総務省の国内人口移動状況が発表され、転出超過ランキングで、広島県が3年連続でワースト1位、しかも前年より拡大している。この件に関して、論じる観点をまず指摘したい。①この問題は、人口地理学の基本的論題で、特に、地元事情に詳しい「地元大学の地理学者」が分析すべきと考えられます。地元大学の役割は、地元貢献です。②人数で順位が示されていますが、「人口比」で論じるべきで、人口比で考えれば、「より深刻」さがうかがえます。特に、「転出は若者が多い」、「若者の人口比」で考えますと、「さらに深刻」です。③以前からよく指摘しているのが、「新幹線によるストロー現象」で、実は上位の県は、すべて新幹線が通っている「県」です。「新幹線が開通すると・・・」というわけで、まもなく「福井県」に新幹線が開通します。「福井県がどうなるか」が注目されます。交通地理学の知見が重要です。広島は、東京からのアクセスで、航空と新幹線の競合が激しく、新幹線側は「東京~広島」間の列車を「需要以上」に設定しています。したがって、東京~広島の移動でなくても、その途中の移動でも「ねらい目」列車です。もとをただせば、「空港移転」によるもので、今となっては、「空港を移転してよかった?」ということも考えられます。④広島の土地問題も「根底」にあります。すなわち、三角州上とよく指摘されるのですが、実は「三角州は僅か」で、圧倒的に「人工的な埋立地」上なのです。「地形図読図で三角州の典型例」とされますが、「誤解?」を生みます。人口増加によって、「三角州や埋立地」の「低湿地」は一杯となり、周辺の山地斜面が住宅地に開発され、「斜面崩壊」もありました。広島駅を出てすぐに、「斜面に開発された住宅地」を見ることができます。よく「仙台と比べられる」と言いますが、「低湿地のために通常の地下鉄建設は費用的に難しく」、これが「路面電車を存続」させている要因です。ちなみに、札幌の「地下鉄」は「ゴムタイヤの地下鉄」ですので、「通常の地下鉄の最北端」は仙台です。⑤広島は「軍都」として発展した歴史があります。その影響については、詳細は述べませんが、歴史的背景が今日にも影響しています。⑥広島は「支店経済」で発展しました。中国・四国の「中心」であったわけですが、中国・四国地方の他の県が直接的に東京と結ばれることによって、「支店」の重要性が低下しています。特に、「オンライン化」によって、加速しています。⑦若者、特に、「大卒時」に県外移動が多いわけです。「地元大学を出て、地元就職が有利」であれば、県外に行かないわけです。「○○大を出て、広島県に就職すれば・・・」ということが、「今では通用しない?」 他にもあるのですが、このような分析が必要でしょう。人口・交通・地形・歴史・経済・大学など、幅広い知見が必要です。したがって、これらの詳細と検討、対策がなければ、今後も継続するでしょう。高等学校の進路指導では、「広島の大学に行ったら・・・」ということも考えて、指導しなければいけません。