コンチータへのインタビュー (ガラバンダル) | 瑞霊に倣いて

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  『霊界物語』が一組あれば、これを 種 にしてミロクの世は実現できる。 
                            (出口王仁三郎)  

・聖母マリアの出現地ガラバンダルの幻視者の一人、コンチータへのインタビュー 

 

 “ベルを押した。物音一つしない。ほっとして立ち去ろうかと考えたとき、スクリーンドア越しに、そっとこちらをうかがう人影を認めた。

「こんにちは。お電話したイギリス人の作家です。お会いして握手したいだけなんです」

 バカなことをいっていると思った。だが、彼女は動こうとしない。絶望していった。

「ガラバンダルのお兄さま、セラフィ―ノさんと、従姉妹のパキータさんがよろしくとのことです」

 これはスペイン語でいった。それを聞くと、彼女は近づいてドアを少しだけ開け、ついに英語で話した。

「インタビューは受けません」

 声は低く、強いスペイン語なまりだ。

「わかっています。ただ、あなたをどんなにお慕いしているか、お伝えしたかっただけです」

 何をいっているのだろうと自分でも思った。

「私は特別ではありません」

「特別ではないですって!?四年間ほとんど毎日、聖母とお話しになったというのに、特別ではないとおっしゃるのですか」

 彼女はさらにドアを開けた。全身が見えた。驚くばかりの美貌の女性だ。高い頬骨と大きな黒目。マルーンシルクのブラウスと白黒の長いスカートを上品に着こなしている。腕は出して日焼けしていた。彼女はそっと微笑んだ。

「お聞きなさい。あなたが死んで天に召されるときに、あなたもまた聖母にお会いになるでしょう」

 まるで子供に話しかけているような言い方だ。

「入ってもよろしいですか」

 彼女は一瞬戸惑った。それからスクリーンドアを広く開けて、私を中に入れた。玄関から、ダイニングとつながっている居間に案内された。ふたつの壁には鏡がはまっている。他の壁には東洋風のイコンがある。部屋の中央には、色褪せた敷物のかかったコーヒーテーブルが置かれている。ソファに座ると、彼女は正面に腰を下ろして手を膝の上に載せた。

「ニューヨークにはどのくらいお住まいですか」

 十六歳でアメリカに来たといった。今は三十八歳だ。ガラバンダルを離れたのは、どうしようもないジレンマから逃れるためだったという。

「ガラバンダルでは、真実、私を愛してくれる人がいませんでした。私は幻のために崇拝されたのです。幻を知っている人で、私を本当に愛し、あるいは結婚してくれる人はいないと知ったのです」

「一時、幻を捨てたそうですが、なぜそのようなことを?」

「サンタンデルの司教の元へ行き、長時間尋問された末に、もう信じませんといったのです。許すから二度とこのことを口外してはならない、と強く口止めされました。ガラバンダルに戻されてから、自分は聖母を裏切ったのだと感じました。私は幻を信じました。それでも、幻が起こった理由が理解できませんでした。ふたつの中で引き裂かれました」

「それでニューヨークに来られたのですか」

「町でスペイン人医師の下で働き、一年間だれとも話しませんでした。彼は私と結婚したがりました。ほかにも結婚したがる男性がいました。結局、だれかと結婚しなければならなかったのです」

「コンチータ」と私はいった。「あなたは今も警告と大奇蹟を期待しているのですか?」

「はっきりしたことはわかりません。ジョイとも長いこと会っていないのです」

「幻を信じていないということですか」

「何もかもがガラバンダルに反対しています。司教、教会、ありとあらゆる人から虐待を受けています。私を嘘つき、やらせだと言うのです」

「つまり、幻が誤解されているとお考えになっているのですね」

「私が申し上げているのは」と彼女はきっぱりいった。「美しい婦人を見たこと、その方は「聖母だ」と私に言われたということです。私は四年間ほとんど毎日、その婦人と会いました。これが嘘であるなら、真実なものは何もありません。申し上げていることがおわかりですか。真実なものは何ひとつないのです」

