経常黒字で為替が円高になる機序 | 秋山のブログ

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これは為替に限らず、株式や仮想通貨にまで通用する重要な議論なので、正しく理解する必要があるだろう。

 

まず債券市場を考えてみよう。債券市場は、ほぼ純粋な交換がおこなわれる市場なので、需要と供給の均衡によって価格が決まるだろう。そしてそのベースには、その債権の価値がどのくらいであるかという参加者の考えが大きな要素になる。さらに、今後その債券の価値がどうなるかという要素も加味される。債券自体の価値を考えて購入する人もあれば、債券が値上がりした時に売って利益を得ることを目的に買う人もいる。後者が多くなれば(実際には圧倒的に後者が多い)、先取りの要素が大きくなり、主観的要素が大きくなるだろう。債券市場において価格が不安定であるのも、後者の存在による。

 

現代において貨幣を大量に所持していて、運営先を探している人や、組織などが多く存在している。本来貨幣ストックの増加は誰かが借り入れをおこなった結果であるから、資産を持っているだけで実質的に増加していくのは不健全なことであるが、ストックによって実体経済がまわっていくという構造上、ある程度のストックは存在していなくてはならず、経済が成長して規模が大きくなっていく分、ストックが増大することは必要なことだろう。もちろん個々の経済主体にとって運用先を探すことは当然のことである。運用先として、何らかの事業に投資することを選ぶのは好ましいが、リスクもあり、全ての資金を提供するだけの事業があるわけではない(さらに、このような事業に対する投資は、信用創造を起こし、全体としてストックを増やす)。ということで最終的な運用先は、結局債券などの市場になる。

 

債権は高く買ってくれる人がいるから上がるわけで、高く買った人はより高く買う人が出ることを期待して買うものだ(皆がどう思うかが重要なので、ケインズは美人コンテストの予想に喩えた)。儲けるためには、上がり切る前にいち早く買い、下がり切る前にいち早く売ることが重要になる。ちなみに、予想に反して下がった場合でも、信用取引における保証金の不足や、機会費用の関係から、損になっても取り引きをしなくてはいけない場合もある。また、他の債券、他の市場が売られることによって、相対的に買われて上がることもある。

 

既に述べたように、主観的判断によって価格は変動するものであるから、様々な情報によって価格は変動する。そして価格の変動自体が変動を促す情報にもなる。そしてその結果は、実証研究が示すように、予想不能且つ、正規分布などでは決してない大きな変動がもたらされる。

 

さて、ここで為替市場であるが、同じモノは大凡同じ価格になるという考えは参考になるだろう。その考えに則った理論が、購買力平価である。しかし、モノによって価格はまちまちであるし、為替市場に投機目的で参入されている額から考えれば、これもまた主体は後者になる。購買力平価と相関はあっても、不十分にしか一致しない理由はこれで分かるだろう。

現代では投機が主体であるから経常黒字は関係ないという意見になることは理解できるが、それは経常黒字が投機家の行動を変えうる情報であることを見落としている。経常黒字は為替が円高になると多くの人に信じられている(本当のところは多くが信じていると信じられているかもしれない)ことだから早い者勝ちで円が買われるのである。すなわち、為替市場は情報と不完全な人の主観によって価格が形成される。為替におそらく最も大きな影響を与える金利も、結局のところ大きな影響を与える情報に過ぎない。