INTERMEZZO
どうしても行きたいとこ。
蛍をこの目で見たい。
秋に静岡である、ロベール・ドアノー展。
『サクリファイス』の舞台の島。
オーロラ。
イタリアでミケランジェロのピエタを見たい。
アフリカできりんとお月さま。
生きるって、何なんだ?
泣きたくなるくらい、思う。
生きていて残したりやりとげたり、意味とか達成とか。
なんなんだろう、それは。
私にしか感じられないものしか、価値がない。
私には。
いろんなことに満ちて、ちょっとずつ何かを埋めているけれど。
やっぱりわからなくなるんだ。
でもそっか、わからなくていいのか。
そんな単純なことじゃないから。
わからないでいいのか。
感じる瞬間があれば。
受けて受けて、そしたら輝きはじめるかもしれない。
多忙、タイ料理
忙しい。
国に提出する書類のお手伝い。すごくテキトーで、いいのかなとも思う。照らし合わせが大変。少しずつ理解しながら、まるで何度も立ち上がっては筋肉をつけてゆく子馬みたいにじっくり繰り返し考える。色々やってみないとどの方法が効率がいいのか分からない。先を読めない、駄目な頭だ。まあとにかくその頭をフル回転させたので最後のほうにはのうみそが絞ったスポンジみたいになってもうからからでお手上げだった。もくもくとチョコを齧ったりしたけれども駄目。甘くみていた。
夜は事務所の女の子たちとタイ料理。今日の幹事は私だった。屋台っぽい所だったから皆さんの気に入るか少し不安だったけれど、まぁ楽しめた。食べ物は美味しかったし。
この女の子だけのはずの集まりに今度から上の人が混じることになった。どうしても、若い女の子たちとご飯が食べたいらしい。ヤレヤレ。
それから普段あまり事務所の中にはいない女の子に「18歳くらいですか?」とか言われてしまった。まさか。もうね、こんなこと日記に記念にしるすくらいのおばちゃんなんだよ。普段はしゃぎすぎなのかな。落ち着いてるつもりだけど…。このすっぴんっぷりがいけないんだろうか。しかしとにかく、私はそのひとを年上かと思ったら3つも下なのだった。人の歳は分からないものだ。
私は昔から歳も性別も名前もよく間違えられるから、もうあんまり気にしないけれど。
お風呂に入って、試しに泣いてみようかと思った。でも全然涙がでない。前はよくちょっとした悲しげな想像で涙がでちゃったものだけれど。
面倒になったからマンガを読んだ。『ホットロード』。
こうして人と接したり本を読んだり…これが私がここにいて何かをしているという証になるのだろうか。
何かを創らずには何かと関わった気持ちになれない、たぶんそんなしょっちゅうなにごとかを生み出すわけにはいかないのにもかかわらず。
止まらない。
零れ出て、それがなにものにもならない、それをずうっと歩いたあとに気付いたら。
恐れはこの闇とか止まらない時間の流れではなくて、この、もどかしい欲と相反する怠惰。
そこにこそ、もう一人のストックみたいな私の唯一の底無しの穴がある。
- 紡木 たく
- ホットロード (1)
ワーカホリック
もう不備ばっかり!何でだ。
字が汚なすぎて読めない!何でだ。
もう呆れるやら困るやらで笑ってしまう。何年この仕事をやって何回叱られたらわかるんだろうか。まあ、取引先はうちだけじゃない。だからいい加減にされてるとしたらそれはうちが舐められてる証拠で、舐めさせる要素があるのだ。…ならばよし。もう舐めさせないからね。もういい加減にはさせない。
ということで全ての書類をくまなくチェック。その合間に証明書を発行したりコピーを頼まれたりお客さんのアポをとったりデータをおとしたり。今日は怪我人が出たのでその対応も。それから会議の議事録作成。よくわかってない業者さんに書類を余分に焼いてあげる。看板づくり。事務所の中をひらひら歩いている間も次の手順を考えている。上司はイライラして怒鳴りまくっていて可笑しい。せめて私はのんびりにこにこ、それを中和してあげないと。
上司と言えば、急いで打ったらしいFAX送信用紙を送る直前に念のために読み返して、慌てた。あわあわ。停止ボタンを押して、修正液で訂正。「ファックス願います」の“ス”がないだけでこんなインパクトのある言葉になるとは。危なく何社にもこの文面を送るところだった。嫁入り前なんだからやめてよ。
いつも残業できないけれど今日はどうしても仕事が終えられずレッスンをあきらめた。滅多にないことだしこんな日くらい頑張るぞ!と残業。いつもさっさと帰らなくてはいけないのが本当に心苦しいから。たまには。
そうしたら上司が夕飯に誘ってくれた。一緒に仕事をしてる人と3人で、本当に夕ご飯だけれど。近くのハンバーグ屋さん。
こうして話すと仕事に対する気持ちや視野が広がる。たかがバイトだけれどここではそんな気持ちではついてゆけない。男社会だからこそ女性達が本当にしっかり色んなことを知っていて気を配れなくては成り立たないのだ。だからこそ。いつも私は心苦しいのだけれど。早く帰らなければならないということはそれだけ、職場のことが把握できないということに他ならないから。
私が随分お世話になっている今では偉い女の人の話が出た。仕事に対する姿勢は男の人以上に男、だったらしい。私の上司も、たぶん事務所の一番偉い人ですら彼女には頭が上がらない。
私はその人の息がかかってることになってるから虎の衣を借りてるみたい。実際はすごく気に掛けて頂いているだけで、ちゃんと私がお役に立てたことはないのに。
でも…私が今のところに紹介してもらった理由を聞いてうれしかった。認めてもらえたんだなぁって。私は何にもできなかったのに、一生懸命でいたからこうして繋いでもらえた。
嬉しいことだな。
その人を見倣って…少し早く行ってみようかな。帰りは調整できないけど、前倒しすることならできる。
…朝は得意だけど、寝るのが好きなんだよなぁ。
うん、だから、できる時だけ。
ちょっとでも、自分のできる仕事や理解の幅を広げよう。だってもう少しわかりたいんだ。この仕事が好きみたいだから。
砂時計のふち
私も大学生だったんだ。
何だか不思議なかんじ。
何が、どうかわったの?
でもやっぱり全然違う。
私はあの頃とは全く考え方も変わったし…色んなことを知った。たくさん何かをなくした。でもそれは当然のこと。ぽろぽろ零しながら、それに抵抗して前に漕いでいっている。
ぴゅんびゅんすごいスピードですぎてゆく光や頬に打ち付ける風が、滲むみたいに体を通り過ぎてゆく。
透明になったみたいだなと思う。
光が体を通過するみたい。
このままばらばらになってしまうのはどうだろう?
雲に霞んだ月から目を離さないまま、ばらばら崩れて風に吹かれてしまったら。
そうしたら、消えても私はずっと空を見つめていられるんじゃないかな?
きっとそうだ。
遠足の日みたいに、楽しく疲れて眠った。