散歩中、とある家の四角いポストに大きな写真が貼ってあるのが遠目からもわかった。
このおうち、小さい子どもがいるようで、駐車スペースにいつも小さなスコップやショベルなど、色とりどりのかわいいおもちゃが散らばっている。
だからてっきり、「子どもの写真を貼っている」のかと思った。
ところが近づいてみたら、それは「自転車の横に立っているおじいさんの写真」だった。そして、そのおじいさんに向けてサインペンで矢印を書き「サンダルどろぼうです」大書きしてあった。
びっくりした。
このお宅、駐車スペースに柵も屋根もない。つまり誰でも入ることができる。
そういえば、おもちゃだけでなく子ども用の洗った長靴や運動靴、サンダルなんかも壁に立てかけてあった気がする。
何度も盗られたから、カメラをしかけて写真を撮ったのか。
でもその写真は、サンダルを手にしているわけではない。
大きく引き伸ばされた写真は、おじいさんの顔も風体もはっきりわかるものだった。
そしてそのおじいさん、どこの人かは知らないが、近所で確かに見たことがある気がする。
いろいろ考えながら、家に向かって歩いた。
途中、自転車に乗った男の人とすれ違った。
うわ、さっきの「写真のおじいさん」にそっくりではないか!
気味が悪いどころか、めっちゃ怖くなった。
急いで家に帰った。
あの家、サンダルを盗まれて激怒しているのだろうが、あんなふうに写真を貼るのは危険が大きすぎる。
もしそのおじいさんがサンダルどろぼうじゃなかったら、「名誉棄損」で大ごとになる。
でも、もし本当にサンダルどろぼうだったとしたら、何をされるかわかったものじゃない。
あるいは、そのおじいさんは「認知症」ということもあり得る。
とっても気味が悪い。
人のサンダルなんか盗んでどうするんだろう。
そもそも写真のおじいさん、本当にサンダル泥棒なんだろうか。
両腕に 空き缶抱えて 生きる人
鞠子