メモ
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ほんとはひとなつっこいんだ。
まさか、まさか、と疑うのは、ちがうな、と、ぷいって向こうに顔をむけられることを想像するから。
警戒心が強いのは、ただ、自分を疑っているから。
太陽展、カフェ、青年の園
お友達が太陽展という展示会のとりまとめをされていて、招待券をいただいたので。
以前も1度呼んでいただいたのだが膨大な作品数。じっくりと時間を掛けることはできなかったが素敵な絵をいくつかみつける。
お友達の作品は透明感がとても好き。版画なのだけれどCG、という面白い作品。
淡い、だけどどこか光のくっきりとした色がフラッシュバックのようにたちあらわれる。やさしい色の中にくっきりとした目線が印象的。
面白いと信じて創られるものは、心地いい。
のんびりと青山のほうの白い素敵なcafeにつれていってもらい、お話をきく。
そういえばデンマークのカンパニーのオーディションのとき、ダイレクターに写真をとても素敵だねと誉められました、という話をする。この方に12月のお芝居のときの写真を撮っていただいていて、それを使ったのだ。
とても喜んでくれて何だか私ももう一度嬉しくなる。
今度写真を撮ってくれる。…らしい。私でいいんだろうか…。まぁ、でも、ときにはこんなのも面白いので、いいのかも。どきどき。
ミッドタウンを通って六本木へ。
ミッドタウンは、オープンの前にそこを作った鳶さんたちと一緒に通りかかり働くおじさんごっこをしながら苦労を教えてもらっていたからなんだかあちこちを見回してしまう。
国立新美術館もそうだったけれどゆったりとするスペースをたくさんとっているなぁ…と思う。今や日本人にとって、なにもない空間自体がなによりの贅沢なのかもしれないと思った。
そういえば国立新美術館はたてものとしてもとても面白かった。
原宿の表参道ヒルズの目の前に日本看護協会という建物があるんだけど、そこでばっと目を引くガラスでできた円錐に赤い輪、というテーマがこの美術館の正面にも使われていた。
今度通りかかったら見てみてください。
夜は昔の教え子が出ているお芝居へ。
スタジオ・ライフという美少年ばかりを集めたらしき劇団。
美少年かどうかはさておき、パンフレット売場には生写真やサイン入りなんとかみたいな、ファングッズがずらり。観客も女の子ばっかり。
『ロミオとジュリエット』なんだけど、ジュリエットももちろん男の子がやるの。ジュリエットが出てきたときには、ああ!これはやっぱり面白い劇団なんだわ。と思った。だってあまりにきらきらと出てくるんだもんー!かつらをつけて声も高くして。でもやっぱり至って真面目な劇でした。キスシーンもある。すごいな。役者さん。
そっか、これは逆宝塚だ…と気付いてからは落ち着いて見ることができた。
友達はよい役をもらっていてなかなか悪くない演技だったと思う。お客さんに好かれるよい俳優さんになりそう。だけど猫背がなおってないなー。
でも…全体を通して、みんな噛みすぎ!セリフが難しいし多いからことばの羅列にしか聞こえない部分がしょっちゅう…言い回しも難しいから滑舌が少しでも悪くなると何を言っているかわからない。怒鳴りすぎ。
あと、私はこれは好きじゃないのだけれど、自分のセリフに受けて吹き出す場面がしょっちゅうあった。自分がうまく言えなかったセリフにつっこんで、それを笑いにするシーンも何回か。
少しならそれもテクニックかもしれないし、味と思えるのだけれどだんだん、真面目にやってほしいなぁ…という気持ちになってしまった。あれが彼の持ち味なのかもしれないけど…。
あぁ、でもあれが野田秀樹だったら私も笑うんだろうなぁ。良くも悪くもとことんやってくれるから、いいんだ。
私はこのひとを知らないから、この一度だけですべてを評価するわけにはいかないな。実際、うまかったし面白くはあったんだ。
お話はストレートに『ロミオとジュリエット』でした。
男の人だけでやるから何かが違うのかと思っていたけれど。
3時間は長いです。
フェリーにて(一回目)/26.Feb
思ったとおり、ドイツからデンマークまではフェリーだった。
前回は行きは長い橋で、帰りがフェリーだから今回もデンマークまではもしかしてフェリーじゃないかもしれないとも思ったのだけれど。
あとで考えたら、前回は行きがキールからだったからルートが全然違ったのだった。陸続きのルートで行ったから、長い橋を渡ったのだろう。ハンブルクを通るならすべて海を渡るに決まってる。
フェリーの中に納まるのを、ガラスに額をつけながらずっと見ていた。中近東のお兄さんも遠慮がちに見ていた。よく見ると、なかなかいい顔立ちをしている。
フェリーに入ることが嬉しくてちょっと微笑むと、お兄さんはびっくりして目を見開いた。
前とはなにもかもが違う。
何故お客さんたちが電車から出て行っちゃうのか分かっている。これがフェリーだということも分かっている。どうやって甲板に出たらいいかも分かっている。陸に着くまで大分時間があることも分かっている。
前みたいに、変にどきどきしない。
前のようには、大冒険じゃない。
真っ暗な、どこまでも先の見えない大きな闇をかかえた海じゃない。
今回は、泣いたりしなかった。
拍子抜けするくらいに。
甲板で、電車で近くに座っていた子に写真を頼まれた。
彼女はずっととても分厚い少し面白いデザインのパープルのめがねをかけているんだけれど、写真を撮るときだけはそれを取った。
そのままでもとてもチャーミングなのにな。
鼻の付け根にめがねの跡が深くくぼんでついていて、私はそれをずっと見ていた。
今回は何が、前回と違うのかな。
