4月に行うビック行事の「感染対策」に頭を痛めている担当者:S君が「『体温管理アプリ』を職場内で試してみたい」と言い出した。
彼の案は、「ビック行事の前1週間と終了後3日間、検温を義務化し、このアプリに登録して管理する」。
私はプライベートで血圧管理アプリを使っているので、体温管理アプリの仕組みも想像できた。
だが問題は、参加者全員がこのアプリを使う、として、開催日1週間前に「37度5分でした」という人が出てきたらどうするのか、検温・登録をうっかり忘れてしまった人はどうするのか、開催後、3日後に「38度でした」という人が出てきた場合、どう対処するのか etc.etc.「アプリを導入して、その結果をどうするのか」について、全くノープランであること。
だがとりあえず、職場スタッフ5人で使い勝手を試してみることにした。
それぞれアプリをダウンロード。
私など「大森南朋」の名前で登録してみた。
職場の検温計で熱をはかり、データを入力。
備考のところに「やる気満々です」などと意味のわからぬことを書いて送信してみた。
他のメンバーも、それぞれ送信した。
これを、管理者であるS君が閲覧する……はずだったのだが、なぜか閲覧できない。どうやっても、大森南朋はじめ、誰の名前も出てこない。
5人で試行錯誤し、ようやくその理由がわかった。
管理側は「有料」だったのだ。
S君に『体温管理アプリ』を教えてくれた人が、これを使っていたときは無料だったのだそうだ。
需要が増し、開発者は有料に変更した。どうもそんなことらしい。
開発に労力もお金もかけているわけだからわからなくはないが、これが世間の現実なのだと改めて思う。
有料なら話は変わってくるわけで、利用しない可能性も出てきた。
名前は大森南朋でもメールアドレスは本物を登録してしまったぞ。
セキュリティ、大丈夫なんだろうか。
…ああ、なんて、余計なことに気を遣わなければならないことが増える世の中なんだろう。
知らぬ間に 私がハダカに されていく
鞠子