さよなら、古き良き「藤田美術館」 | 【ブログ】裏千家 シュミネ茶道教室 || 大阪・心斎橋 || 西田宗佳

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大阪・心斎橋駅上がってスグの「シュミネ茶道教室」。
お稽古や教室の様子、茶の湯周りのことや、西田宗佳の歳時記・日常なども、生徒の皆さんに読んでもらえるよう徒然書いています。

平成29年(2017年)6月5日:投稿
 
皆さん、こんにちは!
シュミネ茶道教室の西田宗佳です。
前回に続き、今日のブログも〈お出かけ編〉です。
 
先日5/30(火)に、大阪市都島区にある「藤田美術館」に行って参りました。
長いこと来なくちゃと思いつつ、近くなのになかなか足を運べなかった場所です。
明治の実業家・藤田傳三郎とその息子たちが収集した古美術や茶道具など、年に2回(春季と秋季)だけ企画展として、藤田家の蔵そのものを改築した展示室で公開してくれています。
もしかしたら、向かいにある「太閤園」(たいこうえん)のほうが、レストランや結婚式場として、藤田家が残した施設としては有名かもしれませんね。
 
どうして慌てて訪れることになったのかというと・・・
昭和29年(1954年)に開館したこの藤田美術館の建物も、来週 平成29年(2017年)6/11(日)を最後に、63年の歴史に幕を閉じることになっているからです。
 
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最後といっても、この藤田美術館がなくなるわけではなく、老朽化した建物を全面的に建て替えることになり、しばしのお別れということになるのですが、私立美術館ならではの趣のある小さな展示室はもう最後となります。
リニューアルオープンは2020年頃だそうで、歴史の一区切りとなる今回の企画展、その名も
「ザ・コレクション」
(好きやわぁ~、最後にこうゆう直球なネーミング)
 
 
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この日はうだるような暑さで、玄関に着いた時点でもう汗だく。
そして、館内・・・といっても、ここは蔵の中なので、空調設備はありません。
暑い!さすがに真夏や真冬はこの蔵の中での展示は厳しいことに納得。だから春と秋だけの公開なんですね。
それでも、今どき公共施設に空調がなくても、この愛おしい昭和のノスタルジーと、世界に誇る国宝や重文たちを所有し、惜しみなく手間ひまかけて大切に公開してきた藤田家や関係者の方々のご苦労を思うと、見せてもらうほうの暑さなんて微々たること。見るほうの人間は汗かいて必死ですが、静かに並ぶガラスの中のお宝たちは、時代とともに主(あるじ)を変えながら、ただ黙って何百年もその姿を変えず留めています。
気品高く涼しい顔してるけど、平安時代、戦国時代、江戸、明治や昭和になってからも、それぞれさぞかし世渡りも大変だったろうに。よく戦争で焼けずに無事残ってくれました。
 
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藤田家の家紋を冠した蔵=展示室の入口(上)。日本最初期の鉄筋コンクリート蔵だそうです。その向かいには「多宝塔」(下)。
広大な敷地を有した藤田邸も、現在の太閤園(淀川邸)と、本邸の表門、そして数々の蔵とこの塔を除き、他はすべて第二次世界大戦の大阪空襲で焼失してしまったとのこと。
 
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<藤田美術館について>
(パンフレットからの抜粋~引用文)
藤田美術館の所蔵品は、国宝9件、重要文化財52件を含む、古代から近代の東洋古美術品です。明治時代に活躍した実業家・藤田傳三郎と、長男平太郎、次男徳次郎が収集した絵画、書蹟、陶磁器、彫刻、漆工芸、金属工芸、考古資料など多岐にわたるコレクションをもとに、昭和29年(1954)、社会文化の向上発展に寄与する目的で開館いたしました。
 
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<藤田傳三郎について>
(パンフレットからの抜粋~引用文)
藤田傳三郎は、幕末の天保12年(1841)、長州(現在の山口県萩市)に生まれました。明治の初め(30歳の頃)に大阪へ出て、岡山県児島湾の干拓工事に代表される土木建設業、秋田県小坂鉱山を主力とする鉱業を手掛けて発展させました。また鉄道や電力、新聞など、近代化する日本の基盤となった事業に大きく関わり、大阪商法会議所(現・大阪商工会議所)の第二代会頭を務めるなど、大阪財界に大きな功績を残しました。
一方で、傳三郎は若い頃から古美術品に造詣が深く、とりわけ茶道具に対する鑑識眼は卓越していました。能や茶道をはじめとする日本文化を好み、邸宅には能舞台や茶室を構え、自らも楽しんでいたようです。
明治維新後の日本では、廃仏毀釈などの影響から、歴史的な美術品が海外へ流出していました。そんな状況を憂慮した傳三郎は、膨大な財を投じ、茶道具や仏教美術を中心とした古美術品を、亡くなる直前まで収集したと伝えられます。
 
 
 
今回の展覧の中でも、なんといっても、藤田美術館と言えば、国宝「曜変天目茶碗」
世界に現存する3点のうちの1点で、あとの2点は、「静嘉堂文庫」(東京)と、「大徳寺塔頭・龍光院」(京都)にあります。
曜変天目の条件を厳密に満たすもので完存するのは、国宝となっているこの三椀のみで、中国で焼かれた唐物であるにもかかわらず、3点すべてが日本にあります。
この日、天下の曜変天目を初めてこの眼で見ることができましたが、よく宇宙そのものだと評されている通り、神秘性が半端ないです。3つの曜変天目の中でも、藤田のものが一番”宇宙感”が強いんじゃないかと私は思います。
 
(ネットから画像拝借)
 
そのほか、今回の出展品の中で個人的に感慨だったのが、やはり茶道具。
傳三郎が死の直前、大枚をはたいて手に入れた「交趾大亀香合」(こうち・おおがめ・こうごう)と、利休が秀吉の小田原攻めで同行した際に作った3つの竹花入れのうちの一つ、「銘 よなが」
ミーハーですが、有名どころを押さえておけて良かったです(^_^)v
 
「交趾大亀香合」(ネットから画像拝借)
 
 
 
美術館賞を終え、お向かいの太閤園のカフェで一休み。
太閤園は茶色いレンガの洋館と、空襲で焼け残った傳三郎の次男・徳次郎の日本家屋(現在の淀川邸)と、広いお庭で構成されています。
カフェで涼んだあと、ここの自慢のお庭を散策。都会の中なのに、日暮れの森の小径を行くようです。
 
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今年3/15、藤田美術館は所蔵する中国美術の名品32点をニューヨークでのオークション・クリスティーズに出品しました。落札予想額は50億円とも言われる中で、蓋を開けてみると、落札総額2億6千280万ドル(約300億円)の高値を記録し、世界のアート業界に衝撃を与えました。
このクリスティーズのオークションの舞台裏は、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀~オークション・スペシャリスト 山口圭」(2017年3月放送)でも取り上げられ、話題となりました。
 
先祖から受け継いだ名品を売却するというのは相当な覚悟だったと思いますが、今回の資金調達の成功を受け、藤田美術館は長年の課題だった老朽化した施設を建て替えるという投資に踏み切りました。
来週6/12より長期休館に入り、2020年のリニューアルを目指します。
先人が築いた古き良き時代の引退は一抹の寂しさもありますが、新しい藤田美術館のこれからの展開が楽しみです。
 
★関連記事のリンクも、貼っておきます。
 
 
 

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