2018年8月4日土曜日に「第一回竹之助の会」が大丸心斎橋劇場で行われ満員御礼の盛況の中
無事公演終了しました。酷暑の中の御来場に改めて御礼申し上げます。
「歌しぐれ」。75年ぶりの上演ですが、内容は典型的な上方ホームドラマにしてメロドラマ。
本町橋近くの宿屋紀国屋の暖簾を守る女主人のおれん(上村吉弥)は、一見客を取らぬほどの
格式を保ちながらも商売は思わしくなく、ただ養女お町(河合宥季)の婚礼を楽しみにするばかりです。
夫の幼馴染の新宮屋治助(坂東竹三郎)に金銭的援助を頼むほどです。
怜悧な美貌が素敵な吉弥さん!竹三郎も元気!
お町の縁談を断りにやってくる甲州屋善兵衛(桂九雀)。見事な役者ぶり。
断りの理由は、お町の実母に纏わる身持ちの悪い噂でありました。
破談を宣告されて悲しむおれんとお町。そこへ、
ほの暗い時雨時に姿を現す一人の御高祖頭巾の女、おぬい(坂東竹之助)。
このおぬいがお町(河合宥季)の実母なのです。
一見客を泊めない紀国屋ですが、時雨時に気の毒と心優しいお町の
とりなしに、おれんも納得して、おぬいを泊めてやることにします。
14年ぶりに再会する実母と娘ですが名乗りは適いません。
劇中に嫋嫋と何度となく流れる「安寿と厨子王」。
この歌こそ、当作のライトモチーフでありテーマ。
お町が朧げな記憶として耳に残していた、実母おぬいの子守歌なのです。
お喋りな女中のお仙(上村折乃助)から、近々お町に婚礼があること、
おぬいと二世の契りを交わした、お町の実父三河屋市郎衛門(曾我廼家八十吉)が再婚して
いることを知り、身悶えします。
紀国屋にたまたま現れた三河屋に散々恨みのたけを募らせるおぬい。
それをふと立ち聞きするおれん。産みの母の意地、育ての母の意地もあって火花の散るやりとり。
女対決の感がありました。やがておれんは止むを得ず出奔に至ったおぬいを理解し、手を取り合います。
悲しいまでの美しさ。お町の婚礼。