノクターン」で柚香光、9月「SANCTUARY」で愛月ひかる、10~11月「パルムの僧院」彩風咲奈、12月星組「アルカサル」で麻央侑希と十碧れいやが夫々初主演を飾った。

 

 梅田芸術劇場1月月組「風と共に去りぬ」では専科轟悠に対して、スカーレットⅠ龍真咲、Ⅱ凪七瑠海、ベル光月るうとメラニー愛希れいか以外の主要娘役の役をすべて男役で上演した。シアタードラマシティ2月宙組「翼ある人びと」は上田久美子作・演出、朝夏まなと主演で上演。4月雪組「心中・恋の大和路」は壮一帆と愛加あゆで1998年以来16年振りの再演。東急シアターオーブ5~6月星組「太陽王〜ル・ロワ・ソレイユ〜」はフランスで大ヒットのフレンチ・ロック・ミュージカル。日生劇場10月雪組「伯爵令嬢」は早霧せいな・咲妃みゆの新トップコンビ披露。

 

 その他、100周年ということでかこの年は「ベルばら」の大盤振る舞いが続いた。「ベルばら」は先ず本公演で宙組「オスカル編」、全国ツアーで3月雪組「オスカルとアンドレ編」、中日劇場6月花組「フェルゼンとアントワネット編」は明日海りおのトップ披露。全国ツアー8~9月宙組「フェルゼンとマリーアントワネット編」。

 

 100周年記念に乗っかってTVでも特別番組が放送されたが、その中で久しぶりにお顔を拝見した尚すみれの男っぷりに驚いてしまった。

 

 この年は100周年記念という大きな節目の年ということで、花組蘭寿とむ、雪組壮一帆・愛加あゆ、宙組凰稀かなめが退団し、花組明日海りお、雪組早霧せいな・咲妃みゆの新トップが誕生と、3組でトップ交代が発生した。また各組で若手の台頭が目立つ年ともなった。