前年の100周年の喧騒がようよう落ち着いて来たこの年の101期生からは、現役男役スターに身長178㎝の長身を誇る月組礼華はる、雪組の縣千、星組碧海さりお、宙組鷹翔千空等が活躍中。娘役の現役には男役から転向した月組天紫珠李がおり、退団者には元月組結愛かれん、星組から専科へ移動し映像中心の活躍をするとの事だったが結局トヨタ自動車の御曹司とご結婚をあげられた星蘭ひとみ等がいた。

 

 1~2月雪組「ルパン三世 -王妃の首飾りを追え!-/ファンシー・ガイ!」は早霧せいなと咲妃みゆの新トップコンビの大劇場披露であり、原作はモンキー・パンチ作の青年コミック、そして自分の少年時代から続くTVアニメでもあった「ルパン三世」の舞台化。しかし結構色っぽい描写も多い原作をどう処理するのかと思えば、脚色・演出の小柳奈穂子ほマリー・アントワネットを引っ張り出してきて宝塚が最も得意とするロココに持ち込む変化球で見事に処理。しかしカリオストロ伯爵まで登場するとは思わなかった。大野雄二作曲の有名なテーマソングも使って、原作者も満足の仕上がりだったとか。二番手に望海風斗、三番手格で彩凪翔と彩風咲奈が並ぶ形となり、また永久輝せあが研4で新公初主演を飾った。

 

 2~3月星組「黒豹の如く/Dear DIAMOND!! -101カラットの永遠の輝き-」は柚希礼音と夢咲ねねの退団公演となったが、トップ在位6年超は、和央ようか以来の長期政権だった。尚、「黒豹」は柴田侑宏の生涯最後の作品となり、又公演後に真風涼帆が宙組へ組替えとなった。3~4月花組「カリスタの海の抱かれて/宝塚幻想曲(タカラヅカ ファンタジア)」の「カリスタ」は、脚本家大石静が2011年宙組「美しき生涯」に次いで書き下ろした作品。新しい相手役花乃まりあのお披露目となり、花組のトップ娘役は桜乃・蘭乃・花乃と3代続けてシリーズの様な並びとなった。又新公では研7最後の年に水美舞斗が初主演となった。又鳳月杏がこの公演から月組から組替えとなって来た。4~5月月組「1789 -バスティーユの恋人たち-」は言わば「ベルばら」の裏側からフランス革命を描いたフレンチ・ロック・ミュージカル。潤色と演出の小池修一郎は主人公ロナン龍真咲に対して、本来ならばヒロインのはずのオランプを海乃美月と早乙女わかばのWキャストとし、愛希れいかをアントワネットで準主役としてトップコンビがコンビにならない形に脚色した。美弥るりかがルイ16世の弟で密かに国王の座を狙うオルレアン公に回ったのだが、典型的な二枚目ではないこのような悪役を魅力的に好演して存在感を際立たせた。この公演後に星条海斗が専科へ組替えとなった。

 

 6~7月宙組「王家に捧ぐ歌」は新トップ朝夏まなとの大劇場披露となって、相手役には引き続き実咲凛音がコンビを組むこととなった。二番手には星組から真風涼帆、三番手に愛月ひかるという体制になり、いよいよ愛月に初の宙組生え抜きトップ誕生の期待が寄せられることとなった。初演では湖月わたるラメダスに対して安蘭けいアイーダが当たり檀れいはアムネリスに回ったが、今回は朝夏ラメダスに実咲アイーダと本来のコンビでの上演となった。7~8月雪組「星逢一夜/La Esmeralda」の「星逢」は上田久美子の大劇場デビュー作だったが、前作「ルパン三世」から一転した情感豊かな作風に絶賛が寄せられ、特に望海風斗演じる源太の演技は大きな感動を呼ぶこととなった。。昭和時代ならば早霧・咲妃・望海の3人でゴールデン・トリオと呼ばれただろうが、平成にあってはトリデンテと呼ばれるようになった。ショーではよく舞台上部にタイトルが掲げられるのだが、「Esmeralda」ではその上にマルで囲われた“ラ”が妙に可笑しかった。

