「生活とは何ですか。」
「わびしさを堪える事です。」
「芸術とは何ですか。」
「すみれの花です。」
「つまらない。」
「つまらないものです。」
「芸術家とは何ですか。」
「豚の鼻です。」
「それは、ひどい。」
「鼻は、すみれの匂いを知っています。」
〈太宰治『かすかな声』〉
太宰は、からだじゅうにどれほどの苦しみを抱えていたか、その痛みがあふれている。
選ばれてあることの恍惚と不安と二つ我にあり、か。
普通の人は体験しないレベルの恍惚と不安。
そこから生まれる耐えがたい苦痛。
…読むうちに、私だって苦しくなってきた。