2001年夫婦世界旅行のつづきです。7泊の予定のパリの5日目。次なる目的地レンヌ行きのチケットを買いに、国鉄モンパルナス駅まで出かけました。





part162 手探り足探り、モンパルナス駅!①





要約: 国鉄のモンパルナス駅まで行ったはいいが、まぁ、広い広い。どこに何があるのかとんとわからず、わからないまま「とりあえず」、「とにかく」と、少しずつ探り進んでいった。ようやく窓口に辿り着きチケットをゲットしたのは、モンパルナス駅に着いてから、実に1時間以上が経っていた。あああ、疲れた。









レンヌ行きのTGVのチケットはモンパルナス駅で買えるということで、ただ 「モンパルナス駅に行けばいいのね♪ 」 と高を括っていた私は、メトロの路線図を見て、ちょっとぎょっとした。





「モンパルナス」 という駅がどこにもない! TGVは言わば、フランスの“超・新幹線” だ。SNCF(エス・エヌ・セー・エフ=郊外国鉄線)の特急版。 「モンパルナス駅」 だって国鉄の駅のはずだ。国鉄の駅名が、メトロの路線図に載っていないのも道理だ。しかし……SNCFの路線図なんて持っていないぞ。





「今日はどこに行くの? 」 と私にすっかり下駄を預けた夫が聞いてきた。「うっ? あ~、……モンパルナス駅にチケット買いに行くですよ。」





(夫)「モンパルナス駅? ……って、どこ? 」 


(妻)「うっ? (あなた、そんなこと、聞かないでよ! 私だって、知らんのよ~っ。) ん~、すぐそこ。ちょっと南の方だよ。 (……多分。)  メトロで行くよ~。 (行けるはずさ。) Allons-y! (行きゃ、どーにかなるさっ、多分。)」 平静を保ちながら、さりげなくメトロの地図を見る振りをして、必死に頭を巡らす。





はてさて、国鉄 「モンパルナス」 駅に行くにはどうしたらいいんだ? とりあえず、唯一 「モンパルナス」 という地名が入っているメトロの 「モンパルナス・ビャンヴニュMontparnasse bienvenu」 駅で降りてみよう。





( 「bienvenu」 は英語で言えば 「welcome」 だ。 「歓迎されたモンパルナス」 駅? 「ようこそモンパルナス」 駅? なんだか大げさな駅名だ。フランス人はこの駅名にどんな感じを持っているのだろう。)





さて、モンパルナス・ビャンヴニュ駅のメトロの改札口を出ると、そのまま地下通路が延びていて、はたせるかな、迷うことなくスムーズに国鉄モンパルナス駅まで辿りつけた。 





(長い長い地下道だった。メトロの一駅分くらい歩いた気がする。日本の地下鉄 「丸の内線」 といい勝負だ。 





「こっちでいいの? 」 と不安顔の夫に、 「うっ。そんなこと、聞くなよ~っ! 私だって知らんのじゃっ! 」 と心の中で慄きながら、 「ん~。そうそう。こっちでいいの。 (……多分。) 」 とシャラ~ッと答え、平然を装うのであった。)





国鉄モンパルナス駅は大きな駅だった。駅というより、各階にプラットフォームが付いた (……なワケないか? ) 巨大なビルだ。





表示の分かりやすいメトロとは違い、いきなり広大な国鉄モンパルナス駅では、どこに何があるのかとんとわからない。表示もどこを見てよいのかわからない。どこを指しているのかもわからない。実にわかりにくく、不親切である。 (私のフランス語力不足のせいかも知れないが。) 





一体、どこで列車のキップが買えるの? とりあえずインフォメーションカウンターを探す。





うろうろしていたらインフォメーションと銘打ったデスクを発見。早速チケット売り場を尋ねてみると、 「ここはインフォメーションカウンターではない。2階で聞いておくれ。」 と言う。おっかしいなぁ。





しかし、とにかくお言葉通り2階へ上がってみる。が、2階へ上ってみても、どこがインフォメーションカウンターなのかわからない。チケット売り場らしい窓口は沢山あるが、どれがどの窓口なのかもわからない。





おまけに何か尋ねようにも、どこの窓口も長蛇の列だ。とりあえず一番インフォメーション “らしい” 窓口に並んで聞いてみると、 「さらに2階上がった所へ行け」 と言う。が、さらに2階上がっても、さて広大なフロアが広がっていて、そのフロアのどこにいったらいいのかわからない。





とにかくうろうろしてみる。自動販売機のような大きな四角柱がぽつぽつと立っている一画があった。もしかして、これで買うのだろうか? 近寄っていろいろ試してみるが、目的地に 「レンヌ」 が出てこない。TGVのチケットは販売していないようだ。





