カメ、天使、虹
舞台の次の日、OffのHちゃんとザールブリュッケンの町を見る。
モダンな感じのお城からSaar川を見て、山並みを眺める。
私もHちゃんも無口で、(Hちゃんは日本を離れて長いから日本語がうまく思いつかない、と言っていた)ときどきぽつりぽつりと話すだけで、首筋に太陽を浴びながら砂利を踏む。
まえね、
とHちゃんが突然言う。
共演者が、舞台の最後の挨拶の時に、カメの人形を投げられたことがあるの。
なぜカメ?ってものすごくおかしくて、それから、「でかした!」みたいなことをした人に対して「カメの人形を贈られるべきだ」というのがジョークになっているんだよ。
へえ、
と笑いながら、
じゃあ、Hちゃんがジゼルをやるときにはぜひ、Gにカメのぬいぐるみを送ってそれを投げてもらおうと思う。
駅の近くのAmadeusというCafeに入って少しだけお茶。
日本にきたときには絶対に連絡してね、って言ったら、日本に友達いないから嬉しい、って言ってくれた。
帰りの電車で、Angelに出会った。
髪の毛がくるっくるで、瞳がグレーがかった水色。おでこがまあるくて、ほっぺが淡い紅色で。
ボッティチェリの絵から抜けてきたみたいな、ふわっふわの可愛い子。
本当に人懐っこくて、ワゴンの中の誰彼かまわず茶目っ気を振りまいている。
私のところにもきたけど全然ことばが通じる気がせず、二人でテーブルをたたいて太鼓ごっこをしてあそんだり、ペットボトルをおっこどしそうになって「あぶない!」って言って、遊んでいた。
何歳なんだろう。
女の子か男の子かもわからない。
ひたすら可愛い。
お日様の光を全部吸い込んじゃってるみたいなぴかぴかな。
近くのアフリカ系の人と話していてその親子がフランス人なんだと知る。
男の子がなにやらおんなじことをずうっとその人に繰り返して言っていたから。
君はテープレコーダーか??
と、つっこみたいくらいおんなじこと、おんなじこと。
その子が私の後ろの席に落ち着いてしばらくしたとき、窓の外にくっきりと虹が見えた。
すごく色がはっきりして、根元まで見える。しかも、二重の部分まではっきり見えて、色の逆転まで見える。
こんな虹、初めて!
絶対にあの子に見せてあげたいと思い、私は数少ない知っているフランス語であるところの
「ラルク・アン・シエル」という言葉を、お母さんに伝える。
案の定伝わらず、私は指で窓の外を指す。
お母さんはまん丸な眼をして、「ラルク・アン・シェル!」という。
伝わった。
ありがとう、ラルク。
それから3人で話した。
英語とフランス語交じりで。
天使ちゃんは男の子で、サッカーをやっているからエネルギーがありあまっていていつもすこしもじっとしていないこと。
2日前、大きな事故に遭って乗っていた車がぺしゃんこになったこと。
(多分さっきおんなじこと繰り返ししゃべっていたのはこのことだったんだ、と気づく)
いまからシンガポールの旦那さんに会いに行くこと。
そしてその人がダンサーだということ。
もう、なんていう偶然なんだろう。
私が実は仕事を探していると言うと、じゃあ私のカンパニーの人に話をしてあげる、と言ってくれた。
こんな見ず知らずの私なのに・・
日本人は正直だしまじめだし、なにもかもきちっとしているし清潔だし・・そういうひとと仕事をしたい、とのこと。
たしかに。
外国のひとって本当にいいかげんだし、あんまりお風呂にも入らないし。
たしかに。
その大きな事故にもかかわらずこんなにぴっかぴかに、つるつるに元気なその男の子と、この女の人に出会えてよかった。
なんだか、本当にすごいと思った。
この二人に逢えなかった可能性なんて、ものすごくものすごく大きいのだ。
またなんだかぽかぽかして電車の旅が続いた。
親子はフランクフルト空港で降り、私とアフリカ系の人はフランクフルト中央駅で降りた。
さよなら、よい旅を。
って、フランス語でその人に言った。
いい旅だったけど、通算75分電車が送れて結局おうちにたどり着いたのは夜中の2時過ぎ。
ザールブリュッケンから9時間の旅でした。
英語の上達!
