職場内がザワザワしている。
今後のスタッフ体制について、危機が露呈したからだ。
私のやっている仕事をどうするのか。それが、そうそう簡単に解決しないことが、ようやく職場内の共通認識になった。
…って、こうなることは分かり切っていた。
だから、「定年まであと1年」になったころから、何度も直訴したのに、全然分かってもらえなかった。
直訴と同時に私が出した案は、私の仕事を精査し、やらなくてもそれほど困らなさそうなものを思い切ってカット。残りを他スタッフで分担するというものだったが、全員大反対。
財政的に、採用して増員できない以上、それしか手はないと思ったのに。
じゃあどうするのか。
みんな、お気楽に考え&先延ばしにするばかり。
だが、途中で状況が変わった。
今いるスタッフのうちの1人にいろいろ事情があることもあって、この人に私の仕事をさせるという案が浮上した。
どうみても、この人、「私の仕事向き」ではない。だから絶対ムリだと主張してみたが、その路線で決定。
案の定、3か月も持たなかった。私以上に、他のスタッフが「そのせいで、自分の仕事に専念できない」と次々ギブアップしだした。
「私のやっている仕事」は、ほぼ100%「私だけがやっている」。そして「私だけしかできない」。
おまけに、悪いことに、何十年も前、この仕事を主に担っていた前任者が、「明日、辞めます」ぐらい突然に退職。何もかも中途半端にやり散らかしたまま、引継ぎも何もないまま、丸投げされたのである。
無責任に辞めた前任者への怒りと、やらざるを得ない状況と、働かざるを得ない状況の私には、四の五の言っている余裕はなかった。
だから、それ以来、自分流で改良・改善し、今がある。つまりマニュアルは、「私の頭の中にしかない」。それも、基本的には「マニュアル化しにくい仕事」ばかり。
私は定年になっても仕事を辞める気はなかったし、実際、今現在は取り立てて支障はないはず。
だが先は長くなく、一時的にすぎない。
次代を担うスタッフが「もう時間がない。鞠子さんがいなくなったら、この職場は崩壊する」と言い出した。事実、私の仕事が滞ると、その日から「お金が1銭も入って来なくなる」のは間違いない。
…とはいえ、私はもう、心の底では完全無責任だぞ。
ダブルワークも確保したし。
実は崩壊しても一番困らないのは私であり、前任者みたく突然逃げることもあり得るということに、誰も思いが至っていない。
とは言えど 新システムを 描く我
鞠子