少し前、愛知県高浜市役所で、来庁者が職員を刃物で傷つけ、自分自身にも火をつけたという事件があったため、市役所で、不審者に対する訓練を行った旨、朝刊で見た。
犯人役の市職員は黒づくめでヘッドギアみたくなものをつけ、顔も金網で覆い、犯人になりきっている。そして、数人の職員が、さすまたでこの犯人を追い詰めている。そんな写真が併せて掲載されていた。
…はいいのだが、さすまたを持ち、一番アップになっている職員が、なぜか「満面の笑み」で映っているのだ。
いや、たまたま、笑ったような表情に見えるだけかもしれないけど。
ところが、
出先で別の新聞を見る機会があり、そこにもやっぱり同じ内容の記事が載っていたのだが、犯人とくだんの職員が大写しになった別角度からの写真があった。
うちの朝刊とは明らかに違う写真なのに、やっぱりこの職員も笑っているのである。
こうなるともう、確かめずにはいられない。
そこにあったそのまた別の新聞社の記事を見たが、やっぱり違う写真なのに、この職員は笑っていた。
いろいろ言ったってしょせん訓練なんだから、いわゆる「遊び半分」的な気持ちだったのだろうか。
とその前に、犯人役をどうやって決めるのだろうか。
もしかして、上司の命令? くじとかじゃんけん?
どの記者がどの角度から撮っても笑っている職員と降参寸前に見える犯人役って、なんとなく疑ってしまう。
犯人役を決める際、ひ弱そうな職員を名指ししていないか。つまりパワハラ的、あるいはいじめ的要素があったりするのではないか。
…そんなことを思ってしまうほど、さすまたで犯人役を追い詰めている職員は笑っていた。
それくらい、職員はガタイのよい屈強な体つきで、犯人役の職員は気弱なふうに見て取れた。
高浜市役所を襲った犯人には、犯人なりの言い分があるのだろうが、「手を出した」段階でどんな言い分も通らなくってしまうのに……
訓練を行ったこの市役所も、私の危惧しているようなパワハラがはびこっていないことを祈るばかり。
焼けた身の 痛みにかの人 何思う
鞠子