『三心・廻向発願心について』 | 浄土宗長福寺のブログ

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埼玉県深谷市の浄土宗長福寺のブログです。おもに『今月の言葉』を毎月1日に公開します。

 今月は、三心の第三、廻向発願心(えこうほつがんしん)について見ていきたいと思います。

 

 法然上人の御法語に

廻向発願心と申すは、これ別のこころにて候わず、わが所修の行を一向に廻向して、往生をねごうこころなり。

【大胡の太郎実秀へつかはす御返事・昭法全519】

廻向発願心というは、善導釈していわく、過去および今生の身口意業に修するところの世出世の善根、および他の一切の凡聖の身口意業に修せんところの世出世の善根を随喜して、この自他所修の善根をもて、ことごとくみな真実深信の心の中に廻向してかの国に生まれんと願うなり。

【御消息・昭法全579】

 

訳:廻向発願心とは、これといって特別な心をいうのではありません。私たちがこれまで修してきたあらゆる行の功徳をただひたすら振り向けて極楽往生を願う心のことです。

 善導大師は「廻向発願心とは、自分が前世までに、そして今現在も、身や言葉や心によって重ねてきた善行や出家修行の功徳に思いを至し、さらに、凡人や聖者が身や言葉や心によって重ねてきた善行や出家修行の功徳を喜ぶことである。このように、自分が行うにしろ他の人が行うにしろ、さまざまな善行の働きすべてを、嘘偽りなく阿弥陀さまの本業を深く信ずる心のうちに運び入れて、極楽往生に生まれるのだと願う心である」とおっしゃっています。

【法然上人のご法語① 消息編 132P 浄土宗出版局】

 

 三心のうちの『廻向発願心』は、これまで自身のしてきた善行、善い行いの功徳を極楽往生のために振り向ける心のことです。

 それとともに、廻向発願心を実践するためには、人として一つでも多くの善行に励むことです。人を傷つけることはせず、人と手を取り合い、思いやり助け合うことがとても大事なことなのです。

 新型コロナウイルスの発生と蔓延のよる感染忌避、そして、昨今の国際情勢を見ますと、他人に対しての不信感と思いやりの欠如、自己保身の拡大が人々を傷つけています。仏教において、他人を傷つける善行は存在しません。

 人は一人では生きていくことはできません。多くの人と手を携え、ともに助け合ってこそ、多くの喜びを享受できます。大きなことはできなくても、小さなことから助け合いを続けていきましょう。

合掌