ふと言いそびれたことが、命取りになった。
我が家の近くに、2人でやっている小さなパン屋さんがある。
すごくおいしくて気に入っているのだが、休日しか買いに行けない。
それでも顔を覚えてくれて、何やかやと雑談しているうちに、面白そうな飲み会に誘われたのだ。
なんでも、その店でつくったパンをメインに、季節季節にあったワインをいただくという趣向で、定期的にやっているらしい。
このような会、断るわけがない。
…で、行った。
10人くらいが集まり、知らない人ばかりではあったが、それなりに楽しかった。
パンはもちろん、ワインもおいしかった。
だが…
メインが「パン」「ワイン」以外にもう一つあった。
「チーズ」
これがいけなかった。
ものすごく珍しいチーズが、いろいろ出てくるのである。
シャビシャビしたようなのとか、フワフワしたのとか、見たこともないもの、非常に貴重なものもあった。
こういうの、ダメなのである。
チーズは、よく言えばシンプル、悪く言えばお安いフツーのチーズしか食べられないのである。
考えてみれば、「ワインにチーズ」は定番ではないか。
なんでそのこと、最初に気づかなかったのだろう。
私の近くに座った人は、同じ会費で私の分まで食べられて、得をした。
次の会も誘ってくださったのだが、そのとき、変わったチーズが苦手だと、正直に言えばよかったのだ。
それをふと言いそびれて、別の予定があることにしてしまった。
もう今更、言えなくなってしまった。
パンは買いに行きたいのだが、また、誘ってくれるととても胸が痛い。
その店の前を通るたび、後悔の念がよぎる。
モッツアレラすらも食せぬ情けなさ
鞠子