さらにうろうろしてみる。またもやチケット売り場らしい窓口が並んでいた。しかし、 「インフォメーション」 の表示は見当たらない。レンヌ行きのチケットを取り扱っていそうな窓口もわからない。とりあえず目に付いた一番端の窓口に並んで聞いてみると、 「それはこのフロアーの一角にある」 と言う。おお。一歩近づいた感じ♪





さて 「一角」 といっても、東西南北、どこの角やねん? まぁ、手当たり次第に回ればいいさ。フロアーの角という角を目指してとにかく進む。





一つ目の角は待合所のような広がりばかりで、 “ハズレ”。すぐさま回れ右して二つ目の角へ。二つ目の角はガラス張りの一画であった。しかし、そこもやはり 「インフォメーションカウンター」 というより、 「チケット売り場」 なのであった。





とりあえず、入っていって観察する。窓口に振られた番号を数えたら40以上あった。それらの窓口が、 「パリ・バンリュー(郊外)・ヨーロッパ」 と大きく3つに区分けされている。パリ市内とパリ郊外とフランス以外のヨーロッパ圏という意味だろう。なんだか、かなり 「それっぽい」 ぞ。 “アタリ か? 





とにかく窓口で聞いてみよう。しかし、どの列に並ぼうか。レンヌはどのカテゴリーなのだろう? レンヌが 「バンリュー(郊外)」 に入るものかどうか、いきなり己の知識に自信がなくなってきてしまった。





レンヌって、本当に 「郊外」 なのか? パリから結構近いよね? しかし 「パリ」 ではない訳だし……。で、と、と、とりあえず 「バンリュー(郊外)」 の列に並んでみた。





並んでいる同じ列の人に尋ねると、 「ウィ~、ここはレンヌ行きのチケットが買える列だ」 と教えてくれた。やれやれ。どうやら今度こそここでいいらしい♪。 よかったぁぁぁ チケットは目の前だっ!





「ここでチケットが買えるよっ! 」 早速夫に教えてあげる。が、 「あ、そう」 と、なんとも気の抜ける返事。





何かが確認できるたびに、黙って後ろから付いてくる夫にくるりと振り向いては報告してきたわけだが、夫は 「右から左に抜けていています」 ってな顔して、聞いちゃいないようだった。ひょっとして、彼は 「私が実は駅舎の中でさんざん迷っていた」 ということに気づいてさえいなかったのかもしれない。よしっ。  





窓口の数が沢山あるので、長い列はじわじわと確実に短くなっていく。並んでいる間に周りの様子を窺う。みんな一列に並んで、順番に、空いた窓口へ向かっていく。窓口の係り員はつっけんどんな感じの人から、親切丁寧そうな人、のろのろとした人、しゃきしゃきし過ぎて怖いくらいの人、色々なタイプがいるようだった。





我々が当たった窓口のお姉さんは優しかった。   我々はTGVの時刻表など持っていなかったので、一体何時の列車があるのか、それから尋ねなければならなかった。お姉さんは一言一言をかなり丁寧にゆっくり発音してくれて、時刻を書き出してくれる。お陰で落ち着いて列車を選択できた。これなら間違いない! 間違えようったって、間違えない! (多分。) 





チケットを受け取り、支払いを済ませるや、ホテルから今までずっと静かに私の後についてきただけの夫が俄かに活気づいた。





ちゃんと金額を確認してからサインした? よし。列車の日時、目的地、合ってるね? チケット確認、よし! パスポート返してもらったね? よし! 間違いなく自分のパスポートだね? よし! カード、返してもらったね? 確かに自分のカードだね? よし!  (TGV料金はとーってもお高いので、カードで払った。) カード払いの控え、受け取ったね? よし! はい、貴重品、カバンに閉まったね? カバンのファスナーは? 閉めたね? よぉ~し! ……夫の点検はかなり念入りだ。





ようやく夫から飛んでくる “ 「確認」 のジャブ” をクリアーして、長蛇の列がまだまだ控えている窓口から慌しく退散したのであった。





( 「よし! 」 を連発したので、係りのお姉さんは、 「日本語は言葉の最後に『よし』 をつけるものだ」 と勘違いしたかもしれない。今頃俄か覚えの日本語で 「こんにちはよし? 」 なんて言っているかもしれない。 ? )





国鉄モンパルナス駅に着いてから同じ駅舎内のチケット売り場へ辿りつくまで、迷うこと40分。そして、チケット売り場に並んでから窓口に辿り着くまで、30分。窓口でのやり取りは5分。つまり、チケットを手に入れるまで実に1時間以上、駅の中を右往左往していたわけだ。


             つづく


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