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脳出血を発症したSさん(50代男性)は、右片麻痺(かたまひ)の後遺症がある患者さんです。
先日訪問した時に、奥様が嬉しそうに話してくれました。
「いつの間にか、足を組めるようになっていたんですよ!」
足を組むなど、一見何気ない動作に思えます。
しかし片麻痺の患者さんが足を組む行為は、かなりたいへんなことです。
例えば、右足を上にして組むところを想像してください。
この体勢になるためには、右足を下になる左足よりも高く持ち上げなければなりません。
持ち上げるだけでなく、左足の方へ横に移動させて、左足の上に下ろす動作も必要です。
細かく見ると、持ち上げる・水平移動・下ろすと、3つくらいの運動工程が入っていますね。
Sさんがリハビリを始めた当初は、座った状態で麻痺側の右足をうまく持ち上げられなかったのです。
足を組む以前に、単に右足が挙がらなかったのです。
それが今では、麻痺側の右足を足の力だけで持ち上げて、左足の上に置くことができるようになったのです。
一気にできることが増えた感じですね。
もちろん、時間はかかりました。
私がSさんの体を最初に拝見した時、「しっかり力が入る」という印象を受けました。
ただ、動かし方を忘れてしまっている感じだったのです。
私が補助をして「○○の方向に動かしてください」と指示して導くと、その方向へ動かすことができました。
ところが同じ動作を一人でさせてみると、できないのです。
その動作をするために、体のどこに力を入れるべきなのか、忘れてしまった感じでした。
これはある意味、当たり前かもしれません。
日常生活で、「○○の筋肉を使って、こうやって動く」などと考えながら動く人はいませんからね。
急に体が麻痺したため、改めて動くときに戸惑うのも仕方ありません。
Sさんに行ったリハビリは、ごく単純なことです。
足の基本的な動きである、太腿を高く上げる、膝を伸ばすなどの動作を、繰り返しただけでした。
同時に、力を入れるべき場所を意識してもらいました。
こうすることで、体のどこに力を入れるべきかを思い出してきたようです。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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