2001年夫婦世界旅行のつづきです。パリ5日目。そろそろ次の目的地へ移動するための手配をしなくてはなりません。





part161 一人重役会議でレンヌ採決!





要約: 昨晩、次なる目的地をレンヌに決定した。モン・サン・ミッシェルへ行くために色々検討した(ほとんど妻一人で健闘した!)結果であるのであるのである。









さて、今日もイザベルとマリーの “一幕” を見物してから、覚醒し切らない頭で街へ繰り出す。今日はレンヌRennes行きの列車のチケットを買いに、国鉄モンパルナス駅まで行くのだ。





昨日一晩かかって検討し、 「モン・サン・ミッシェルをゆっくり味わう」ためには、次なる目的地をレンヌに決めるのがよかろう、ということになったのだった。








昨晩、 「そろそろ次の目的地を決めなくちゃね」 と水を向けると、夫は 「ううむっ。モン・サン・ミッシェルだねっ。よぉぉしっっ。君に任せたっ! 」 という “社長さん的一言” を発し、ごろりと横になってしまった。 





……もしもし? ……。 





で、 「一人重役会議」 の始まり~。ガイドブックや情報誌、パンフレットをガサゴソひっくり返してペンを片手に “健闘” する妻の横で、夫はほんげ~っと眠り続けておった。





議案その1


パリからツアーバスを利用すれば、モン・サン・ミッシェルを日帰りで楽しめるらしい。が、値段は高い。出発は朝早い。現地で集合時間などを気にするのは嫌だね~。 ……で、却下。 





(お金はあるが時間がない、グータラでない人には、お手軽でお勧めかもしれない。曜日が限定されているので、ご注意あれ! だ。)





議案その2


モン・サン・ミッシェル (島) の中にもいくつかホテルがあって宿泊できる。これならたっぷりモン・サン・ミッシェルを味わえるというものだ。が、いかんせんホテル代が高いし、すぐ満室になるという。 ……即、却下。





議案その3


引き潮の時、モン・サン・ミッシェルは陸続きになる。その陸地側にある最も近い街ポントルソンPontorson。 ポントルソン、ああ、なんて素敵な響き!  「ポントルソン……」 と呟いただけで、凪いだ海の向こうにモン・サン・ミッシェルが鬱然と聳えている姿が見えるようだ。





ここに泊まれば、ポントルソン駅からモン・サン・ミッシェルまで、バス一本で行ける。ポントルソン駅とモン・サン・ミッシェルは約9kmしか離れていないというのだから、バスなら15分~20分で着くだろう。本数も一日3本くらいある。タクシーをシェアしたり、レンタサイクルで行くという手もあるらしい。いいね、いいね。





しかし、ポントルソンのホテルは、モン・サン・ミッシェルのホテルより安いとは言っても、ダブルの部屋で1泊300F(5,100円)近い。結構なお値段だ。





しかも、ポントルソンまで行くのが大変そうなのだった。





パターン① パリ、モンパルナス駅からフォリニーFoligny駅へ (普通の電車で3時間)。で、フォリニー駅からレンヌRennes行きの電車に乗り換え、ポントルソンで下車。 (30分) (計 3時間30分)





パターン② モンパルナス駅からTGV(てー・じぇー・べー。Train à grand vitesse 超特急新幹線)でレンヌまで行き (2時間)、レンヌからカンCaen行きのローカル線に乗り換え (50分)、ようやくポントルソンに着く。 (計 2時間50分)





パターン③ パリ、サン・ラザール駅からカンまで行き、そこからレンヌ行きに乗り換えるという手もあるが、こちらは計5時間を要するらしい。





ポントルソンもモン・サン・ミッシェルもパリのほぼ真西あるのに、北から下りていったり、南から上がっていったり。どの方法を採っても、パリから直通では行けない。





おまけにポントルソンのホテルはシーズンオフには閉まってしまって営業しないところもあるという。 (そんなんで、どうして食べていけるのだろう? フランス人は余裕かましてるよね~。) 





ということは、ポントルソンという街は、ハイシーズン以外は静かな田舎町といった感じなのだろう。ということは、ホテルの数だってそんなにあるはずもない。ということは、このハイシーズン、ポントルソンに着いたはいいが、ホテルが空いていない! なんて事態も起こりうる。ということは、仕方なくレンヌ辺りまで戻る、なんてことを余儀なくされる……かもしれない。





電車の乗り継ぎの待ち時間だって相当かかるだろうから、パリからは優に3時間~6時間はかかるはずだ。乗り換える際は重いバックパックを背負って駅の階段を上ったり下りたりするわけだ。 





