創りたいのは自死ゼロと労災ゼロの世界
 

【うつ専門メンタルコーチ&講師】

安田伸也です。

今から約30年前、平成初め頃のこと。


外国からの密航事件が多発しました。



主に蛇頭(スネークヘッド)と呼ばれるマフィア組織が、中国福建省から貧しい中国の人を「日本へ行けば稼げる」との口車に乗せて多額の借金までさせて、小さな船にギュウギュウ詰めにして日本へ送り込む。



そんな事件でした。


その当時は、日本だけではなく東南アジア諸国や中南米諸国にも拡がっていたようです。


そんな時、わたしが勤務していた管区でも、日本船内から密航者約100人が発見される事件が起きました。

 

のちにわたし達が「100人密航」と呼んだ事件です。

当然、手引きした日本人船員を含め、全員を逮捕。


しかし、そんなに1度に大量の密航者を留置する施設が無いため、管内で一番大きなヘリコプター機搭載型の巡視船も着岸させて、巡視船内に留置しました。

そして、特警船と呼ばれる船に警備が任されたのです。
※特警船:警察の機動隊のようなテロやデモ対策の船

わたしは、その時本部の係員で密航者の食事の手配などの支援業務に当たっていました。

密航者を収容した次の日の朝だったと思います。

特警船の隊長から
「パン食に変えて欲しい」
との要望がありました。

密航者用におにぎりを配布していたのですが、食べないとの理由からでした。

当時、冷蔵庫などの保存技術が普及していない中国では、冷えた飯は腐っている可能性が高いため、食べる習慣が無かったのです。

わたしが電話で手配元の保安部の課長へ要望を伝えると「出来ない」とのこと。

もう既に100人分のおにぎりを大量発注しており、変更が利かないと言うのです。


そのことを隊長へ伝えると、
「電話を替わってください」
と要望され受話器を渡しました。

その隊長が静かな口調で話し始めます。


「特警船隊長の○○です。
話は聞きました。

彼らは確かに日本の法律を犯し、逮捕された。
しかし、彼らに冷えた飯を食べる習慣が無いのであれば、同じ人間として無理矢理食べろとは言えないし、飢えさせることもできない。
課長の立場も解るが、パン食に変更して欲しい」



わたしは隣で聞いていて、カッコいい〜!っと心の中で拍手を送りました。


結果、しぶしぶ保安部の課長が了解してパン食に変更され、一件落着しました。


わたしが、この隊長が素晴らしいと思うのは、海上保安官、公務員である前に1人の人間として意見をし、行動したことです。


それも、声を荒げることなく淡々と。


わたしが習ったコーチングも、コーチである前に1人の人間として目の前の人を丁寧に扱う

 

そんなコーチングです。


ついつい、自分の地位や立場を守るために横車を押したり、相手のことを考えない要求をする人が多い中。


目の前の人のために自分に何が出来るのか。

どうしたら、目の前の人を丁寧に扱うことが出来るだろうか。

 

この隊長は、そんな視点で自分の仕事に向き合っていたのだと思います。


事件事故の現場は、心が和むことなんてありません。

常に緊張の連続です。

今回は、そんな殺伐とした現場で起きた、わたしが体験した数少ない心温まるエピソードをご紹介しました。




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