
先日、新幹線で仙台駅に下車した時にALFA-Xが停車していました。
この列車はJR東日本が2019年に製造したE956形(愛称:ALFA-X)新幹線であり、北海道新幹線の札幌開業を見据え、営業最高速度360km/hを行うため試験データを収集するのが目的となります。
高速度試験は終了しており、現在は耐久試験に移行していると言われています。

10号車側(AIにて人物・障害物削除済)
編成は10両、1〜6号車は川崎重工業、7〜10号車は日立製作所で製造され、先頭車の鼻の部分は1号車は約16m、10号車は約22mと試験車両らしく異型の新幹線となっています。
ところで、現在日本で最も速いE5系新幹線は時速320km/hで営業運転を行っていますが、それ以上にスピードが出せないのでしょうか?
実は過去には400km/h以上を記録したことがあります。

リニア・鉄道館に展示されている955形
現在の鉄路における日本最速記録はJR東海の試験車両955形(300X)が1996年に記録した443km/hで、JR東日本においても1993年に952・953形(STAR21)が425km/hを記録しています。
つまり技術的には超高速で走行することは十分に可能なのですが、320km/hの壁を超えられない大きな障害となるのが騒音です。
列車が高速でトンネルに進入すると、トンネル内の空気が反対側の出口に急速に押し出され、出口付近で『ドーン』という大きな音が発生してしまいます。

いわゆる『トンネル微気圧波』と呼ばれる現象で、500系以降の新幹線の鼻が極端に流線型なのはこの現象を抑制するために編み出されたデザインということになります。
最近は鼻を長くことするだけではなく、様々なラインを入れるなど客室スペースもきちんと確保できるように開発されています。

新幹線には天井にパンタグラフがあります。
架線から電気を取り入れる装置であるため、絶対に無くすことが出来ないのですが、皮肉なことにこれが最も出っ張っているため、騒音の原因となります。
そのため、本体は凹凸が少なく、風を後ろに流せるような形状に工夫された低騒音碍子が採用されています。
なお、台形の大きな部品は遮音板なのですが、このALFA-Xを始め、E5・E6・E8系と300km/h以上で走行する形式では取り付けられています。
一方、E7系は最高速度275km/hなので、試験的に装着したことがあるものの採用されておらず、駅からでもパンタグラフがよく見えます。

また、2005年に製造されたE954形(FASTECH360S)にてピアノ型の摺板を採用した新型パンタグラフの試験を行い、現在は10両編成あたり1個のパンタグラフのみで走行できるように改良されています。
言葉で書くとさらっと流してしまいそうですが、パンタグラフ1個で10両分の電気を取り入れて制御できるというのもかなり技術進歩です。
ちなみにJR東日本とJR東海のパンタグラフの騒音軽減に対するアプローチがやや異なります。
JR東日本のパンタグラフは遮音板がありますが、碍子を含めた本体のみでシンプルかつ軽量な見た目をしています。


一方、西日本側の車両はパンタグラフカバーが装着されています。
パンタグラフが最大限隠れるようになっていて、風に晒されないので耐久性は高そうです。

JR東日本ではFASTECH360Sの名前の通り、E5系にて360km/h運転を行う予定で試験走行を行っていましたが、試験の結果、車内の静粛性や乗り心地、揺れなどを勘案した結果、320km/hに抑えたという歴史があり、ALFA-Xはその再チャレンジということになります。
見た目はシルバーのボディに淡い緑という近未来感もありつつも白地に濃いめのラインが入る営業用車両に比べて、一般車両には見えないカラーリングになっています。
現在のところ、この試験データをフィードバックしたE10系が製造されることになっていますが、そちらは320km/h運転を想定しており、札幌開業の際にはE10系をベースにした別形式が登場すると言われていることから更に高速で走行する車両が登場するかもしれません。

繰り返し走行することでどこが劣化するのかなどをチェックしているせいか最新型車両とは言え、車体各部に錆が出ていました。
なお、車内は報道公開の際に一部のみ映っていたのですが、E5系と大差は無いようです。
FASTECH360Sは車内のレイアウトを色々と試していたため、新しい形状の座席も多数載せていたのですが、そういう情報はありません。
高速度試験の際は夜中に仙台駅を出発し、朝方に戻ってくるというダイヤで走行していたことから頑張れば出会える試験車両だったのですが、最近は昼夜関係なく試験を行っているようで、仙台だけではなく、ホーム容量が大宮でもよく見かけられてようなので、遭遇した際は是非写真を撮ってみてください。