創りたいのは自死ゼロと労災ゼロの世界
 

【うつ専門メンタルコーチ&講師】

安田伸也です。

 

では前回の続き。



【最初の事件】

 

その日は秋も深まり、冬を前にした11月の午後。

巡視船が岸壁に着岸して待機中に、車が海へ転落したとの情報が入りました。


その車両転落のあった港は、当時よく車で自死を図る人が多い港。


陸行(車)でわたしを含めた潜水班5名で現場へ急行せよとの指令がありました。


初出動わたしは、緊張と不安もありましたが、それよりも頑張るぞ!という気持ちが強かったですね。


勢い込んで車に乗り込んだのを覚えています。





空はドンヨリ曇っていました。


現場へ到着すると、周りには工場しかない、普段は閑散とした港に警察車両(パトカー)や消防車、救急車が集まり騒然としています。


目撃者によると、飛び込んだ車は白い車体のセダン。

そうとうなスピードで海へ飛び込んだようです。


岸壁の車止めに、真新しい跡もありました。


潜水準備を整え、沈んでいると思われる付近にブイを入れて捜索を始めました。


初出動のわたしは、もうドキドキ。


そのうえ、水中視界が悪く自分の手の指先も見えません。


心臓が高鳴るをこらえながら、慎重に潜ります。


水深約5メートルほど潜ると、ボンヤリと白い車体が見えました。


その車の中に人がいる。



そう思うとわたしはその時点で、パニックを起こして水面へ浮上。


浮上したわたしを追って先輩が上がってきて、「どうした!行くぞ!」と叱られるという情けない初出動になりました。


何とか気を取り直してまた潜ります。



中に入っていた人は、割れた窓から先輩潜水士が引き出し、わたしは、他の先輩潜水士と協力して車のシャフトにワイヤーを通してクレーンで吊り上げて岸壁上に引き上げ終了です。

わたし達も岸壁へ上がり、今度は刑事さんと車両の中を点検します。


いわゆる「現場検証」というやつですね。

車内の状況から、今回の転落が事件か事故かを見極めなければなりません。


ドアはロックされているか、ギアはどこに入っているか、車内に事件を臭わすような不審なモノは無いか確認します。


ふと運転席の下を見ると、ブレーキの後ろにコンクリートブロックが置いてあります。

わたしが、「どうしてこんなモノが...」



と不思議に思ったと同時に、一緒にいた刑事さんがこう呟きました。

「この人は、岸壁から飛び込む時に怖くなってブレーキを踏んでも効かないように置いたんだな」



その瞬間、何とも言えない感情が湧き上がりました。

仕事として、半ば仕方なく潜水士になったとは言え、頑張って厳しい訓練を耐えてきました。


「これからは、助けを待っている人を救うんだ!」

と勢い込んでいた時期です。


それなのに...

 

自分はこの人の為に何もしてあげられなかった。

 

心の中は、そんな無力感でいっぱいになったのでした。



そんな事件からスタートした潜水士の仕事。


その後も様々な事件事故の現場へ出向きましたが、転覆船や海中転落した人。


そんな窮地に陥っている人を一度も救助することは出来ませんでした。

 

映画のように都合良くは助かりませんね。


多くの水死体を引き上げることになります。


そしてわたしの潜水士としての仕事は、約7年後にこんな事件で幕を閉じます。


続きは、また次回。



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