大阪/不思議な迷い道
方向音痴と思い込みを不思議、と片付けて面白がっているといったほうが近いのかもしれないけれど。
でも今となればその時の時間の重さや鼓膜を押される感じ、やけに白く霞んだ景色はちょっとずれちゃったどこかだったのかもしれないとも思う。
すごく綺麗な海のはじっこが見えるんだよ、という話を前々から聞いていた。ちょっと危なげな倉庫があるところなんだけどとにかく夜景が綺麗だからと。
大阪について少しお茶をしてとても気に入っているらしい雑貨屋さんに連れていってもらった。どんな小さいものをとってもちょっと変わっていてシンプル。私もすぐに気に入った。
千駄ケ谷にもあるというから今度足を運ぼう。
それから大阪のラーメンを食べてみたいという私の希望でラーメン屋さんに行く。にんにくしぼり器にわくわくしたりのりを多めに入れてみたり。大阪のラーメンの味はこれ、っていうものはないらしい。店によって色々。
よいかんじに夜も更けてきたので大阪ドームをランドマークにして目当ての波止場へ出発。
しばらくぶりにしては道をよく覚えてるなぁと友達。順調な走り出し。勘にまかせて角を曲がるたびにすごい、合ってるよ、という感じですいすい進む。この団地の脇のここらへんにグランドがあってね…と言うと空き地がちゃんとあったり。
だけど順調に進んでいると見えたのにゴール地点だけはそうはいかなかった。あまりにも唐突に柵があった。ばたっと、流れが止まる。
しばらくこない間に通行止めになったのかな?とか、最後のちょっとを間違えたのかな?と何度もなんども引き返して他の小道を曲がってみたりした。
波止場だからたくさんの倉庫やプレス工場みたいなものがあって油断するとその敷地に入ってしまったりする。何度もハンドルをかえさなきゃ戻れない張り出しのところに出てしまったり。
変だね、もう少し頑張ってみよう。さっきのゴルフ場まで戻ってみよう。
途中に錆びたドラム缶がたくさん置いてある駐車場のプレハブからオレンジ色の顔のおじさんが見えた気がして急に恐くなる。おじさんはこちらを見たというよりはこちらに存在を見せた、という感じがすごくして急に私はその場から立ち去りたいと強く思う。
そういえば私、さっきからこの道に入ると頭が痛くて耳がおかしくなっていた。どんどん無口になるのは迷子を楽しめないからじゃない。
私のこんな妄想を口にしたらたぶん友達は恐いだろうからそこでは言わずにおいた。
結局行ける道全部を試しても辿り着かず、仕方がないから少し戻ってコンビニを見付け地図をコピーしながら今の場所を訊く。
すると私たちが考えていたのとはまるで違う場所。友達はきつねにつままれたような顔をしている。私はその大きな方向音痴ぶりを笑う。
今度は地図をみながら私がナビ。だいたいが出発点の大阪ドームの辺りから間違ってる。まったく反対方向に走っていて港なんかに向かってなかった。おかしいなぁ、としきりとくびをかしげる友達。笑う私も、でもあれはどう考えても海沿いの雰囲気だったのに、と釈然としない。
車を進めるうちに友達が納得のいかない顔をしている理由がわかってくる。
まるでデジャヴのようにその道はさっきの迷った道に似ていた。グランドやゴルフ場も上下に分かれる道も団地の配置も。
茫然としながらさっきの場所はなんだったんだろうね、と話し合う。ここらへんは入り組んでいるし港の近くってどこでも雰囲気が似ているものなんだろうと言いながらも、でもそれにしてもどうして海沿いからぽんとあんな町中のコンビニに出てしまったのかがやはり心をもやもやとさせた。私はあまり方向に鋭くないけれど正しい場所を地図で知った時感じた違和感はかなり大きかったもの。
さっきの頭痛とおじさんのことを告白した。すると友達もなんかちょっと工場の感じが変な気がしたと言う。置いてあるものもなんか古すぎるしここはいったい何の工場なんだろう?とふと思ったらしい。
もしあの場所が変な世界だったらどうしよう?恐いね。
勝手に心霊現象に見立てて盛り上がった。
やっとの思いで辿り着いた正しい場所は本当に海の端っこが打ち寄せる波止場だった。マフィアと消されるひとがよく似合うような倉庫裏。
風が強くて構えたカメラすらじっとしていない。月や、タンカーから荷を下ろすクレーンのひかりが綺麗だった。

旋回する矢印、空洞のある石
どうしてまるでなぞったように、同じできごとに巡りあうんだろう。
悔いるため?
今度はこちらがわだとか、内側に触れながら眺めることができるように?
頑固にひとところに居座っていたら死角にどんなやわらかい抜け道があるか、気付かないかもしれない。
そのことを教えてくれたいのかもしれない。気付きはじめたんだというそのことを、つっかえながらも。
でもすこしせつなくもなる。
こんなに時間が経ってしまったことが。
あたたかくていとおしいのに、なんだか泣けてくる。
どうしても背を向けあっているふたつをあわせもっているという不確かさ。
ついにはこのこころには誰も立ち入ることができない、そんなふうに思うのは厳しすぎるのかな?
