29
雲に乗っているような感覚だった。
白い靄の立ちこめる空間で、ぼくは横になっていた。温水に浸かっているような心地よいけだるさに全身が包まれている。
「もう少しだったね……」
どこからか、声が聞こえた。
上体を持ち上げ、あたりを見回す。
だが、どこにも人影はない。
「きみも、サヘを飲むべきだったんだ」
また、声が響く。
「誰だ? どこにいる?」
「ぼくだよ、きみが探していた、シンだよ」
「シン……?」
「忘れたのかい。きみは、僕を探して、淫乱の群れの世界へ入ってきたんじゃないか」
声の主は、どこにも見当たらない。
空間全体が響いて、その声を作り出しているようだった。何か大きなものの意識の中にぼくがいて、その意識が語りかけている、そんな感じだった。
だが、シンとは、いったい誰だ……。
「声を忘れたのかい」
その声は、どこか懐かしい響きを秘めていた。
(天からぼくを迎えに来た使い? カムイエクウチカウシの頂上で、力尽きたのだから、ここは天国の入り口に違いない)
「僕は天使じゃない。ここが、天国の入り口と似たようなところなのは確かだけどね」
声が言った。
「ぼくの意識が読めるのか?」
思わず叫ぶ。
すると、何者かが笑う気配がした。
「きみの意識は、今、僕の意識と融合している。いや、僕の意識というよりも、もっと大きな意識だ。きみも僕も、一つの大きな意識の一部なんだよ。だから、なんでもわかる」
(………)
(まだ理解するのは難しいかもしれないね。だけど、それも、じき何でもなくなるよ。いいかい、思い出してごらん、きみは、僕の作り出したゲームをプレイしていたんだよ)
今度は、その声は、外側からではなく、ぼくの内側で聞こえた。
(ゲームをプレイ……)
何かが意識の底で弾けた。
(そう、思い出したね)
内なる声が言った。ぼくは、すべてを思い出した。
雲に乗っているような感覚だった。
白い靄の立ちこめる空間で、ぼくは横になっていた。温水に浸かっているような心地よいけだるさに全身が包まれている。
「もう少しだったね……」
どこからか、声が聞こえた。
上体を持ち上げ、あたりを見回す。
だが、どこにも人影はない。
「きみも、サヘを飲むべきだったんだ」
また、声が響く。
「誰だ? どこにいる?」
「ぼくだよ、きみが探していた、シンだよ」
「シン……?」
「忘れたのかい。きみは、僕を探して、淫乱の群れの世界へ入ってきたんじゃないか」
声の主は、どこにも見当たらない。
空間全体が響いて、その声を作り出しているようだった。何か大きなものの意識の中にぼくがいて、その意識が語りかけている、そんな感じだった。
だが、シンとは、いったい誰だ……。
「声を忘れたのかい」
その声は、どこか懐かしい響きを秘めていた。
(天からぼくを迎えに来た使い? カムイエクウチカウシの頂上で、力尽きたのだから、ここは天国の入り口に違いない)
「僕は天使じゃない。ここが、天国の入り口と似たようなところなのは確かだけどね」
声が言った。
「ぼくの意識が読めるのか?」
思わず叫ぶ。
すると、何者かが笑う気配がした。
「きみの意識は、今、僕の意識と融合している。いや、僕の意識というよりも、もっと大きな意識だ。きみも僕も、一つの大きな意識の一部なんだよ。だから、なんでもわかる」
(………)
(まだ理解するのは難しいかもしれないね。だけど、それも、じき何でもなくなるよ。いいかい、思い出してごらん、きみは、僕の作り出したゲームをプレイしていたんだよ)
今度は、その声は、外側からではなく、ぼくの内側で聞こえた。
(ゲームをプレイ……)
何かが意識の底で弾けた。
(そう、思い出したね)
内なる声が言った。ぼくは、すべてを思い出した。