クリス・オフット『キリング・ヒル』を読んで
ここのところご縁がなかった「新潮文庫」の新刊です。
紹介で「フォークナーばりの物語」とありましたので、フォークナーの描いたアメリカ南東部の小さなまちの濃密で錯綜する血縁関係と閉塞感ある日常をイメージしていましたが、半分当たっていて半分違ったかなという印象です。
また、たぶん物語の中身以上に、その「当たっている」部分を感じさせてない印象があり、その理由は、淡泊な文体・筆致です。
ハードボイルドな探偵ものの系譜を受け継いでいるので、どうしても、主人公は、アクティブに、昼夜の別なく動きます。そのひとつひとつのシンプルなアクションを短文で連ねている部分ばかりに物語の面白味を感じてしまうため、フォークナー感を感じるのは、読み終わった後に「そういえばちょっと設定が似てたね」ぐらいでしょうか。
これが同じくフォークナーに影響を受けた中上健次のからみつくような文体との一番の違いでしょうね。
夫婦生活に最大の危機を迎えながら、妹のために職を投げうってまで尽力するひとりの男。
彼のその原動力がどこから来ているのか、はちょっと見えてきませんでした。むしろ、今は海外駐在が多い彼にとっての故郷への思いがそうさせているのかと感じなくはありませんでした。
魅力的な登場人物として感じたのは3人。
①冒頭に出てくる、老人。
彼の人生に対する諦念とその結果の行動は、味わい深かったです。
②主人公の妹リンダ
いつも気合が入っている感がよく、なかなか心理描写は見えないのですが、その土地での女性初の保安官としての危うい立場であるがゆえの感情の動きが見て取れて、いい感じでした
③ジョニー・ボーイ
リンダの部下。黙っていることができずにどーでもいいことをしゃべりたくてしょうがないタイプで、とにかくキャラが面白い。こういう人がいたら、いいなぁと。しかも、性格は意外にも素直で善良。
以上です。
今野敏『黙示』を読んで
ここのところ、推理小説、ミステリー小説がマイブーム。
イギリス、アメリカの作品を読んで、少し「純和食」の世界に親みたい、コーヒー飽きたので、日本茶だ、と読みました。警察小説の現代もっとも売れっ子作家の今野敏の本屋平積み文庫本『黙示』。
昭和の古い時代の教育をそのまま受けてる男と、現代っ娘の2人の凸凹上司部下の捜査コンビの設定といい、警視庁や警察内部の120%体育会系のやりとりといい、おなじみの持ち味で、やはり、会話が中心でリズムよく進んでいく小説は、気持ちよく読み進められていいですね~☆彡
日本小説界の「日髙屋」的な安定感。
美食は求めませんが、そこそこ美味しく腹いっぱいで満足 な「今野屋」なのです。
【キャスティングを妄想しました】
ただ、今回他の作品とちょっと違ったなと思ったのは、「犯人」と疑われる側。
①なんだか、憎めず、ひょうひょうとしているボンボンの実業家で被害届け出者。
②その彼と半分友人、半分ビジネスの博物館のキュレーターの男
③そして、なんだか得体の知れぬ元警官の私立探偵で①のボディガード
の3者の関係性とそれぞれのキャラ設定が今野作品って「こんなだっけ?」と思わせるようなソフトな感じでした(まぁ、事件そのものも今回はソフトなのですが)
ルパン三世の ルパン、次元、五右衛門 のような印象もある。
そして、勝手ながら、これをドラマ化したら、誰があうかなと後半途中から読み進めていましたが、結論でいうと
① ムロツヨシ
② 高橋一生
③オダギリジョー あたりかな。
最初 ②は滝藤賢一 かなと思ってましたが、一生なら言えるなと思ったセリフがあったので、高橋一生さんに期待します(笑)
あいかわらずの心地よい 読後感 ごちそうさまでした。
主人公ハギさんの部下の武田のキャスティングも考えましたが、20代前半の女優をほとんど知らないので、断念しました(笑)
ピータースワンソン『8つの完璧な殺人』を読んで
陰鬱で重く、そして残念ながら過去の悲劇によって人額が歪んでしまっている哀しい男の話。舞台はニューイングランド地方、そして冬。海には氷が流れているくらいの氷点下の荒天の日々が続く。
果てしなく続く暴力的で荒廃した世に生きる一人の平凡な男性が殺人を犯さざるを得なかった理由が少しづつ紐解かれていく。
哀しい小説だが、読み応えはぎっしり。
記憶に残る物語だ。