……ということは、とてもしんどい! ということだ……。





議案その4


国鉄レンヌ駅からもモン・サン・ミッシェル行きのバスが出ていた。駅から2時間でモン・サン・ミッシェルに着く。うーん、ちょっと時間がかかるね。本数は……一日2本? こりゃ、厳しい。おっと、夏期は一日4本に増えるらしい。ならば、よし。





レンヌ。パリの南西に位置する街 (モン・サン・ミッシェルよりちょっと南にある)。 パリからTGVで2時間で着く。ノルマンディ地方のなかなか大きな街であるらしい。ユーロラインズのバスも止まるようで、レンヌから一気にスペインのマドリッドまで行くこともできるらしい。





「スペインを目指してフランスを一気に南下していく前に、ちょいとフランスの北西部 (フランス全体から見たら北西部にあるのだ) の街に寄り、ついでにモン・サン・ミッシェルも見る」 というのも悪くなかろう。TGVにも乗ってみたかったし、丁度よいわぃ。うん。 ……ということで、次の目的地はレンヌに決定!





ここで社長に決裁上申。


 「もしもーし。次の目的地はレンヌに決めましたよ、社長。」


 「ううう~。うむうむっむむ……。」


 「『承認』 で、よござんすね? 」 決裁を迫るため、指先を二本社長の鼻の穴に突っ込んでみる。社長を起こすにはこの手しかないのだ。





頑固な社長は眠りも頑固で、一度寝たらなかなか起きない。自分が起きたくないときは頑として起きない。そこで 「指2本止息法」 が編み出された。





指を夫の鼻の穴に突っ込むと、吸い込もうとしていた鼻腔がすぴっと俄かに真空状態になる。ご本人は寝ながらにして、どうもおかしい! と思うらしい。で、今度は息を吐こうと試みるが (寝ながらに試行錯誤するところがエライところだ。さすが社長だ) 、これまた栓はしっかりと鼻にはめ込まれているので、息も抜けない。





吸えない、吐けない。こりゃ、苦しい。鼻で呼吸できなけりゃ、口を開けて口呼吸すればよさそうなものだが、この頑固社長はとことん鼻で呼吸することに決めているらしく、よーっぽどのことがない限り、私の鼓膜を揺るがす摩擦音が出ようが、鼻水が一緒に出ようが、鼻で呼吸する。





その頑固一徹の鼻呼吸を封じてしまえば、夫は完全ではないまでも、眠りから覚めてくれるのであった。





「う~……ぷはぁっ。何すんのぉぉ。」


「レンヌで、よござんすね? 」


「う~ん。はいはい。もぉぉぉ…… (再眠) 」





議案その5


しかし、レンヌ行きのTGVのチケットを買うには、わざわざ国鉄モンパルナス駅に行かねばならなかった。





パリの郊外に行くには、南西、南東、北西、北東、それぞれの方角に合わせて、 “パリの玄関口” である国鉄の駅にまず行かなくてはならないのだった。電車のチケット一枚買うのにも手間暇がかかる。日本のように、そんじょそこらに緑の窓口があるわけではないのであった。 





(インターネットで予約できれば話は早いのだろうが、インターネット上のやり取りはまだまだ安心できないので、我々はしないのだ。現地で直接面と向かって交渉するのが、一番! 現金払いが一番! カード払いが二番だ!)





我々の目指すレンヌはパリの南西にあるので、パリの南西の玄関口、モンパルナス駅でチケットを買わなければならないらしい。 (他にどこかのチケット売り場でお手軽にチケットが入手できてもよさそうだが、わからなかった。)





「よっしゃ。明日はモンパルナス駅だ! チケット購入だ! よござんすね? 」 指先をまたもや夫の鼻の穴につっこんでから、その指先を夫のほっぺたで拭き拭き。





「うむうむむっっぷふーっ。なにするのぉ? もぉ。いいから寝かせて! 」


「よござんすね? よござんすよ。はい、おやすみなさい。」





“一人重役会議” を続けたせいか、妙に “ハイ” になって、 “一人賭博” でも開いている感じになってきた妻であった。


           つづく


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おまけ情報: TGVのチケットは、利用する日時が決まっていれば日本からインターネットで予約ができるらしい。で、予約票(プリントアウトしたもの)を持って当日駅へ行けば、スムーズに乗り込むことができるらしい。チケット予約に現地で駆けずり回って、体力や時間を費やす必要もないわけだ。しかしこの方法だと、パスポートナンバーやクレジットカードのナンバーをインターネットに打ち込むという恐ろしいことをやってのけなければならないのである。Brrrrrr


            


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