 彼女の顔は悲しげだ。指輪をいじっている。

「何がこのような気持ちにさせたのでしょう、コンチータ」

 彼女は唇を噛んで怒ったように私を見た。

「聖母が私を訪れ、このようなしるしとメッセージをすべて与えながら、お見捨てになれるでしょうか?何が真実なのでしょうか?」

 彼女は、私が答えられるかどうかを試そうと、挑戦的にこちらを見ている。まるで、揺らぐ信仰を支える霊的慰めを期待しているかのように。

「当時、妄想を起こしていたかもしれないと考えたことはありますか」

「私たちは多くの精神科のお医者さまや心理学者に調べられました。皆、病気ではないといいました。あのとき以来、どんな病も患ったことはありません。とにかく、あれが狂気であったとしたら、むしろ狂いたいくらいです」

「コンチータ、特別な質問をしてもよろしいですか。私は、ガラバンダルの前隊長、セコ准将と話しました。彼はあなたがキッチンで浮かび上がったのを覚えています。あなたはそれを自覚していましたか。それを確証できますか」

「いいですか。聖母がおいでになると、常に輝く光からご出現になります。私はそれ以外のものは自覚できませんでした。光の外にあるものは何ひとつ。ですから、自分がしたことは自覚していません」

「コンチータ、あなたは奇蹟の日付を知る人です。その八日前に、あなたはガラバンダルに旅するのですね」

「そのとおりです」と彼女はいったが、気の進まない言い方だった。

「奇蹟が起こらなければどうされますか」

 彼女はしばらく指輪をいじっていた。それからいった。

「先ほどから申し上げているではありませんか。奇蹟が起こらなかったら、真実のものは何もありません。それ以上、何がいえるでしょう?」

 彼女はしばらくうなだれていた。

「ときどき、ガラバンダルという言葉をもう聞きたくないと思うことがあります。ごめんなさい」

 それから立ち上がっていった。「さあ、お時間です」

 ドアまで先導して立ち止まり、私を振り返った。

「お願いがあるのですが」

「もちろんですとも。コンチータ」

「どうか、私のために祈っていただきたいのです」”

 

(ジョン・コーンウェル「奇蹟との対話」(Gakken)より)

 

*ジョン・コーンウェル氏は、ベストセラーとなった「バチカン・ミステリー」(徳間書店)の著者でもあり、このガラバンダルの幻視者コンチータへのインタビューは、1990年ごろの話です。

 

*以前にも紹介させていただきましたが、スペインのカンタブリア山脈の中にある小村、ガラバンダルで四人の少女たちに聖母マリアが御出現になったのは、1960年代のことで、もう半世紀以上も前のことになります。私は30年ほど前に、ここを実際に訪れたことがあるのですが、鉄道どころかバスも通っておらず、麓のコシオという村からパン屋さんの車に乗せてもらって何とか辿り着くことが出来ました。昼過ぎに村に着いて宿を確保し、山の上の方にあった御出現が起こった松林を見上げると、そこらあたりが光り輝いているのが見え、驚くと共に深く感動しました(目の錯覚と言ってしまえばそれまでですが)。当時は教会があからさまに御出現を否定していたときで、村には外国人は数人しかいませんでした。御出現の場所でお祈りをし、さらに村の教会でのミサにも出席させていただきましたが、カトリックではないので御聖体は拝領せずに司祭の祝福を受けるだけにしておきました。今なお教会は公式な判断を下していませんが、私はこのガラバンダルでの聖母マリアの御出現は真実であったと固く信じております。

 

*最近、このガラバンダルの出来事についての映画「ガラバンダル:止められない滝」が制作され、ネットで無料公開されています(日本語字幕付)。ぜひ、多くの方に見ていただきたいと思います。ガラバンダルとピオ神父(聖パードレ・ピオ)の関係についても言及されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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