[そこはかとなくナミダな4つの情景]
(1)けなげなベゴニア
葬儀場にある駐車場の排水口から頭を出し、花を咲かせていた。
付近にベゴニアは全く見つからない。
ベゴニアは確かに強い。我が家も、「見切品30円」のベゴニア4苗分が植わっているが、今も生き生きしている。
それどころか、この前の台風でごっそり持っていかれた1苗など、も一度植え直したら、前より生き生きしだした。
他の3苗より、若干小さいけれども。
(2)お前、邪魔だし
木が先だったのか、標識が先だったのかは知らない。
いずれにせよ、こうなってしまえば木はこう思っているに違いない。
「標識よ、お前、邪魔だし」
もうしばらくすれば標識は全く意味をなさなくなり、そのとき私たちニンゲンはこう思うに違いない。
「木よ、お前、邪魔だし」
「雲雀の胸毛に着いて来た種が此処で零れたのよ。困るわ」
雑草の中にある一本だけの菜の花は、小娘に向かってそう言った――のは、志賀直哉の『菜の花と小娘』。
このエノコログサはどう言うだろう。
よりにもよってこんな絶壁に。
「困るわ」とは言わないだろうな。ゆうゆうと、右往左往している愚かな人間たちを高見の見物。
雑草だからとて、決して抜かれる恐れのない安心。その一方で、ときどき寂寥。
(4)プライド
まるでドブ川だが、ここ、かなりの魚が泳いでいるのである。
一匹狼ならぬ一匹サギ(←サギだよね、この鳥。本当はよくわかっていないんだけど)。
食事に来たのではなかろうか、と思うのだが、私がスマホを向けている間中、この姿勢を決して崩そうとはしなかった。
武士は食わねど高楊枝、なのか、サギのプライドなのか。
どんな思いで何を見つめているのか、ニンゲンの私にはわからない。



