通勤途上の県道で、進行方向の先に何かが死んでいるのが見えた。
近づいてみて、それが初めて「カモ」であることに気がついた。
近くに川があり、結構水鳥がいるのでそのうちの1羽なんだろうとは思ったが、道路でカモに死骸を見たのは初めてな気がする。
市が処理に来てくれるまで、そのカモは道路上に放置され、幾台もの車にひかれるに違いない。
処理に来てくれる前に、かつてカモだったとは分からないほど変形してしまっているかもしれない。最悪の場合、単なる道路のシミになってしまっていることもあり得る。
ふと、そのカモが私だったら、という思いが頭をもたげた。
何かの理由で、私は道路上で死んでいる。
車が、次々と私をひいていき、私はだんだん引きちぎられ、肉片やら汚わいと化し、そのうち道路のシミになる。
多くの人は、自分だったらそんなの耐えられないと思うのかな。
でも私は、別に構わない。
だって、死んでるんだもん。裸だって、無様な姿だって、痛みもなければ、恥ずかしさも、みっともなさも、自分自身は感じないんだから。
孤独死をすごく恐れている知人がいる。
家で死んでいて、誰にも気づかれず、腐敗していたなんて、耐えられないと。
でも、彼女の話を聞きながら、私は全然ピンとこなかった。
いいじゃん、そんなの。腐ってたって。
ただし、他人には多大な迷惑をかけるわけで、それは大変申し訳ないけど、それとて、死んでいる私は感じない。
こういう死に様、究極の迷惑。
だから今から、そんな迷惑をかける誰かに言っておく。
不快なことをさせて、本当にごめんなさい。
カモの脚 道路の上 天を向く
鞠子