母の納骨堂にお参りに行った帰り、小高い山沿いを歩いていたら、足元にささささっと何かが動くのが見えた。
しゃがんで見た。
それは全く美しい色あいのトカゲ。
ボディは見事な茶系の縦じまで、そのくせ尾に向かうにつれてコバルトブルーのような色に変化している。
我が家の玄関先で見ようものならゾッとするが、こういうところだと気楽に見れる。
思わず観察してしまった。
彼は(←彼女かもしれないが)、全く音を立てずに移動する。
だが、落ち葉の下にもぐったため、葉っぱが前後に動き、かつカサカサと音を立てるので、なんとも不思議な光景だった。
しばらくし、彼は落ち葉の下から顔を出した。
その口には、まだ黒くなりきっていない子どものダンゴムシをくわえて。
たくさんの短い足でバタつくダンゴムシ。
それをトカゲは、少しずつ少しずつ口の中に飲みこんでいく。
そして、ダンゴムシはすっかり影も形もなくなった。
一つの命が消えたわけで、ある意味凄惨な光景なんだけど、なんだかとっても「静謐な命」を見たような感覚にとらわれた。
食べるときも食べた後も、最も怖い敵の一つである人間の私が凝視しているにも関わらず、彼は対等に、いやそれ以上に私を凝視しているような気がした。
生きるために食べる。
何が悪い。
これが命の原点だ。
トカゲはそう堂々と言い放ったように見えた。
…これだから、やっぱり歩くのはやめられない。
青くなり 細くなる先 土が舞う
鞠子