下町かぶき組「座長花形祭り」が今週末、秋田県小坂町の「康楽館」にて開催されます。
アカシアの並木が続く明治百年通を、鮮やかな大幟が彩ります。
趣ある明治の古い芝居小屋の舞台に集う座長、花形、役者の皆様が繰り広げる舞踊とお芝居を楽しみにお出かけされてはいかがでしょう。
康楽館の木戸をくぐり、客席に足を踏み入れると、仄暗い客席に2階の窓から灯りが射して、時代を遡ったような不思議な気持ちにさせられます。
千キロも離れたこの歴史ある劇場を遥々訪ね、幕開けを待つ楽しみ。
日本全国、様々な劇場がありますが、歴史を紐解くと、この古い芝居小屋を大切に思う人々の熱意が、今日の康楽館を支えてきたことを知って感慨深いものがあります。
役者がお客に大切に思われるように、命あるものとして大切にされる劇場。
演者がいてお客がいて、小屋に命が与えられる。どれが欠けても舞台は成り立たない。
それは別記事に綴らせていただくとして。
康楽館の公式ガイドブックに掲載された松井師匠のインタビュー記事を読んでいただきたくて、転載させていただきます。
何度も康楽館の舞台に立たせていただきましたが、演じる側としていつも感じるのは
"芝居小屋が助けてくれる" ということです。
例えば市民会館のようなホールだと、芝居が始まった時、お客さまはまだホールの中にいらっしゃる。私どもはまずお客さまの手をとって、そこから芝居の世界に引っぱまり込まなくてはいけません。
役者とお客さまが同じ"芝居という空間"にいないと感動はしていただけないのです。
それが康楽館で演じると、幕が開いた瞬間、もうお客さまは芝居の空間にいらっしゃる。小屋自身がお客さまを「芝居を楽しもう」という気持ちにお膳立てしてくれているのです。これ程役者を助けてくれる小屋はそうそうありません。
舞台と客席の近さも芝居小屋特有のものです。役者とお客さまが一緒に汗をかき、涙を流し、一体となって芝居という空間を創っていきます。お客さまが楽しむと同時に、役者も楽しんでいる。その楽しさは大衆演劇そのものの魅力でもあるのです。
康楽館の常設公演を、20年間担って来られた伊東元春座長の跡を継いで「下町かぶき組」が康楽館で公演することになった時に、松井師匠は各座長さんたちに
「この由緒ある舞台でお芝居ができることの有り難さを常に感じなさい」
「この小屋で演じることが、自分たちの役者人生でプラスになる、財産になるんだから、どんな時でも一生懸命やりなさい」
そう言い聞かせたそうです。
その言葉を胸に刻んで舞台に立たれる演者の皆さまが一同に介しての晴れの舞台。
ぜひ、お出かけください。
康楽館 平成28年度 「下町かぶき組 座長花形祭り」
下町かぶき組 公演情報 座長花形祭り