アマヤドリ -315ページ目

あひるの子

友人と色々なことを話した。
すごく精神的な方向が似ているのでその淀みのない話ぶりを聞いていると自分の心まで整理され方向が見えてくる。私はひとりだと淀んだり地下水になっちゃったりしてばかりだから。
場所は池袋の沖縄料理屋さん。沖縄料理やっぱりおいしい。南の食べ物が好きみたいだ。こないだのタイ料理屋ティーヌンのレッドカレーランチもすごくおいしかったからまた行きたいし。
泡盛のカクテルを飲んだ。ちょっとお酒に強くなってきたかもしれない。…カクテル一杯飲めるようになってきた程度だけど…まぁ進歩は進歩。


オーディションは合格した。
周りはバレリーナばかりで合格者で素人くさいのは私だけ。
苦労するぞぉ…へこみの連続だろうな。でもただでは起きないけど。
とにかく頑張ろう。稽古して底上げしなきゃ。


何だか肌の表面だけ寒気がする。
今一瞬だけ外から雨の後の林の匂いがした。


決意の日。
いろんな種類の。

お約束

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友達を見送ってきた。

お家に行って家族団欒に混じる。このお家にくることも前よりは少なくなるんだ…と懐かしいような気持ちすらしながらあたりを見回す。
お部屋はそのままにしてゆくみたい。
大荷物なので(トランクの重さを量ったら29キロもあった)お父さんに車で新宿まで送ってもらう。
別れ際お母さんは少し涙ぐんでいたが姪っこちゃんにバイバイしていた友達は気付かない。母の気持ちってどんなだろうな。
今度本当に、結婚式の写真を持って訪ねよう。

それから中央線ホームまで私は見送り。
ホームでバイバイしてドアが閉まった途端、持っていてあげてた手荷物を渡し忘れたことに気付く。“四谷で渡す”とジェスチャーで伝える。
見ていたらしい駅員さんに「せっかく感動的な別れだったのにね」と笑われる。恥ずかしい。
四谷で「最後まで私たちらしいよね」と大笑い。ホント、お互いぬけてるなぁ。

出発は18:40。
その前にオーディションは終わるから…飛び立つ前によい結果を報告できたらいいな。

またすぐ会えるから、淋しくなかった。


★ ★ ★

私もすんでいたこの場所から都庁方面を。

傷ツイタ人ハ幸セナ人ノ痛ミヲ知ラナイ

厳しくありたいけれどその厳しさはこの甘ったれな私の中で自然には合成されないもののようで、時々真の厳しさに出会うと打ちのめされてしまう。私はなにを見て生きてきたのだろうかと。
苦い気持ちはまたいつか繰り返される。なかなかしみ込まないのだ。

素直にまっすぐにいることは、甘さにも通じる。わかっている。代償だってたくさん払うことはあったけれど。それでもやっぱりそれは否定できない。隠さないでいることは結局は全部をひとに委ねていることにもなるんだ。

何が楽な生き方なのかはわからない。
不幸な人生も幸せな人生も、どちらも価値がある。どちらも、たぶん得られることはたくさんある。

なんだ。

何がいいたいんだろう。

かけひきと、薄いオレンジジュース

に大きな黒いあざができた。昨日までは大きな赤いあざだったのに今日になったらもう黒くなっている。明日には黄色になるだろう。踊れなくならない限りはこんなあざや傷はへいちゃらなのだけれど、さすがに昨日の結婚式のドレスの裾からこのあざがちらちらみえたりしたら嫌だなとは思った。
昨日あたりからどうも自分の感じていることがうまく掴めない。もともとなめこみたいに捕らえどころはなかったのだけれど今はなめこの茸の部分がなくて周りのぬめりしかないみたいな気がする。お箸でそうっとかき回してもすぐどこかへ溶け込んでしまうような。いや、お箸のほうがなめこのぬめり成分でできてるのかもしれない。何一つ掬い取ることができない。いつも。
フル回転して空回り気味だった原動力のモーターは突然バツン、という風に落ちてしまったみたいだ。今は耳鳴りみたいな無音が立ちこめている。歩いてもぎくしゃくするし末端はじいんと痺れたようになってできればあまり力を入れたくない。あまり爪先で地面を蹴らずにぺたぺた歩いているとどんどん人が私を追い抜いてゆく。だんだんスピードが落ちそのままストップしてしまうような錯覚にとらわれる。逆エスカレーター現象みたいき。
この、テントみたいな傘のせいかな。頭も働かない。受け取るだけでそれ自体は返信機能のない郵便ポストみたいにただからっぽだ。誰かの手紙が底にこつん、と当たる音をぽっかり口を開けて待っている。


私は、
ひさしぶりに泣くことができた。

コッペリア

木曜日は私のほかにバレエ団の子と、コンテンポラリーを長くやっている子の3人。
思いがけず人数が少なかったので珍しく緊張した。始まる前に先生とお話をしたりうろうろしたりして気持ちを紛らわす。動物みたいに。

内容は今までカンパニーがやった振りをその場でつけられて即踊るというもの。オーディションは大概そうだけれど、振り覚えの悪い私の心臓は高鳴る。やはり初めての振りは尚更体にすんなりとは入ってこない。振りさえ入ってしまえばあとは私のものなんだけどな。そこまでの過程が、私は遅い。何度も繰り返して染み込ませないと納得できないみたいだ。
人数が少ないからカンパニーの人がマンツーマンで振りをくれる。なんてありがたいことなんだ。だけど覚えられない。珍しく少しだけ焦った。自然に足が出ない。自然に方向が分からない。とても不自然な私の動き。
舞台を見ていたときには簡単そうな動きだと思ったけれどそれは計算されているからなのかな。シンプルそうでいて、すごく色んな部分を使ってる。
本当はポワントで踊るこの振りを私は裸足で踊った(バレエ団の子も裸足だった)。
少し覚えられた部分は自分なりの味付けをして、音をひっぱったり目線で遊んだりできた。殆どの部分は必死だったけれど。
踊っていると先生が振付の先生に私を推してくれている声が聞こえた。「この子は何でもできますよ。身体能力すごいですから」という風に。・・・バレエ以外は、でしょ!とつっこみたくなった。

このカンパニーはプロのバレリーナばかりで皆現役で舞台にあがっている。コンテンポラリーでもかなりバレエの基礎を要する踊りなので・・・この自由奔放に踊ってしまう私がどれだけ受け入れられるかは分からない。ただ、私は私の良さを知ってもらうだけ。今はそれに全力を尽くすしかない。

振りは3作品分あったのだが、最後の“壊されるコッペリア”が好きだと思った。

原作『砂男』をモチーフにしている。

嫉妬に狂ったスワニルダがコッペリアを壊してしまう場面。
私はコッペリアを選んだ。
じっくり頭の中に音楽が黒い靄のように流れてきて、翻弄される。自分の中の流れはどんどんあふれて世界に飛び出してゆく。でも私は人形でもいなければならない。何も見えず、分厚い殻の中にいる。そして運命が狂ったヴァイオリンみたいにかき鳴らされて、自分がその重たい渦に飲み込まれてしまう。なんだか鳥肌の立つような。

自分がこれを舞台で演じられたらいいのに。


E.T.A. ホフマン, S. フロイト, E.T.A. Hoffmann, S. Freud, 種村 季弘
砂男 無気味なもの―種村季弘コレクション