癌が進行し、もう打つ手がない。
本人も、積極的な治療を望んでいない。
だがしかし、疎遠になっている娘に子どもが生まれると知り、心が揺れる。それまで生きていたい気もする。だが、生きていたところで、孫の顔が見れるとは限らない。
その患者に向かって、医師が言ったのが、要旨、
―― 気持ちは日々変わる。だから迷う。積極的な治療は、延命というよりむしろ、その迷う時間を長く得るためのものだと考える。だから、もう一度、治療を再開しないか。途中で嫌になったら、言ってくれればいい。そのときはまた、一緒に考える。そしてやめてもかまわない ――
…今朝のNHK連ドラ『おかえりモネ』でのワンシーンだったのだが、ドキリとした。
ものすごく説得力あった。
治療は、迷う時間を得るためのもの、そんなふうに考えたことなかった。
それに比べ、
―― 東京オリンピックは、祝祭感を抑えることが大きな課題 ――
って、耳を疑った。そもそもオリンピックって、スポーツの祭典・祝祭じゃないの?
―― 観戦後、直行直帰で 。大声の声援、ハイタッチはなしで ――
ええっ? 相応の旅費を払って観に行くのに直行直帰?
―― 安心・安全の東京オリンピックを…… ――
人流を抑える、人が集まらないのが、一番の「安心・安全」じゃないの?
…全く理解できない。
ものすごく納得した発言と全然理解できない発言。
あまりにも両極端。
胸を打つ 言葉にしばし 救われる
鞠子