『ゲンキー』へ買い物に行ったら、お菓子コーナーでスタッフが商品を棚に並べていた。
そのスタッフを見て、ギョッとした。
どう見ても「格闘技の選手」なルックスなのである。
ゲンキーの制服が、はち切れんばかりの腕と足。首の頑丈さもオドロキなほど。
正直、恐怖が走った。
しかし、今さら引き返すのもあまりに不自然が過ぎる。となると、私はどうしてもそのスタッフを通り越さなければならない。
こわごわうつむいてカートを押した。
すれ違いざま、彼は「いらっしゃいませ」と言った。
予想とは全然違う、照れくさそうな小っちゃな声で、一気に拍子抜けした。
ら、次の瞬間、目の前にカートを押したお品のよさそうなおばあちゃんが現れ、私を通り越してその格闘技スタッフに向かい、
「おにいちゃん、そうめんがないんやけど」
と、こちらも予想とは全然違う高音の大声で話しかけたのである。
ズドンッ、ズドンッてな感じの歩き方で、格闘技スタッフはおばあちゃんの所へ向かった。
頓着ないおばあちゃんは、さらに「そうめん、ここ、いつもあらへんやないの(注:「ないじゃないの」という意味)。いっつも棚、空っぽでしょう。どうなっとるの。そうめん、切らさんといて。ちゃんと置いてよ」とかなりの怒り口調で迫った。
格闘技スタッフは、「すみません。こちらにもありますから」とおばあちゃんを別コーナーに誘導していった。
このワンシーンから、私は改めて2つのことを悟った。
その1。
人を第一印象で判断してはいけない。
そしてその2。
時として、「隆々な筋肉」より「積み重ねた年齢」の方が怖い。
もうすでに 恐れ疎まれ 嫌われて
鞠子