#雲1つない
ここ最近色んなスタートアップの創業者だったりボードメンバーと話す機会がありまして組織が「最初の10人」でぶち当たるトラブルだったり「最初の25人」でぶちあたる壁について相談されました
私の経験から「こんな風にすれば〜?」的なアドバイスをするのですが相手はポカーン状態。「え?そんな事ですか?」的な顔でして
たぶん聞いた事もないような「魔法の一手」を期待していたと思うんですけど、魔法は無いんだよね。
マジな話、超地味で誰でも考えつくけど殆どの人がやらない事が解決への糸口だったりします。大体の場合本当に大切な事はメンドくさいですよ
例えばIPOを目指しているA社の場合
トップのあなたは連日会議でフル稼働、来期の予算も作らなきゃいけないし監査法人やら証券会社やら外部関係者向けの上場ストーリーも練らなきゃいけない。今日の予定を確認するとランチミーティングの後は外出、帰ってきたらハイレイヤーの面接が入ってる。
面接が終わり次第、管理部と各種規定・運用の打ち合わせ。管理部との打ち合わせが終わったらCFOと上場対策の打ち合わせ。その後は営業部長と進捗会議。進捗があまり良くないので事前に資料を漏れなくチェックしないと
全ての会議を終わったのが午後21時。やっと自分の仕事に取りかかれると思った矢先、コアメンバーからどうしても今日話がしたいとチャットが届く
あなたの頭の中
「どうしても今日じゃなきゃ駄目?来週じゃ駄目なの?」
「何があった?チャットで報告してくれれば良いんだけどなあ」
「今日やる事てんこ盛りだし彼の話は長いんだよなあ。来週で良いか確認してみよう」
あなたの返信
「今日はちと時間が無いから来週ランチしながら話さない?」
はい、その瞬間コアメンバーの退職がほぼ確定しました
働いている動機が「成し遂げたい世界観がある」「会社のビジョンを成し遂げたい」みたいな使命ドリブンだったらまだ大丈夫だと思いますが、動機が「創業者LOVE」の場合ほぼ詰んだと思います。
彼は3ヶ月以内になんとも言えない表情で管理部に退職届けを出すでしょう。あなたは管理部からの報告でそれを知り、直接話しますが既に手遅れ。彼はあなたに感謝を伝えつつも心の中では怒りを感じているかもしれません。
「創業者LOVE」のボードメンバーって、だいたい創業者と死地をくぐり抜けてるんですよね。しかも死地で創業者のピンチを救っている場合が多い。
だから創業者への想いも人一倍強い。一方で、会社が成長すればするほど求められる人物像も変わるし、必要なスキルも変わります。そりゃそうだ、スタートアップがIPO目指すって小学生が三井物産の中途面接受けるみたいなもんですからね。
元気の良い個人商店からパブリックな会社になろうとしている訳で当たり前に求められる人材が変わります。その変化に対応できる人材だけが会社の軸に居続けて変化に鈍感だったり自分のやり方を変えられないメンバーは少しづつ会社の軸から遠ざかっていくでしょう。
変化に対応しきれず会社の軸から遠ざかる事(創業者と過ごす時間が減る)で「創業者LOVE」だったメンバー達は在職し続ける事の意味を見出せなくなっていきます
例えるとコアメンバーってライオンみたいな感じなんですよ。自分で狩りも出来るし自分1人でやっていくスキルもある。野生のライオンがどんなに腹減っても泣き言を言わないのと同じでボードメンバーも相当な事がない限り泣き言をいいません。
だからこそ「ちと、話がしたいっす」って言う時はかなりヤバい時です。相当思い詰めないと「話したい」とか言わないんで
そんな事も知らずにあなたは「来週にしよう」と提案してしまいました。SOSをスルーしてしまった訳です。彼は「粗末な扱いをうけた」と感じるかもしれないし「寂しさ」を感じているかもしれません。
あなたから面談を断られたボードメンバーは帰りの電車で退職する事を真剣に考え結果的に3ヶ月後に退職
これは例え話ですが、これに近い事がそこら中の成長しているスタートアップで起きていると思います
彼を辞めさせない為にどうすれば良かったか?
それは「面談を打診された日」にお互いが腹の底から納得するまで話し合う事です。魔法は無いんだから。
メンバーに不安を感じさせないよう日頃から密なコミュニケーションを心掛ける事は言うまでもありません。でも、日々の業務に押しつぶされてメンバーとのコミュニケーションを面倒に感じていませんでしたか?やる事多いし今日は面倒だなあって思いませんでしたか?
本当に大切な事は大体メンドくさいです。「人の問題」を避けるには日頃からメンドくさい事を率先してやりましょう
解決の糸口は以外と地味なものです