FDAの朝一の青森便で空をひとっ飛びし、秋田県小坂町の明治の芝居小屋、康楽館に来ています。
大衆演劇の魅力に私を導いてくれた役者さん「松井誠」率いる下町かぶき組座長花形祭りの開催の真っ只中。
福田こうへいさんの「南部蝉しぐれ」の曲で踊る松井師匠の男舞踊に胸を打たれ、涙が出てきました。
あれをご覧よ 真っ赤な夕陽
落ちてゆくのに まだ燃えている
とがって生きろ 丸くはなるな
胸に聞こえる蝉しぐれ
私と同じ57歳の松井師匠が、どんなお気持ちでこの舞踊を舞っておられるのだろうと想像しながら、その姿にじっと魅入っていました。
同い年だけに、自分の年齢に松井師匠の人生を重ね合わせることがあります。
初見の舞台は平成22年8月ですから、観ることの叶わなかった数々の舞台の話を近しい方からお聞きする度に悔しさが込み上げ、今は、追っかけ人生まっしぐら!です。
この年齢になってみなければわからないことはあるものだと実感する日々ですが、どろどろと渦巻くマグマのような熱情や、時に憤懣やる方無い気持ちを抱えながらも、私は他人の評価など基準にせずに、なにくそと、とがってとがって生きていきたい。
平成18年から康楽館で開催され続けている「下町かぶき組座長花形祭り」も今年で11回目を迎えました。
康楽館の舞台に立つお弟子さんたちに向けて言い聞かせた松井師匠の言葉です。
「この由緒ある舞台でお芝居ができることを有り難さを常に感じなさい。」
「この小屋で演じることが、自分たちの役者人生でプラスになる、財産になるのだから、どんな時でも一生懸命やりなさい」
お一人お一人のお弟子さんと真摯に向き合い、厳しくも温かい目で見守りながら育てて来られた松井師匠の愛と真意を汲み取って、人気に溺れず原点を忘れず、謙虚な姿勢で芸道に精進し、この舞台を、松井誠率いる下町かぶき組を盛り立てて欲しい。
一お客に過ぎぬ私が、役者さんに向けて口にするのはおこがましいとは承知の上で生意気なことを申しましたが、それもまた、松井師匠と下町かぶき組を応援し、舞台を命とする私の切なる願いなのです。