昨日、家主さんと少しお話をしたとき、
「英語、ちょっとよくなったんじゃない?」
と言ってもらった。
きっと、ザールブリュッケンでGとお話をしたおかげだ。
通訳がいないからなんとかして伝えようと必死だったから。
なんだかとっても嬉しかった。
ちょっと耳に英語が入ってくる!と思ってからまた、英語が聞こえなくなっていたから。
多分、そんな波の繰り返しでじょうたつしていくんだろうな。
なんでも同じ。
でも、まだ中学1年生が、中学1年生2学期くらいにしか、きっと成長していない。
ああ!
映画みたいよう。
映画でも勉強しよう。と、思っています。
ジゼル
Hちゃんのおうちはとってもステキでした。
広いし、家具もすてき。
私も赤いソファーがほしいなあ。
こっちにはIKEAという北欧家具屋さんがあって(友達が船橋にもできたって言ってたけれどやっぱり輸入にかかるから、高いみたい)そこの家具を入れられるようなおうちに住みたい。
私はあんまり自分のお部屋に愛がないんだけれど、こっちに来てからは自分のお部屋をもっと可愛くしたいなあと強く思うようになりました。
Cafeとか、何気ないのにとってもステキなの。
日本のCafeも可愛いけれど、もっと何でもないよ、ってかんじでその無骨さと、あとは年輪みたいなものがステキ。
Hちゃんの舞台があるので一緒についてゆき、楽屋やレッスン場、それからカンティーン(劇場の裏にある食堂)に入ることができました。
初めてだからきょろきょろ。
カンティーンでお茶をしていたら今日の出演者がもうメイクを済ませてタバコを吸いに来たりして、顔見知りになりました。
「友達になりました」って書きたいけど、やっぱりあまりしゃべれなかった。
舞台はジゼルでした。
バレエの演目の中でジゼルはとってもポピュラーなものなのだけれど、このジゼルは改訂版。クラッシックはほとんど踊らなくて、モダンの動きとか、あとはコレオグラファーがアイリッシュなのでリバーダンスも取り入れられていました。
そしてもちろん、ちゃんとストーリーもある。
わかりやすいお話でした。
Hちゃんはとっても小さくみえる女の子なんだけど(実は私と身長が同じなんだけどなぜかちっちゃくみえる)でも舞台での動きはとてもよかった。
主役のジゼル役のひともすてきだったんだけど、私はHちゃんの動きの軌跡や粘りや重みがとても好きだと思いました。
私はGと一緒に好きなところからみることができたので一番全体が見渡せる2階のフロアの最前列で柵にかじりついて観てしまいました。笑われたけど。
5月にはHちゃんが主役のジゼルをやるそう。
ああ、みたかった。
あんなふうに踊れるようになりたい。
つよく、つよく思った。
舞台が終わると出演者はカンティーンでビールを飲み、それから飲み会みたいなものに流れる。
みんなでわいわいパスタとかサラダとかを食べ、そのあとは帰る人がいたり、それぞれ小分けになってさらに飲みに行ったり。
私はHちゃんと主役の男の人とピアニストさんとそれからその劇場で働いている俳優さんの5人で飲みに行きました。
さすが俳優。
めちゃめちゃ面白かった。
どうしてこっちの人はこんなに面白いんだろう?って思ってたけど、プロの俳優になると感心するくらい面白い。
乗せられてつい、テキーラ一気!とかやって気持ち悪くなりました。
やっぱりお酒飲めないのかも。
帰りはべろべろに酔っ払ってるのに車を飛ばして送ってくれて、楽しい一日を終えました。
ジュネーヴ、街
4月1日はジュネーヴの街を観光しました。
Hちゃんをオーディション会場に送り、そのまま私は朝の公園を散歩。
見知らぬ鳥とか、すずめに似てるのに頬紅がないちっこいやつとか、そんなのばっかりしかいない朝の公園。
途中の教会からパイプオルガンが響いてきて、ふらふらと吸い寄せられるようにそこに入りました。
教会って、どこもとても一般にひらかれている。
教会の中に入るとオルガンの音が体いっぱいにぶつかってきて、ステンドグラスが色んな色できれいで、天井には細かい絵や装飾がいっぱい施してあって、
私は見上げたままふらふらと椅子に座りました。
それで、ここでもやっぱり涙が出ました。
教会に入るといつも涙が出ちゃう。
私は無宗教だし神様がどう、とか、思ってるわけではないのです。
