【「窃盗」に関する2題】
新聞には、毎日、「なにそれが盗まれた」というニュースが載っているが、今日は、同じ新聞・同じ紙面に載っていた容疑者の発言引用について、一言、言いたい。
(1)盗む、と言えば定番はやはり…「お金」
逮捕されたのはT市に住む47歳の無職女性O。
かつて勤務していたホテルの従業員用更衣室で、同僚女性のかばんに入っていた財布から1万円盗んだ疑いがもたれている、とのこと。
そして記事は、
「署によると、O容疑者は『盗んでいません』と容疑を否認しているという。」と締めくくられていた。
さて、気になったのは『盗んでいません』というOさんの発言引用。
一読、「なんて丁寧な物言いをする人」と思ってしまい、容疑そのものより気を取られてしまったのだ。
これ、他の言葉に置き換えたらどうなるか。
例えば『やってない』。あるいは『濡れ衣です』。あるいは『私じゃない』とか。
O容疑者の印象が大きく変わるではないか。
よって、この記事は「署によると、O容疑者は容疑を否認しているという。」にするのが妥当ではないか、と思うのだが。
(2)こういうものも人気らしい…「ドライバー」
こちらの容疑者は、G市に住む48歳の電気工事業者H。
改装中の店舗に侵入し、「インパクトドライバー」なるものを2台盗んだ疑いが持たれている。
さて気になったH容疑者の発言引用はこれ。
「署によると、H容疑者は「1台しか盗んでいない」と容疑を一部否認しているという。」
・・・一読、不謹慎にも笑ってしまった。
H容疑者にとっては「盗んだ」ことよりも「盗んだ台数」が問題なのだ。
ちなみに1台盗んだのと2台盗んだのでは、刑の重さが違うのだろうか。
いずれにしても、この「…しか」という言葉は、読者の笑いを誘うほどインパクト大。
結局、この記事も「署によると、H容疑者は容疑を一部否認しているという。」だけにとどめた方がいいのではないか。
・・・そう言えば、(1)のO容疑者は「です・ます調」であるのに対し、(2)のH容疑者がそうじゃないのは、性別を意識しているからか? もちろんこちらも「1台しか盗んでいません」としたら、雰囲気が変わってくるが。
え? どうでもいいことじゃないかって?
だけど、読み手がどんな印象を持つかはとても大切なことであり、怖いことでもある、と私は思うのだ。
【番外編】
たまたま同じ紙面の下3段に、一般社団法人日本生涯還暦野球協会主催のマスターズの告知記事が載っていた。
そのまわりは協会の会員か、趣旨に賛同する企業かわからぬが、協賛広告で埋めつくされていた。
その中に、「老人保健施設」の広告があり、ちょっと笑えた。
さらにその横、その3倍の大きさで「霊園」の広告が載っており、大爆笑してしまった。
「永代供養受付」などと大書きされていたりして。
ま、協賛金が一番だから。背に腹は代えられぬ、が。
「ごめんね」に心はあるか見せかけか
鞠子