先週末、『やよい軒』なるところに初めて行った。
私が半分ほど食べ終えたところに、スーツ姿の男性が入ってきて、隣の席(←とはいえ、ソーシャルディスタンスモードで席が配置されており、一席空けた隣なのだが)についた。
ほどなくして、その男性の前に、お膳が運ばれてきた。
…と思ったら、即、机上のブザーで店員を呼び出し、結構な大声で曰く、
「ちゃんぽんって、こんなに汁、少なかったっけ」
こういうクレーム、興味を持たないわけにはいかないじゃないの。
だが、一席離れているし、横に店員は立っているし、私は裸眼だし、で、運ばれたちゃんぽんは全く見えない。じろじろ見るわけにもいかない。
全く関心なさげを装って、耳だけダンボにした。
「確認してきます。すみません。しばらくお待ちください」
パートに違いない中年の店員さんは、しどろもどろになって丼を持ち上げ、厨房に向かった。
そしてまだほどなくして、店員が戻ってき、男性に
「すみません。作り直しますので、5分くらい、お待ちいただけますか」と言ったのだが、それに対しこの男性、
「じゃあこれ、どうするの」
と声を荒げた。
なんと、ますます興味深い発言。もう居ても立っても居られず、メガネをかけてガン見してしまった。
ちゃんぽんが去ったお膳の上には、ごはんと唐揚げが乗っており、その唐揚げの一つは明らかに「食べかけ」だった。
つまり、5分待っている間、この白ご飯と唐揚げが冷めてしまうではないか、ちゃんぽんとご飯を一緒に食べようと思って注文したのに、ご飯だけ先に食べろと言うのか……そういうクレームだったのだと思う。
店員は、お膳ごと抱えて引き下がった。
5分後には、作り直したちゃんぽんとともに、おそらく新しい唐揚げとご飯が運ばれてくる。
しっかし、唐揚げに手をつけてしまった以上、私なら、そのクレームは口に出せないな。
なにより、『やよい軒』なるタイプの店で、「ちゃんぽんの汁が少ない」もよう言わん。
だって、既に加工されているものを、基本、「温めるだけ」でしょう。
そのちゃんぽん、言わずにいられないほどお汁が少なかったのだろうか。
だったとしたら、この男性の気持ちはわからなくもない。だが、こういう人が自分の夫だったら、耐えられないだろうな。
じゃあ黙って食べる人なら耐えられるかなあ。
…やっぱり私はシングルで正解だった。
帰り道、歩きながらそう思った。『やよい軒』も含めて、往復12,000歩の散歩道中だった。
人生は 結局帳尻 あってくる
鞠子