宗教学者の山折哲雄さんに聞いた「『冬眠文化』と『冷凍文化』」と題した記事が新聞に載っていた。
昨今問題になっている人里に現れて人に危害を及ぼしているクマについて、「冬眠文化が壊れてきている」とし、それは人間にも当てはまるという。
クマはさておき人間。
山折さんのおっしゃるとおり、かつては冬の間、人間の活動は縮小せざるを得なかったのだ。
冬だけではない、真夏だってそうだ。
それが、一年を通して快適な温度、一年を通して食べられる野菜や果物が当たり前になってしまった。冷凍技術の進歩のおかげで、「この時期しか食べられない」ものはほぼ皆無になっている。
もはや、冬の寒さや夏の暑さはできる限り避けたいし、冬や夏に活動が低下してしまったら、コスパが悪すぎる。世の中は回っていかない。
だが、そのせいで、クマの冬眠文化を崩してしまったのも間違いない。
とても説得力のある御説でいちいち納得した。
ただ、「冬眠文化の要素を取り戻すことがきるだろうか」との記者の問いに対する山折さんの答えが気になる。
「私自身もだめだろうな。冷蔵庫、冷暖房なしでは生活できない。しかし議論はしようじゃないか」
議論して結論が出るだろうか。
そもそも、議論している時間的余裕があるのだろうか。
議論しなければ何も始まらないことは百も承知だが、危機はそこまで迫っており、とてもじゃないけどそんな悠長なことは言っていられないのではないかという気がしてならない。
問題は 人間たちの 欲にある
鞠子