冬の入り口で、心をほどく
11月が静かに終わろうとしています。冷たい空気が朝の窓辺に触れるたび、季節が確かに深まっていることを実感します。街には少し早いイルミネーションが灯り、その光がどこか遠い記憶のように胸に滲みました。今月は、気持ちの歩幅がうまく整わない日がありました。仕事も人づきあいも嫌いではないのに、時々、自分の心がどこか置き去りになっていくような感覚があって、言葉にしづらい疲れが積もる瞬間がありました。そんな日の帰り道、夕景が思った以上に美しくて、足が止まりました。空を眺めるだけで、胸の奥に残っていた緊張がすっと解けていく。あのとき、「今日はよく耐えたな」そんな静かな肯定が内側から湧きました。人は、前に進めない日にこそ、深いところで自分を支えているのだと思います。目に見える成果ではなく、踏みとどまった時間そのものが、心を回復へ向かわせてくれるのだと感じます。この頃、大切にしていることがあります。それは “いま感じていることを、そのまま受け止める” という、ごく単純な姿勢です。温かい飲み物に触れたときのやわらかい熱。静かな部屋を満たす、ほのかな暗さ。深い呼吸で胸の奥まで空気が満ちる感覚。そうした些細な体験に意識を向けるだけで、散らばっていた思考がゆっくり戻り、心に余白が生まれます。自分を急かす必要はなく、無理に気分を整える必要もありません。自然と整ってくる瞬間を、ただ見逃さないようにしていたいと思います。冬が近づくと、心は静かに内側へ向かいます。その静けさは、孤独ではなく、“自分に帰っていく時間”のように感じます。忙しさや不安に巻き込まれそうなときは、ほんの短い時間でも立ち止まり、「今日の自分は、何を感じているだろう」と問いかけてみる。その問いが、心を守るための小さな灯りになる気がします。11月の終わりに、そんな穏やかな温度を抱きしめたくなる夜です。にほんブログ村