読売新聞を読んでいたら、こんな文章に行き当たった。
「手をこまぬいていたら、社会を支える担い手の不足が一層深刻化し、多くの地方自治体で教育や医療、介護などの行政サービスを維持できなくなってしまう。経済も縮小する一方となるだろう」
人口減少について論じた社説の中の一文。
だからこそ、「うわ、やらかしたな」と思ったのである。
やった、ミス、見っけ!
だって、「手をこまぬく」じゃなくて「手をこまねく」だろう。
新聞社がこんな初歩的なミス、する? 校正者も気づかなかったって? ほんと、これ、マズくない?
…と思ったのだが、これほど堂々と間違われると、かえって気になる。
調べてしまった。
「こまねく」はもともと「こまぬく」であり、どちらも間違っていなかった。
いやむしろ、「こまぬく」のほうが原型だということだ。
ちなみに、「こまぬく」は左右の手を胸の前で組み合わせる、腕を組むという意味で、それが転じて「何もしないで傍観している」を意味するようになったのだそうだ。
も一つ、ちなみに「こまねく」も「こまぬく」も漢字では「拱く」と書く。
半世紀以上、生きていて、「こまぬく」を初めて知った。
「拱」という漢字もしかり。
ああ、新聞社にクレームの連絡なんかしなくてよかった。
思い込み 得意げに言い 恥をかく
鞠子