クロールで25メートル泳ぎ、平泳ぎで戻ってきたら、両隣のコースにいたスイミングトモSさんとMさんが、私のコースをはさんでなにやらとっても盛り上がっていた。
聞けば、「向こう岸のベンチに座っている男性が、超カッコいい」と言うではないか。
残念ながら私の視力では、「水着姿の男の人が座っている」ことしか確認できない。そもそも言い出したのはSさんで、「竹内涼真に似ている」と激賞。かたやMさんは、私と同等の視力らしく「全然、見えやしない」。
さて、ここからがスイマーならでは。
私たち、彼を見るべく、3人そろって向こう岸をめざし、25メートル泳いだ。到着は、当然のことながら、私が一番遅かった。見れば言い出しっぺのSさんは、恥ずかしがっちゃって顔もまともにあげられない。一方のMさんは真逆で、バレバレなほど飛び上がったり顔をプールから出したりして、ガン見している。
私はサイドにつかまって、バタ足しながら問題の彼をチラ見した。
…ってね、この3人からしたら、彼は明らかに「息子か孫か」の若さ。なのにSさんの動揺ぶりがめっちゃかわいいし、Mさんの大胆行動は、もう爆笑モノ。
久しぶりに大笑いした。コロナ禍、直接、人と相対してこんなに笑ったの、初めてだった。
そしてスイマー3人、彼に対する意見を述べ合うべく、そろって25メートル泳いで元の場所に戻ってきた。Mさんなんか、わざわざ背泳で彼を見ながら戻ってきた。
いやあ、本当にイケメンだった。整った目鼻立ち。体形的にもバランスがいいし、足の筋肉とかすごいし。
ますます盛り上がる3人。だが私、そこで、思わず余計なことを言ってしまった。
「確かにイケメンだけど、私的には、さっき、ここで泳いでいた彼の方が好み」
これ、本音。私のいるコースで、さっきまで泳いでいた彼。絶対、いいと思う。前からいいと思っていた。10人いたら、10人ともイケメンだと言うに違いないと思い込んでいた。
ところが、Sさん、Mさん、私の発言を聞いた瞬間、そろって極度のハト・マメ顔に。どちらもウンともスンとも言わず、凍結。ようやく口を開いたものの、
Sさん、言いにくそうにポツリ「ま、悪くはないけど……」
Mさん、目、まん丸にしたまま「え?あの人?Nさんのこと? 全く理解できん……」
2人のさっきまでのテンション、一気にダダ下がりだった。
これほど賛同を得られないなんて、私のイケメン基準はそんなに特殊なんだろうか。
自信喪失した。
だが、これで2人、敵が消えたなとちょっとホッとした(←もともと敵ではなかったのだが)。
…ってねえ、しつこいようだけど、相手は息子か孫か、なんだけどね。
こういう話題は、やっぱいいわねえ。
老眼も 近視もときどき 味方する
鞠子