104期生の男役で新人公演主演経験者は花組・天城れいん、先頃歌唱で注目されたのは宙組の真白悠希。娘役の新公ヒロイン経験者は花組・美羽愛、月組きよら羽龍に元花組都姫ここがいた。

 

 1~2月花組「ポーの一族」は演出家小池修一郎が念願としていた萩尾望都作の漫画の舞台化。明日海りおが主人公のバンパイア・エドガーを演じ、そのパートナーとなるアランに新たな二番手となった柚香光。瀬戸かずやと仙名彩世がエドガーの養父母となるポーツネル男爵夫妻を演じた。この公演に際しては、小池先生曰く明日海いたからこそ上演が可能になったとのことで、明日海も見事にその世界観を表現しきっており、それ迄再演作が多い印象だった明日海のオリジナル代表作となる作品となった。その後2021年に明日海の退団後の初舞台として、「るろうに剣心」と同様に宝塚歌劇の舞台を男女混合で再演する形で「ポー」が上演され、又話題を呼ぶこととなった。

 

 2~3月月組「カンパニー -努力、情熱、そして仲間たち-/BADDY -悪党は月からやって来る-」はかなり異色の公演となった。珠城りょうについては最後まで賛否両論、毀誉褒貶色々言われたようだったが、個人的には「カンパニー」で演じた様な平凡な人物像を表現できるということも一つの力量の証だと思っている。榛名由梨以来の宝塚伝統の古典的ともいえるオーソドックスなスター像が、最近のキラキラした華やかなスター性が好まれる風潮にマッチしていなかったのではないかと勝手に思っているのだが、どうだろう。「BADDY」は作・演出の上田久美子による女性演出家として初のショー作品でありながら、宝塚歌劇のショー・レビューの定番を全て逆手に取った演出にとにかく驚かされた。特にフィナーレ大羽根を背負いながら、サングラスに咥えたばこで登場したトップ珠城の姿には客席は唖然とするばかりだったとか。新公では風間柚乃が初主演となった。

 

 3~4月宙組「天は赤い河のほとり/シトラスの風 -Sunrise-」は真風涼帆・星風まどか新トップコンビ披露公演となった。二番手に花組から来た芹香斗亜、三番手には芹香と同期の愛月ひかるがそのまま残る形となって、かつての花組で明日海りおが月組から組替えとなって二番手となり、同期の望海風斗が三番手となった時と同じような状況が何やらまた不穏な雰囲気。この年は1998年に宙組が誕生して以来20周年となり、その幕開きの公演で上演された「シトラスの風」がロマンチック・レビュー第20弾の記念公演として一部改訂の上再演された。

 

 4~6月星組「ANOTHER WORLD/Killer Rouge」の「ANOTHER」は落語ミュージカルと銘打ち、複数の落語ネタに基づいた紅ゆずるが最も得意とするドタバタ喜劇。“冥途カフェ”等が出てきて、“「ベルサイユの蓮」を演出する大御所ももう直ぐ来るぞ”と悪乗り演出もまた一興な作品だった。「Killer」はこの年の秋に予定されていた第二回台湾公演の試作品。6~7月雪組「凱旋門/Gato Bonito!!」の「凱旋門」は、2000年大劇場・2001年博多座以来の再演。専科から轟悠が再び主演した。7~8月花組「MESSIAH/BEAUTIFUL GARDEN -百花繚乱-」の「MESSIAH」は天草四郎について新たな視点で描いたという作品。

 

 8~9月月組「エリザベート」は珠城りょうが10代目トートに扮し、エリザベート/愛希れいかの退団公演となった。愛希は龍真咲と珠城の2代に渡り約6年半トップを務めたが、これは花總まり、遥くららに次ぐ長さとなった。美弥るりかがヨーゼフにルキーニが月城かなと、そしてルドルフに暁千星という所までは順当だったが、当時研5だった風間柚乃が暁とWキャストとなり先ず話題となった。そして幕が開き新公でルキーニを演じた風間の演技が評判を呼んだところで、直後に美弥が休演となりヨーゼフの代役に月城が、そのルキーニの代役は本来暁の筈だったが、何と風間が抜擢されて暁は本役ルドルフのままで代役公演を実施。これれで一気に風間の評価が高まり、正にスター誕生の瞬間となった。その後翌年にかけて風間は月城の代役を更に2回務め、未だ新公年次の下級生らしからぬ演技力と存在感を披露し更に評価を高めることとなった。

 

 10~11月宙組「白鷺の城/異人たちのルネサンス」の「白鷺」は、平安時代の陰陽師と妖狐の時代を超えた宿縁をテーマとした和物レビュー。「異人」はレオナルド・ダヴィンチの物語。11~12月雪組「ファントム」は飛びぬけた歌唱力が評判となった望海風斗・真彩希帆“希望コンビ”による待望の公演が、幕が上がる前から評判を呼んだ。歌唱力の面を見ればそれまでの「ファントム」とは次元が異なるものとも言われたが、そこが却って宝塚歌劇としての舞台の魔法を減じてしまったという声もあったと聞いた。

 

 バウホールでは3月雪組「義経妖狐夢幻桜」は朝美絢の、5月花組「Senhor CRUZEIRO! -南十字に愛された男-」は水美舞斗とそれぞれ95期生の単独初主演作品となった。更に7月月組「愛聖女 -Sainte♡d'amour-」は同じく95期の娘役愛希れいかによる退団記念の主演作。8月宙組「ハッスル メイツ!」は和希そらの初主演作品で宙組若手メンバーによる20周年の振り返ったショーとの事だったが、そのタイトルの余りのレトロ感に少々驚いた。8~9月星組「New Wave -星-」は瀬央ゆりあ、紫藤りゅう、極美慎等が出演した。

 

 その他1月東京国際フォーラム宙組「WEST SIDE STORY」は作曲家レナード・バーンシュタインの生誕100周年を記念し、スタッフをブロードウェイから招聘しての上演となった。ところで丁度そのバーンシュタインについての映画「マエストロ」を先般観たところだったが、かなり奔放な人生を送っていたことに驚いた。天才と謳われるアーティストの人生は、やはり並の器には収まらないと言うことだろうか。2月ドラマシティ星組「ドクトル・ジバゴ」は、轟悠が専科から特出で主演し有沙瞳が相手役と務めた。6月赤坂ACTシアター月組「雨に唄えば」は2008年宙組以来10年ぶりの再演となり、ドラマシティでは月城かなと主演で「LAST PARTY」がやはり12年振りでの再演となった。10月には台湾公演として星組「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊記/Killer Rouge/星秀☆煌紅」が実施された。

 

 この年は真風涼帆の新トップ就任と愛希れいかの退団があったものの、大きな構造変化のない安定した1年となった。又宙組が20周年を迎えての記念行事もあった。またバウホールでは若手の初主演作が続いた。

 

さて、2021年1月以来宝塚歌劇団に関しての思い出を書き散らかしてきた。当初は過去50年に渡って各組トップスターについての思い出を並べ、昨年年初からは1975年から年次毎にまとめてきて今回で平成時代も終わりとなる。今年で令和5年となるが、令和になって以降コロナ禍による公演中断を始めとして、現在進行形の事柄も様々あり少々手に余る状況になっているので、この平成最後そして令和元年となる2018年をもって、一旦区切りを付けることとしました。

 

今後読み返してみての修正をすることもあるかと思いますが、取り敢えずはこれにて終了とします。

どうもありがとうございました。