電極棒を地中に埋めて電子を送るだけで、これらの電子を食べて電子を排泄するバクテリアが集まってくるという。
バクテリアを含め、生きるものは全てエネルギーを取り入れるから生命なのだが、電子バクテリアともいえるこの生命ほど特殊なものは他にないだろう。しかもそこらじゅうに存在するものだった。知られているものではShewanella と Geobacter など、今のところ8つある。鉱物から電子としての形でエネルギーを取り入れるものから、電気を直接取り入れるものまで色々なタイプが見つかってきているそうだ。これらのバクテリア自体が電子を取り入れることによって発電しているのだ。
これらは驚くべきことではないという。何故なら全ての生命体をシンプルに分解すれば「電子の流れ」であるからだ。例えば砂糖には大量の電子が含まれているが、呼吸して酸素を取り込むことによって電子の流れを作っている。細胞が砂糖を分解し、複雑な化学反応を繰り返して電子になり、電子を必要とする酸素へと送り込まれる。
このプロセスで細胞はATPと呼ばれる分子のエネルギー貯蔵庫を作るが、これが全ての生命が行う作業である。電子を動かす事がATPを作る鍵だという。生命が生きていくためには、食べ物から電子を引き出し、それをコントロールするという作業が必要だったのである。殆どの生命体は電子を細胞間で安全に運べる分子にして、酸素に乗せて排泄するまで使う。これらが地球上の殆ど全ての生命が同様にやっている事であり、電子の性質として、常に動き続けることでエネルギーを得るという。それは人が窒息すると、ものの数分で死亡する事の説明になる。
電子バクテリアの存在は、栄養素などの媒体を必要としない、エネルギーを最も純粋な形で摂取できる生命の基本体であるといえる。電気をそのまま摂取することは人間にとっては危険だが、そのうち人間も微弱電気を指から摂取出来るようになるのかもしれない。
話はそれたが、指を何かの液体の入ったシャーレに浸して食事をするという宇宙人がいると聞いたことがあるので、ひょっとしたらこれの事かなと。
電子バクテリアはまるでエイリアン生命体のようだが、全てはそれで出来ていると言っても過言でないほどありふれる存在だった。まるで聖霊のように。