前よりも言葉がなんとなくできる。私もひとになにかを訊くことができ、それが多少通じるんだということがわかった。
次は、そのあったかさのなかに留まらずに次に進んでゆける。
どこにいても同じ、だけど、やっぱり違う。でも同じともいえる。
同じなのは私。違うのはそれ以外のすべて。
か、もしくは、なにもかも同じ。違うのは、私。
海は広かった。
あの時はまっくらで雪がたたきつけていた。
私は少し、寂しかったのかな。初めて外国で一人になったときだったんだもの。
今回ははじめからひとり。
さいごまで、おそらく。
だから、平気なのかもしれない。
こんな風に、普通の床に電車が収納されてる。
去年はこの電車の中でずっと、いつこの駅を出るんだろう?ってじいっとしてた。
北欧へ/26.Feb
ブレーメンからマルメに行ってみるか、ヨーテボリに行ってみるか。散々迷った。どうしてもゴットランド島にいくことは諦められなかったから、ストックホルムに入ることは決意していたんだけど。
ストックホルムまでは電車代が159ユーロもする。しかも長い長い時間がかかる。
ユーレイルパスを買っておいて本当によかった。
ハンブルクまでの電車は5分遅れていた。よく考えたら今まで、あまり電車が遅れていなかったな。
あ、違う。遅れの表示が、ドイツに入ったから読めるようになった。それだけのことだ。
ハンブルクはやっぱりひとやものの集まるところなんだな。ファーストクラスの車両もいっぱいでもう少しで座れないところだった(私のユーレイルパスは1stクラスに乗れる。というか、逆にそれより安いチケットがないの)。
座席の端っこにスーツケースを置きなさい、と、おじさんに注意された。今まで不安だったからいつも手元に握っていたのだけれど…おじさんはかなり赤い顔で私にそう言ったから、まあ、マナーなのかもしれないや、と、荷物置き場に置くことにした。
このおかげでこれ以降、スーツケースはそのスペースに置いて、らくちんだということが分かる。
長いながい、電車の旅だった。
本を読んでは外を眺めた。
トーベ・ヤンソンの短編集、それから、薦められた『春になったら苺をつみに』。
ダムと友達のことを考え、飛行機から見た景色をつないだ。
時々、仔ジカが畑に座っているのが見えた。
1頭はキャベツのようなものを食べ、1頭は曲線をえがいた背を見せながら丸く座り、周囲を見渡している。
馬、ヒツジ、牛、バッファロー、だちょう、鹿。
ヨーロッパの電車は都心を抜けるとすぐに、荒地や平原を走る。だけど、鉄道はやはりひとのための土地を走るものなんだな。たくさんの動物を見たように思うけれどよく考えるとほんのわずか、これだけの動物しか見かけていないのだもの。それもほとんどは囲われた動物。
コペンハーゲンへの列車では急に警察のひとたち(多分)にチケットを見せろ、といわれた。
はじめパスポートコントロールかと思ってパスポートを出したら、チケットと荷物を見せろ、という。どきどきした。
目の前に中近東のひとらしい男の人がいて、そのひとはリュックの中身を全部出すように命じられていた。中にはしわしわのままの着替えや、食べ物や、色んなものがぐちゃぐちゃに入っていた。警察官は緑色の薄いビニール手袋をして彼のヘアクリームのようなものを空けて検査していた。
そのひとはちゃんとチケットを持っていて、警察のひとが来る前からしきりと、このチケットで何処で降りればいいんだろうな、という感じでどきどきしている感じだった。
旅慣れていない感じはしたけれど瞳を見ても、格好を見ても、怪しいかんじではない。なのに。
私の目の前でどんどん着替えを広げられちゃって可哀想だったから、あまり見ないようにした。
結局私は女の子だったからか、旅行者とすぐにわかるユーレイルパスを見せたからか(ユーレイルパスが1stクラスに乗れるチケットだからというのもあるかもしれない)、かばんの検査はされなかった。
ただ楽しく旅をしたかっただけかもしれないのに、なんだかけちをつけられてこのお兄さんも可哀想になあ、って思った。
しかも指定席だから、恥をかいたのに私の前にずっと座ってなきゃいけないし。
puttgardenからrodbyまでは、フェリー。
フェリーといえば去年のあの号泣 。
また、北の海を渡るんだ。
どきどきした。
- 梨木 香歩
- 春になったら莓を摘みに
うちがわへ。
出番の前にはいつも緊張するんだ、と言っているから、本番直前にいつもメールをする。彼女のいちファンとして。そして、好きなことを追い求めてる、同士のような気持ちで。
ずっと、踊ることが好きだって、なかなかひとに言えなくなっている自分に気がついた。
好きだからずっと踊り続けているのに。なにを遠慮することがあるんだろう。
へんなわたしだ。
友達に、プライドってなにかな、って訊かれて、もしかして私、へんな外側のことばかり考えていたのかなと気付いた。
プライドってなにかあんまりはっきりとはわからないけれど、間違ったプライドのことはわかる。それは外側の殻にすぎない。
私が大切にしたいことはこの芯、とか、延々に深く広がる内側のことなのに。
外側ばかりこてこてとコーティングしちゃったら膨らまない。皮膚呼吸もできない。
外は、まだいい。
そんなこと。
またひとつ、呪縛をみつけた。
舞台のおかげ。
友達のことばのおかげ。
歌う彼女のかがやきのおかげ。
帰りにずっと気になっていた、冷たい石の上で練るアイスを食べた。
せっかくだから歌ってもらおう!とリクエスト。
もうラストだから疲れてるはずなのに店員さんはほっぺをぴかぴかさせながら楽しげに歌ってくれた。
たくさんレパートリーがあるの、知らなかったな。



