ママと私はひとつ | 瑞霊に倣いて

瑞霊に倣いて

  
  『霊界物語』が一組あれば、これを 種 にしてミロクの世は実現できる。 
                            (出口王仁三郎)  

 “数年前、ニューヨークのクィーンズ・カレッジの商学部に、いっぷう変わったカリキュラムが登場した。正規の履修単位の中に、ある特別コースが設けられたのだ。「サブリミナル・メッセージによる学業成績向上の研究」のためのクラスである。ケネス・パーカー博士のこのクラスには、六十倍の志望者が殺到した。

 パーカーは、タキストスコープという光学装置によって、学生たちの潜在意識に光をあてようと計画した。彼らに、週三回、タキストスコープのレンズをのぞかせる。すると、明るい閃光がぱっとひらめく。それだけである。ただ、その光の中には、ひとつのセンテンス(文章)が隠されている。フラッシュは千分の四秒だから、彼らにはそのセンテンスを判読できない。しかし、法律家で心理学者でもある博士によれば、彼等は潜在意識によってそのメッセージを受け取っているのだという。

 パーカーは、クラスを三つのグループに分けた。……”

 

 “試験後、パーカーはすべてを明らかにした。メッセージなしのグループの平均成績はBの下、暗示№1を受けたグループはBの上、暗示№2を受けたグループはAの上の成績だった。注意深く統計を分析してみても、約十点の得点の差を説明できるものは、タキストスコープによる潜在意識への暗示以外になかった。潜在的に強化された記憶は、かんたんには忘れられない。四週間にわたって潜在意識に暗示を受けた学生は、暗示を受けなかった者よりも、学習したことをよく覚えていたのだ。

 これといった努力もなしに学生たちの記憶を向上させた魔法のメッセージとは、いったい何だったのだろうか?Bの上の成績をとった者たちは、自分が無意識に受信したメッセージを知って、驚いたに違いない。それは、「先生と私はひとつ」という言葉だったのだから。Aの成績をとった者たちは、もっと唖然としたに違いない。こちらのメッセージは、なんと、「ママと私はひとつ」だったのだ。

 「ママと私はひとつ」という暗示が記憶や学習を向上させるなんて、とりわけ成績不振クラスでは信じられないことだろう。だが一見子供じみたこの暗示が、事実、絶大な影響力を持つのである。

 実をいえば、この「ママ」センテンスを最初に考案したのは、ニューヨーク大学で二十年余にわたって潜在意識の研究を指導した故ロイド・シルヴァーマン博士だった。シルヴァーマンは、一体化の幻想、共生の幻想こそが、人をさらに積極的に活動させる役に立ち、自分に最もふさわしい行動をとらせるものだという考えを、実証しようと試みた。そうした幻想を説明するために、彼は「ママと私はひとつ」を思いついたのである。このセンテンスは特別な力を持つことが、しだいに明らかになっていった。……”

 

 “……子どもの中で明らかに何かが生じ、自分に課していた限界と障害から抜け出して、さらに伸びようとするのを手伝ったのだった。それは、潜在意識の「ママ」に他ならなかった。そのお母さんとは、子どもたちの持つ漠然とした心の重荷を軽くしてくれる人のように思われる。

 つづいて「ママ」センテンスのあらゆるヴァリエーションが試みられた。たとえば、「ママはいつもいっしょ」とか、「ママと私二人」、「ママと私はそっくり」、「パパと私はひとつ」など。潜在意識の中で、こうした「ママ」はつねに力を発揮した。また、この「ママ」効果はアメリカ人だけに見られたのではない。イスラエルのテルアビブで潜在意識のテストを行ったシマ・マリアン博士は、そこでも「ママ」の力が絶大であるのを発見した。この「ママ」は世界共通の効果を持っているのだ。

 多くの心理学者は、今もって潜在意識の力を認めようとしていない。だが、アデルフィ大学のワインバーガー博士は、一九九〇年八月のアメリカ心理学協会の大会で、二五六二人に行った潜在意識の「ママ」に関する七二の実験結果を報告した。そして、統計学的に分析してみると「それが確かに何らかの効力を持つ」ことを認めている。

 それでは、なぜ潜在意識の「ママ」は力を持つのだろう?どうやらそれは根源的な記憶にたどりつくようだ。シルヴァーマンは、幼少期の「やさしいお母さん」との共生的一体化について語っている。そして、それは逆説的に、人を自信ある個人に成長させ得るものだと述べている。

 わたしたち著者が講演でこの「ママ」に言及すると、悲痛な表情をした二、三人の聴衆が後を追って来ることがある。「けれども私は母が好きではありません」と言うために。だが、好き嫌いは、その効果と無関係なものらしい。

 長年にわたって潜在意識を研究してきた臨床学的精神医、エルドン・テイラー博士は報告している。患者がどんな問題を抱えている場合でも、潜在意識の中に許しが含まれていなくてはならないことがわかった、と。つまり、自己を許し、他人を許し、許された気持ちになることが必要なのである。要するに「許すこと」、これが根本的に求められる潜在意識なのではないだろうか。それゆえ、すべてを包み込む「ママ」が、さまざまな問題を取り除いてくれるのに違いない。”

 

  (シーラ・オストランダ― / リン・シュローダー「スーパーメモリー」朝日出版社より)

 

*以前読んだ本に、戦時中軍医をしていた方の話が載っていました。それによると、亡くなっていく兵隊さんたちの最後の言葉で一番多かったのが「おかあちゃん」だったそうです。また、やはり何かの雑誌で読んだのですが、いわゆる反社会勢力の人達の社会には、「母親」が存在しない、組長はオヤジと呼ばれるが、組長の妻は常に「アネゴ、アネさん」と呼ばれ、母親ではない、ということが書いてありました。「幼少期の『やさしいお母さん』との共生的一体化」は、何よりも大切なことのように思えます。

(メジュゴリエの聖母マリア)