だからこういう自分の急な涙のわけがいつもわからない。
きっと、神様を信じてこんな美しいものを創る心があるということに感動してしまうのかもしれない。
それとも、ただ、見上げるという行為に私の涙腺は特別刺激されやすいのかもしれない。
(ディズニーシーのリトルマーメイドでも大泣きだったから)
理由はあとからいくらでもつけられるけれど、もしかしたら心のことなんか説明できないのかもしれないなあ。説明しなくてもいいし。
シンプルで、いい。
わけなんかなくたっていいか。
何で泣いてんだ、困ったな、と思いながらオルガンを聴いていました。
街には移動遊園地があったり、バンドネオンを弾いているひとがいたり、アメリみたいだなあ、と思いました。
メリーゴーランドに乗っている子供がもうすんごい笑顔で、うれしくなった。
レマン湖を歩きました。
写真でしかみたことなかったウォータージェット(よくジュネーヴの観光案内に載っているレマン湖にあるでっかい噴水)を浴びてきました。
父に自慢しないと。
父は10年前に母と行ったヨーロッパ旅行が忘れられず、私のうちに友達が遊びにくるといつもそのときのビデオを見せようとするのです。
私のうちに遊びにくるときには、覚悟して。
噴水でちょっと濡れて寒くなったので街に戻り、市場が開いていたのでアップルタルトを買ってたべたり、Cafeに入ったりしました。
4月2日にHちゃんの舞台本番がザールブリュッケンのシアターであるのでジュネーヴとさよなら。
Bernという街でもうひとりのスペイン人の女の子を拾って、ザールブリュッケンに向かいました。
Bernではデモが行われていて、センターは火花やら爆弾やらが飛び交っていて大変でした。
重装備の警官隊が駅の出入り口を封鎖していて、ばたばた走るひとびとがいて、ちょっと怖かった。
車はスイスからドイツに入り、一度またフランスを通り、ドイツへ。
やっと2個目のスタンプが私のパスポートに押されました。
今まで成田空港のスタンプと、去年行ったグアムのものしかなかったの。
ヨーロッパ、誰も私のスタンプカードにはんこを押してくれないのです。
19時頃ジュネーブを出てザールブリュッケンに着いたのは朝の5時くらいでした。
途中流れ星を見ました。
Gが途中何度か疲れたみたいで休みを取っていたのだけれど、もしかして疲れているところを見せたくないかもしれない、と思って寝ているふりをしました。
へんなわたし。
プリン選手権
今日の夢。
私はプリン作り大会に出ることになっている。前から才能があると周りからも思われていたのを、自分も知っている。
一緒に出場する友達を待つが、はっと気づくと自分の用意が全然できていない。
なんだかネルみたいなパジャマを着ている。
選手権はスーツ着用なのでスーツを羽織り、しかしそのネルシャツとスーツが合わないことに気づき、白いワイシャツをひっつかみ、友達に続いて出かける。
どうやら空港にむかっているようだ。
走って走って、最初は友達の後ろを走っていたのだけれどある場所ですり抜けに失敗して遅れをとる。
多分友達はこの道をとおったのだ、と思われるところにものすごい高さのウンテイのようなものがあって(運動場にあったウンテイは掴む部分がはしごだけれどこのウンテイは電車のつり革になっている)それをわたらなきゃいけない。筋肉番付みたいだ。
途中、本気でもう落ちるかと思った。
でも落ちたらもしかしたら死んじゃうくらいの高さなので、
「まさかまさか。落ちるとか、ありえないから」
とかひとりごちながら足まで使ってなんとか渡りきる。
走っていたら巡回中のお巡りさんに出会う。
お巡りさんに道を聞くとその中の一人が実はいい抜け道を知っているんだ、と私に囁く。
実は私もその抜け道を知っていることに、その時突然、なる。
抜け道は焼き鳥屋さんにある。
焼き鳥屋さんの、大将のすぐ横にいつも置いてある秘伝のたれのつぼを空けると実は空港までダストシュートみたいに滑ってゆけるのだ。
私は月見つくね用に割ってあった卵を掴み、ダストシュートへ。
ぎりぎり会場に間に合う。
しかし私はまだ着替えていないから、友達に卵をといておいてくれないか、と、言いたいのになぜか言い出せない。
疲れる夢だった。