仕事で銀行回りをした。
最初に行った銀行、２台しかないＡＴＭのうちの１台で、女性行員さんが年配の男女客に操作の仕方を教えていた。
どこかに振込をするらしいのだが、「振込先銀行は〇〇銀行」「口座番号は〇〇〇〇」「電話番号は〇〇〇〇」と、入力すべき項目全て、「声出し確認」しながらやっていた。
嫌な予感どおり、「暗証番号」も同様。
打ち間違えるかもしれない、打ち間違えてはいけない、だから声出し確認するその気持ちは痛いほどわかる。
だがしかし、これはまずい。行内にいる行員、お客、全員に個人情報が知れ渡ってしまう。
私は隣のＡＴＭで用を済ませ、なんとも言えない気持ちで次の信用金庫に向った。
ここは、ＡＴＭが１台しかないのだが、運悪く、さっきと同じ情景に行き当たってしまった。
今度は私とそう変わらないような年齢の女性。
女子行員１人の指導の下、振込操作をしている。
さすがに声出し確認はなかったからほっとしたが、今度は行員に向って別の「個人情報」を話し出した。
この振込は、アパートの契約金みたいなもので、２年に１回振り込むもので…ウンヌンカンヌン。
たまにしかやらないから振り込みの仕方を忘れてしまう、何とかならないか…ウンヌンカンヌン。
これだって、悪意ある人が聞いたら、どんな悪事に利用されるかわかったもんじゃない。
複数あるＡＴＭコーナーというのは、こういう状態になると非常に無防備で危険。
個人情報がフルオープンになってしまう。
いや、そんな懸念以上に懸念なこと。
今日会ったお客さんの姿が、「明日は我が身」であることだ。
ＡＴＭがどんどん進化し、いつか私の能力では理解しきれず、手に負えないときがくるに違いない。
なんとも暗澹たる気分になった。
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鞠子
