パリオリンピックで、アスリートの性別が問題となりました。
本邦では、戸籍法によって、新生児の男女の性の選択と登録が義務づけられています。
性分化疾患(Disorder of sex development、Difference of sex development)とは、卵巣・精巣や性器の発育が非典型的である状態を意味しています。
性分化疾患には、染色体異常に伴うもの、染色体は正常(46, XYや46, XX)ですが、46, XYでは、精巣の分化異常、アンドロゲン合成障害・作用異常(5α還元酵素欠損症など)、その他の原因で起きます。
NPO法人ジーナ(GINA)に、「第218回(2024年8月) トランスジェンダーと性分化疾患の混乱」の記事が出ています。
オリンピックにおける性分化疾患への対応の混乱が、事例を元に時系列として述べられおり、大変興味深い内容となっています。
内容を要約します。
男性の血中テストステロン値は10~30 nmol/Lで、若くて健康な男性は通常20~30 nmol/Lの範囲です。
女性の基準値は0.7~2.8 nmol/Lですから、男性は女性の10倍以上の血中テストステロンを有することになります。本邦では、血中テストステロン値は ng/mLで表示されることが多いと思います。ng/dLに0.03467をかけると、nmol/Lに変換されます。
私の最近の濃度は、5.47 ng/mLなので、547 ng/dLとなり、0.03467をかけると18.96 nmol/Lとなります。
テストステロンは、筋肉の量と強度を保つのに必要なホルモンであり、造血作用を持ち、 集中力やリスクを取る判断をすることなどの高次精神機能に正の作用を及ぼします。
女性の選手で、血中テストステロン値が高い選手の大半は、染色体が46, XYで、5α還元酵素欠損症ではないかとのこと。パリオリンピックで話題となったボクシングの2人はウエルター級のアルジェリアのImane Khelif選手、もう1人はフェザー級の台湾のLin Yu-ting選手で、やはり共に5α還元酵素欠損症があると報じられているとのこと。
5α還元酵素欠損症について調べてみました。
5α還元酵素は、テストステロンに作用して、強力な男性ホルモンであるジヒドロテストステロンに変換させます。ジヒドロテストステロンは、男性外性器(Oニス)の発育を促進します。言い換えると、ジヒドロテストステロンが作用しないと、女性外性器のままです。
ヒトの外性器のデフォルトは、女性外性器です。
染色体が46, XYで5α還元酵素欠損症では、ジヒドロテストステロンが作られず、男性外性器とはならず、女性外性器や性別不明な外性器となります。どの場合であっても、子宮は作られず、乳房は大きくならないとのこと。出生時、外性器から女性として届けられると、パスポートには女性と表示されることになります。一方、5α還元酵素欠損症であっても、精巣からのテストステロンの産生は行われているので、第二次性徴でテストステロンの産生が高まると、男性様の声変わりや体型になります。
2021年の東京オリンピック以降、 世界陸上競技連盟は5α還元酵素欠損症を持つ女性選手の資格規則を厳格化しました。2023年3月から、競技に参加するには、ホルモン抑制治療を実施して、6か月間テストステロン値を2.5nmol/L未満に抑えることを求めています。
もう一つの性のカテゴリーに、トランスジェンダーがあります。
内容が複雑になるので、今回省略しました。