 

 8~9月星組「ガイズ&ドールズ」は1984年月組、2002年月組に続く3度目の再演となったが、長期に渡った柚希礼音の次のトップが専科の北翔海莉という発表がなされたときは本当に心底驚いた。過去新専科からのトップ就任はあったものの、一旦専科へ移動となった時点で誰もが北翔のトップの目は無くなったと考えた。また柚希の下で二番手を務めてきた紅ゆずるも歌唱に難ありとの声もあったがそれなりの実績を積んできており、そのままのトップ昇格に疑いを挟む余地も無いように見えた。ただ柚希の退団発表のころから体調不良による休演があったりしたため、トップの激務を鑑みて一旦間を置くことにしたのかもしれない。なんでも北翔がトップ就任の打診を受けた際に当初は何度も辞退したと聞くが、そこをあえて押し切り更に過去の悪評もあって劇団としてはワン切りとする訳にもいかなかったのだろう。結局相手役に妃海風、二番手に紅ゆずる、そして礼真琴、七海ひろきが続く布陣となった。礼は前年全国ツアー「風と共に去りぬ」のスカーレットに続いてアデレイドと娘役が続いた。その礼と同期の瀬央ゆりあが新公で初主演となった。

 

 10~11月花組「新源氏物語/Merodia-熱く美しき旋律-」の「新源氏」は柴田侑宏作の作品で1989年以来の再演となった。望海風斗が抜けて二番手が芹香斗亜、三番手柚香光という非常に若い3人を、瀬戸かずやと鳳月杏がサポートする体制となった。11~12月月組「舞音-MANON-/GOLDEN JAZZ」の「舞音」は「マノン・レスコー」をアジアに舞台を移したものだが、この公演から珠城りょうが5期上の美弥るりかと凪七瑠海を抜いて、正式に二番手に昇格した。因みに美弥の役は主人公龍の“真実の心を表す存在”ということで台詞はなしで、凪七が「1789」に続いてオーソドックスな二枚目なのに対して、美弥は悪役に続いて今度は台詞の無い役と変化球続きで少々気の毒な気もしていた。

 

 バウホールでは三木章夫作・演出によるバウショーケース第3弾として、4月宙組「New Wave! -宙-」が澄輝さやと主演で上演された。7~8月花組「スターダム」は鳳月杏の初主演作品。8月専科「オディプス王」は轟悠主演でヒロイン役に凪七瑠海となった。8~9月月組「A-EN」は朝美絢Verと暁千星Verの2パターンで上演。10月宙組「相続人の肖像」で桜木みなとが、11月雪組「銀二貫」で月城かなとが夫々初主演となった。

 

 ドラマシティ1月花組「風の次郎吉」は、未だ専科だった北翔海莉主演で“宝塚版鼠小僧”。中日劇場2~3月月組「風と共に去りぬ」は前年梅田芸術劇場と同様に轟悠バトラーに対して、スカーレットⅠ龍真咲、Ⅱ凪七瑠海、ベル美弥るりかとメラニー愛希れいか以外の主要娘役を男役が演じることとなった。博多座5月雪組「星影の人」は1976年汀夏子主演で初演、中日劇場2007年雪組は水夏希で再演以来、早霧せいな主演での再再演となった。梅田芸術劇場7月花組「ベルサイユのばら‐フェルゼンとアントワネット編/宝塚幻想曲」は海外公演の試演会で、そのまま8月に台湾公演が行われたことで2005年星組湖月わたる主演の韓国公演以来の、「ベルばら」海外公演となった。

 

 星組柚希礼音・夢咲ねねが退団となったが、雪組で早霧せいなと咲妃みゆが、星組で北翔海莉と妃海風コンビが誕生した。100周年で盛り上がった前年に引き続き、101年目も海外公演を含めた積極的な企画で攻めた1年だった。