そしていまさらに染みてきたこのずれを確かめることすらできないということが、ちくちくする。
いちばん小さいとげなのに、いちばん神経の奥にさわって、
すこしずつすべてを麻痺させる。
★ ★ ★
ろうそくに火を灯したままなのに何度も眠ってしまいそうになる。
炎にも雪にもふとよぎる妄想にもたねみたいなものが根付いてつたをのばし私をからめとるとき、
抵抗したりぐったりとつつまれたりしながらもきっと、
かなしみを手放すことはない。
帰宅中
11:10
今日東京に帰ります。
大阪はあちこち歩いて大阪のおいしいおやつをたくさん食べて、楽しかった。
空がとても綺麗でした。
雲がやわらかくとけていて東京の空よりも淡いかんじ。お天気のせいかな。
メッセージやコメントをくださってありがとうございました。これからゆっくりお返事書きます。
長い連休だった。
また明日からがんばれそう。
みなさんも素敵な今日を過ごしてください。
***
16:19
新幹線で岐阜羽島に到着。あと3時間。2冊持ってきた本もあと半分で読み切っちゃう。
ときどき顔を上げて空や山を見る。いろんな雲と出会ってすれちがったなと思うがすぐに、本当はひとところにいても絶えずいろんな雲が生まれて消えていっているのを見ているんだ、という当然のことにはっとする。
雲の切れ間から見える夕方の太陽は、ばらばらに割れてしまったよう。
***
17:08
もうすぐ日が沈む。
太陽は西の山々に隠れるよりもはやく雲の層に飲み込まれ、そのまま姿を見せることなく夜と交替してしまうのだろう。
だけどなんていろんな表情の空気があるんだろう。生まれた雲から空気の質を想像する。よくもこんなにばらばらなものを集めてきたものだと思うくらいの種類が夕空にちりばめられている。まるで海のなかの生きものたちのようだ。
いつも私は空のうちのほんのはし、切り取られた一部しか見ていないのかもしれないな。
どうやら私は青灰色に少し沈んだ雲に心を奪われるらしい。
***
20:30
やっともう少しでおうちにつくところまでこぎつけた。考えたら東京に19時半、ってかなり電車が混む時間じゃないの。
ようやく混んでいる山手線を突破し、今はほっとしながらも連休が、それからお正月がおわってしまったことの淋しさをぼんやり感じている。
***
22:43
帰ったらちゅんちゅんのお出迎えがさっそく襲ってきた。いたい、いたい。
また少し羽根のかんじがかわったね。と、ごしごし荒っぽく可愛がる。
荷物を整理したら残ったのは写真と、日記と、記憶だけになった。
夢/戦地、二台目
・戦争中らしい。大きな工事現場のような囲われた訓練施設が生活の拠点であるというかんじの設定。危険箇所にはカバーがかけられたりして、すっと通ることは困難になっている。
1台しかない車に友達が乗って目的地にゆくが、高台から見渡してみるとものすごく遠道を教えてしまったことに気付く。
まだ携帯がない時代なのでどうすることもできない。私もその車が必要なんだけど、と焦るが仕方がない。
・親戚のおじちゃんがうちにくることになっていたのだけれどおばさんが倒れたか何かでこれなくなる。
だけどそれなのに突然我が家に現れて、メールしたのに、と言うから見てみれば本当にメールが入っていた。
私はなぜか携帯を2台もっている。少し前に、新機能だか新契約だかのためにもう一台をただ同然であずかったことを思い出す。DoCoMoのお姉さんはすごくうまいことこの携帯を押しつけたな、と思う。
だってよく考えたら2台分の携帯料金を払わなきゃいけないんだもの。と、当たり前のことにいまさら気付く。
西進中

11:03
今から関西に行く。
3連休旅行をしたいという希望だけはあったんだけど積極的にあれこれ調べぬままいたら友達が「じゃあ遊びにおいでよ!」と言ってくれたのでありがたくのらせていただく。
やった。のんびり関西だ。
新幹線を直前に取ったのに一万円だった。前回夜中にバスでうんうん4800円で行ったのも楽しかったけど、今回は楽をすることにした。
天気が心配だったけれどどうやらきらきら晴れているみたい。星とかも見られたらいいな。
昨日の夜と今朝はちゅんがやたらと甘えん坊で可愛かったけど少し心配になった。具合が悪くなる前兆じゃないよね?って。
お正月ですっかり家族みんながいる空間になれてしまったから来週から淋しがるんじゃないか心配。
関西ではたくさん知らないものを見てきたい。
友達にいっぱい注文をつけよう。
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13:27
今日は雲があらゆる高さのところに浮かんでいる。
昨日までの寒さが空のところどころに残っていて太陽に照らされるそばから雲になっているのかな。
富士山は雪雲に覆われていてふもとしか見ることができなかった。だけどいつも山頂に気を取られて気付かなかった裾の広がりの大きさに目がゆき、驚いた。
太平洋側、左を見るといい天気。雲予備軍みたいにあたためられた空気が層になっている。
右前方の遠い景色は靄で覆われてる。雪が降っているんだろう。
書いているうちに静岡を抜け、いくつもトンネルを抜けるうちに雲が重たい灰色になってきた。そして笛みたいな風の音。
友達がメールでおみかんを食べると電車の旅の楽しさがさらにパワーアップするよと教えてくれた。でも売り子さんに訊ねたらみかんが売ってなかった。
ちゅんの頭のかたちはわにに似ている、とふと気付く。
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浜松で眠りながらだっこ降りていった男の子が、お母さんの襟のファーがかゆいらしくてなんども顔をもぞもぞさせていた。
でも全然起きずにずっと夢を見ていた。
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14:06
虹を見た。
ほんの、これもまたふもとだけ。残りは雲の中に消えていた。
ルクセンブルクの女のひとと坊やと、それからフランスの男の人と3人で見た虹のことを思い出す。
なぜか、あ、ほら、虹ですよ!って誰にも教えることができない。
***
15:47
もうすぐ新大阪。
やわらかい光がきもちいい。
米原では雪が降っていた。
あらゆる天気をくぐりぬけて、気付けば少し早い夕暮れ。
不思議な気がする。
