(ゲーム、そうだ、ゲームをしていたんだ。だけど、ここはどこなんだ? ゲームの世界ではないだろう)
(ここは、ゲームの世界でもある。そして、きみがずっと暮らしていた現実の世界でもあるし、きみが旅した淫乱の群れの世界でもある……)
様々な光景がフラッシュバックする。幼い日の楽しい思い出。ささやかな幸せを失って、泣き暮れる祖母と暮らした日々。学生時代の慎ましやかだが、再び幸せを取り戻したという充実感にあふれた同棲の日々。それに、山岳部での記憶が二重露出のようにだぶる……。
妻の心が離れ、荒んでいった日々。そして、シンとの出会い。ゲーム業界での報われぬ日々。シンの失踪。真弓、シンの娘、庭の大きなハルニレ。シンと酒を酌み交わし、新しいゲームの構想を告げられたあの日。ヘッドマウントディスプレイを被り、旅へと出発したあの時。三輪さんとの出会い。そして、登季子との出会い。登季子との旅。イタオマチプ。日高の山中での様々な出来事。……淫乱の群れの長。儀式。黒い地面にこぼれた白い液体の跡。そして、赤く染まった登季子の裸体。月明かりに蒼く浮かぶ日高の山々……。
(きみは、ラボで失踪した僕を追って、ここまでたどり着いた)
(そう、だが、ここはどこだ?)
ぼくの内なるシンは笑った。
(そう結論を急ぐなよ。ここはまだ途中に過ぎないんだから)
(途中?)
(そうだ。きみは、君自身のストーリーを生きることもできた。だけど、きみは僕の後をかなり正確に辿ってここまでやってきた。きみが体験した淫乱の群れは、じつは、ぼくが20年近く前に体験していたことなんだ)
(おまえが体験したこと?)
(そう。もちろん、三輪や登季子といったキャラクターは、きみのイマジネーションが生んだ人物たちだから、僕が会ったキャラクターとは違うし、その他の細部も異なるところはたくさんある。でも、話しのプロットは一緒なんだ)
(…………)
シンは話しを続ける。
(僕は、ずっと、あのときのことを忘れていた。オートバイで、北海道を旅しているときに、そんな体験をしていたことをね。そして、それが、大きな心の空白となっていたこともね。僕は、きみが体験したあのゲームを作り始めて、はじめて自分の心に大きな空白があることに気づいた。そして、自分を被験者として、ゲームを開発していくうちに、その空白に埋められるべきものが次第にはっきりしてきたんだ。それが、淫乱の群れだったんだ。僕もね、きみと同じように、淫乱の群れと出会い、そして、きみと同じように、彼らのことが理解できずに、そこから逃避したんだ)
(逃避?)
(そう。ほんとうは、僕自身彼らと一体であったんだ。だから、あのとき、彼らと行くべきだった。だが、僕はこちら側に残り、彼らのことを忘れてしまっていたんだ。ゲームを完成させていく過程で、僕はそのことを思い出した。そして、自分の力で彼らの元へ行こうと決心したんだ)
(じゃ、ラボから消えたのは……)
(そう、僕は、本来あるべきところへ旅立ったんだ。きみも、僕と同じように、心に空白を持っている。それを埋めるためには、進まなくてはならないんだ)
(進むって、どこへだ?)
シンは、再び笑った。
(それは、もうわかっているはずだ)
ずっと身近に感じられたシンの気配がどこかへ消え、代わりに嫌な刺激臭が漂ってきた。
(ここは、ゲームの世界でもある。そして、きみがずっと暮らしていた現実の世界でもあるし、きみが旅した淫乱の群れの世界でもある……)
様々な光景がフラッシュバックする。幼い日の楽しい思い出。ささやかな幸せを失って、泣き暮れる祖母と暮らした日々。学生時代の慎ましやかだが、再び幸せを取り戻したという充実感にあふれた同棲の日々。それに、山岳部での記憶が二重露出のようにだぶる……。
妻の心が離れ、荒んでいった日々。そして、シンとの出会い。ゲーム業界での報われぬ日々。シンの失踪。真弓、シンの娘、庭の大きなハルニレ。シンと酒を酌み交わし、新しいゲームの構想を告げられたあの日。ヘッドマウントディスプレイを被り、旅へと出発したあの時。三輪さんとの出会い。そして、登季子との出会い。登季子との旅。イタオマチプ。日高の山中での様々な出来事。……淫乱の群れの長。儀式。黒い地面にこぼれた白い液体の跡。そして、赤く染まった登季子の裸体。月明かりに蒼く浮かぶ日高の山々……。
(きみは、ラボで失踪した僕を追って、ここまでたどり着いた)
(そう、だが、ここはどこだ?)
ぼくの内なるシンは笑った。
(そう結論を急ぐなよ。ここはまだ途中に過ぎないんだから)
(途中?)
(そうだ。きみは、君自身のストーリーを生きることもできた。だけど、きみは僕の後をかなり正確に辿ってここまでやってきた。きみが体験した淫乱の群れは、じつは、ぼくが20年近く前に体験していたことなんだ)
(おまえが体験したこと?)
(そう。もちろん、三輪や登季子といったキャラクターは、きみのイマジネーションが生んだ人物たちだから、僕が会ったキャラクターとは違うし、その他の細部も異なるところはたくさんある。でも、話しのプロットは一緒なんだ)
(…………)
シンは話しを続ける。
(僕は、ずっと、あのときのことを忘れていた。オートバイで、北海道を旅しているときに、そんな体験をしていたことをね。そして、それが、大きな心の空白となっていたこともね。僕は、きみが体験したあのゲームを作り始めて、はじめて自分の心に大きな空白があることに気づいた。そして、自分を被験者として、ゲームを開発していくうちに、その空白に埋められるべきものが次第にはっきりしてきたんだ。それが、淫乱の群れだったんだ。僕もね、きみと同じように、淫乱の群れと出会い、そして、きみと同じように、彼らのことが理解できずに、そこから逃避したんだ)
(逃避?)
(そう。ほんとうは、僕自身彼らと一体であったんだ。だから、あのとき、彼らと行くべきだった。だが、僕はこちら側に残り、彼らのことを忘れてしまっていたんだ。ゲームを完成させていく過程で、僕はそのことを思い出した。そして、自分の力で彼らの元へ行こうと決心したんだ)
(じゃ、ラボから消えたのは……)
(そう、僕は、本来あるべきところへ旅立ったんだ。きみも、僕と同じように、心に空白を持っている。それを埋めるためには、進まなくてはならないんだ)
(進むって、どこへだ?)
シンは、再び笑った。
(それは、もうわかっているはずだ)
ずっと身近に感じられたシンの気配がどこかへ消え、代わりに嫌な刺激臭が漂ってきた。