“「どうしたら緊張過度に陥らないですみましょうか」
「気取らないことですね、特に自分にね」
「どうしても無意識に上がってしまうのですが、気取らないつもりでも」
「一人で気張っているより、この方法を行いなさい」
と、求心的心理療法の実行法を指示せり。
無意識に動く潜在心は始末悪きものなれども、又平素の心のもっとも正直な現れ方と言う可し。これを強制す可からず。
怖れまいとし、緊張過度より免れんとしてこの法為す可からず。自ら画きし幻影の支配を強化するため也。
ただ事を行う為にのみ為す可し。
それ故、事前に行わず、その事に至ってのみ行う可し。このこと大切なること也。
その方法
落ち着く為にどうしたらよいか。
緊張過度を弛めるコツは息を大きく吐くことにある。鼻からではない、口からである。
吐きつつ肩を落とす。また鼻から静かに吸いつつ肩を上げ、今度は呼吸に関係なく落とす。
これが気を落ち着ける為の方法である。
成功すれば心窩部が柔らかくなる。そして呼吸は楽に吸えるようになる。そうなれば自ずから落ち着く。
ただ、この息を吐く法、緊張過度に陥ってから行う可きで、あらかじめ行っておいて効くものではない。このこと注意を要する。
誰だって一生に何回かはあることだ。憶えておく可きだろう。
試験場の学生のみならず、舞台に上がった歌手でも、相当経験を積んだ俳優であっても、時にこの緊張過度に陥ることがある。
一度陥ったら本来の能力は発揮できず、平素考えられないようなことをしてしまう。
それを抜くの法、前述の如し。
(「月刊全生」平成18年6月号『野口晴哉 語録』)
*緊張をほぐすためには「息を長く吐くと良い」というのは聞いたことがありますが、肩を下げること、前もって行うのではなく緊張してしまってから行うべきこと、というのは初めて知りました。憶えておいて損はないと思います。
*あと、緊張を解く他の方法としては、バッチのフラワーレメディの「レスキューレメディ」が良いと聞いたことがあります(私が実際に試したわけではありません)。